子供の「憧れの職業」上位にランキング入りしているYouTuber。人気の要因は、テレビを凌ぐ巨大マネー、ネットの広告収入だ。それを自分の手に収めるには、記事でも動画でも、とにかくワンクリック、ワンPV(ページビュー)を追求する。1回でも多く見てもらい、広告を自分のコンテンツにつけなければならない。
しかし、それは時に「PV至上主義」とも揶揄される「数=お金」の争奪戦だ。欲に目がくらみ、目立ちたい、知名度を上げたいと過激な演出に走り、3カ月で2度も逮捕されるYouTuberが現れるなど、行きすぎた動画は社会問題にもなっている。
■“渋谷スクランブル交差点ベッド”炎上にYouTuber ジョーブログ氏「大ごとになると思っていなかった」
人気YouTuberのジョーブログ氏は「どれだけ面白いことをするか。炎上することがあまり悪いことだとは思っていない」と豪語する。
チャンネル登録数は136万人。ある動画では「北朝鮮着きました!」と北朝鮮へ渡って撮影。世界中のスラム街に潜入したり、アマゾン川をいかだで下ったり、世界を股にかけた過激コンテンツで多くの登録者を獲得している。
「数字が増えたことで『ファンが増えてスゲー!』と思っていたら、お金もドーンと入ってきて『おお、マジか』みたいな」
過激さはさらにエスカレートし、2019年、ニュースにもなった「渋谷スクランブル交差点にベッドを運んで寝てみた」という動画では、道交法違反で書類送検されてしまう。そんな犯罪ギリギリの炎上スタイルにネット上では「数字のためなら犯罪も厭わない金の亡者」などの声も寄せられている。
ジョーブログ氏は反響のあった動画について「喧嘩や過激な動画がすごく伸びた。北朝鮮やアマゾンを訪れた海外系も人気のシリーズ」と紹介。書類送検された渋谷スクランブル交差点の動画には、どのような狙いがあったのだろうか。
「狙いというか、自己満足。子供の頃にやったいたずらを、大人になってやったらどうだろうと思った。もともと渋谷のスクランブル交差点ではYouTuberが餅つきをやったり、野球をやったりとか、鬼ごっこやったりしていた。あるときから世の中の流れで、みんながピタッとやらなくなった。そこであえてやったらどうなるのかという、自己満足と実験。賛否両論は起きると思ったが、僕は細かい法律がわからなかったので、青信号を守って、誰かにぶつからなければいいのではないかと思っていた。ここまで大ごとになるとは思っていなかった」
【映像】渋谷スクランブル交差点に“ガチベッド” 炎上した実際の動画
問題になった渋谷のスクランブル交差点の動画では、6名ほどのスタッフと一緒に撮影。ジョーブログ氏は「青信号になってバッと走り出したら(スクランブル交差点の)誰もいない状態のところに(ベッドを)置くことができる。その状態で、誰もいないところではける。青信号のうちに置いてどかしたので、交通の妨害にはなっていない」と当時の状況を話す。
「動画をアップしてから、1日、2日は炎上していなかった。『久しぶりにYouTuberがスクランブル交差点をネタにしてやったな』という声が多かった。メディアに取り上げられて、そこから、一気に炎上の波が広がっていった」
ジョーブログ氏のエピソードを聞いたひろゆき氏は「書類送検の方がおかしい」と意見を述べる。
「アマゾンに行って、魚を食べる動画はおもしろいし、僕はいいと思う。過激なことと、炎上狙いでやっちゃいけないことが混ざってしまっている。それが問題だ。ジョーブログさんの件は、書類送検の方がおかしいと思う。被害者がいない問題でバッシングされた。アマゾンやスラム街に行くような動画はおもしろいから、それをやめさせる動きはよくない」
動画撮影をめぐってはやりすぎて逮捕されるケースも実際に起きている。このようなケースにジョーブログ氏は「(会計前に商品を食べるような動画は)やりすぎだ。完全に迷惑をかけようと思ってやっている」と苦言。
「渋谷スクランブル交差点の動画は、どんな殺人のニュースよりもトップに上がっていたが、過激系といっても、あえて迷惑をかけたり、人を傷つけるような方向性ではやっていない」
行きすぎてしまう動画について、ネットメディアコンテンツのリテラシー問題を研究する法政大学教授の坂本旬氏は「極端な事例をメディアが取り上げて報道する。まさにそれはメディアリテラシーの問題で、全てがそうではないのに、全体的に規制をかけようとする」と話す。「犯罪になってしまったらダメ」とした上で「自粛はよくない」と語った。
東洋経済新報社会社四季報センター長の山田俊浩氏は「かなり高い建物で自撮りして死者が出るなど、そういう問題も起きている。それに対して、アマゾンや北朝鮮に行くのは冒険であって、エクストリームの映像を撮っているということ。(ジョーブログ氏の動画は)アリだと思う」と見方を示す。
「今ソーシャルメディアの時代で大事なのは一人ひとりが大手のテレビ局と同じメディアだ」と語る坂本氏。「当然メディア倫理はあるのに、それを一人ひとりが(倫理を)考えていない。そういう勉強もしていない。そこが世界的に問題になっている」と説明した。
ジョーブログ氏は、渋谷スクランブル交差点の一件から「法律はネットで検索しても分からないから、弁護士にちゃんと頼むようになった」と話す。その上で、動画の目的は「(人を)傷つけるためではない」と語った。
今はYouTubeをはじめ、収益化されたさまざまなメディア。Twitterも収益化のための機能を段階的に実装すると発表し、まさにPV争奪戦の時代になっている。内容への賛否は当然あるものとして、法律や人権を守っているかどうかが大切なポイントになりそうだ。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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