アイドルになった時以来、2度目となる“生まれ変わり”かもしれない。乃木坂46の元メンバーでタレントの中田花奈が3月9日、麻雀プロ団体最大手の「日本プロ麻雀連盟」のプロテストに正規合格したことを発表した。121人受験し、4月から試合に出場できる正規合格は33人。合格率は約27%という難関をクリアし、本人も「本当に無理だと思っていました」と驚いた。これまでは「麻雀好きのアイドル」として認知されていたが、これからは最初の肩書が「麻雀プロ」になる。周囲の麻雀に関する目が厳しくなるプレッシャーを早くも感じながら「元乃木坂46だから、おまけで合格させてもらったと言われないような打ち方をしたい」と、その思いは実に強いものだった。
プロになるということは、もう「麻雀好き」というワードで逃げられない。イメージするところは歓喜の合格というものだったが、YouTubeの生配信で合格を確認した後、中田はもちろん喜びはしたものの、思うよりも早く訪れたプロ入りに一気にプレッシャーを感じ始めていた。
中田花奈(以下、中田) 本当に無理だと思っていたんです。試験の面接の時に「筆記試験はいいけど、実技試験はもうちょっと頑張りましょう」というお話もされていたので。ぎりぎり育成合格(一定期間を経てから正規のプロになる)だったらいいなと思っていたくらいでした。狭き門だと思うし、頑張らなきゃですね。
中田は現在、乃木坂46時代からの冠番組「元乃木坂46中田花奈の麻雀ガチバトル! かなりんのトップ目とれるカナ?」に出演しているほか、麻雀番組やYouTubeの配信で、麻雀を打つ姿を披露する機会が増えてきた。大人気アイドルグループの1期生が大好きな趣味を楽しむ、という認識をされてきたが、プロ入りした途端に立場はガラリと変わる。
中田 今まではタレント業を優先してやるのが当たり前だったんですが、麻雀プロとなったら打ち方もしっかりできないといけない。今は「トップ目とれるカナ?」で指導をしていただける生徒役だったんですが、それができなくなっちゃう(苦笑)。麻雀ファンの方々の指摘もいろいろありますが、自分は正しかったと言える打ち方ができないとプロではないと思うので、そこまで行くにはまだまだ長い道のりです。
対局番組の多くは、4人の手牌が全て見える状況で、視聴者はまさに「神の視点」で観戦している。そこでプロが不要に見える振り込むをしたり、打牌選択が裏目に出たりすると、厳しい指摘が飛ぶことも少なくない。一人のファンとして番組も多く見てきただけに、打つ姿を見せる側に回ることの恐ろしさは、よく知っている。
中田 生まれ変わるというか、もう全然意識が違いますよね。「プロ」という肩書があると、へらへらしていられないじゃないですか(笑)。もちろん、それでいいと思っていたわけでもないですし、自分が好きなことだからこそ勉強もしてきました。でも、もう「好きだから」とかじゃないですし。プロとして、日本プロ麻雀連盟さんにご迷惑がかからないように、団体の名に恥じないようにという責任を感じます。
タレント業も続けていく。日本プロ麻雀連盟には、俳優の萩原聖人、モデルの岡田紗佳をはじめ、芸能界でも多忙な日々を送る先輩がいる。また2人は、プロ麻雀リーグ「Mリーグ」という大きな舞台でも戦っている。中田にとっては、2つの世界をよく知るありがたい存在だ。
中田 スケジュール管理とか、どうしているんだろうとすごく思いますね。萩原さんならドラマが入った期間とか忙しいと思うし、そういう時にどうやって麻雀の時間を作っているんだろうと。あと、ファンからの見られ方ですよね。私はこれから絶対に「元乃木坂46というおまけで合格させてもらった」って言われない打ち方をしたいと思います。そういう見られ方に対する気持ちの持って行き方ですね。Mリーガーにもなっていると、それこそ他のプロの方からも「(選択は)こっちの方がよかったんじゃないか」とかいう声も、いろいろあると思うので。
自ら語ったように、現在のプロ麻雀界におけるトップリーグ「Mリーグ」に関することは、ファンも注目するポイントだ。プロ歴何十年といったベテランから、まだ2~3年目といった若手まで混在するが、もともと老若男女問わず、等しく戦えるのが麻雀の世界。そこには人気の元アイドルだから、という理由で許される打牌が1つもない。
中田 Mリーグはプロの中でも本当に一番の世界なので、目指すも何も全然まだですが、そういうところに行けるくらい自分を磨きたいですね。もし「そこを目指して!」というファンの方がいらしたら、「ちょっと待ってください。まだまだ時間が必要です」と伝えたいです。
人生をかけて戦う人々を見てきただけに、安易に活躍宣言も、Mリーグ入りも語らないところは、乃木坂46時代にパフォーマンスにストイックに打ち込んできたものと、まるで変わらない。プロ入り直後に、先輩たちがしのぎを削るシーンを間近で見る機会を持てたのは幸運。国内最大級のプロ・アマ大会「麻雀最強戦2021」のアシスタントに決まっているからだ。
中田 私は打つのも好きですが、見るのもすごく好きなので、いろいろなドラマが見られるのは本当に楽しみです。1つ1つ勉強できたらいいですし、せっかくプロの方が近くにいるので、もし聞けることがあったら質問したいです。
番組企画などで「教えてもらう」のではなく、自ら「学び取る」という姿勢は、既に備わっている。そう聞けば、プロ麻雀界においても、きっと活躍するようになると感じさせる。
中田 アイドルは卒業したんですが、今すごく応援しがいのある状態だと思います(笑)。アイドルも応援しがいがあると思いますが、麻雀プロも応援しがいがあると思うので、よろしくお願いします。団体のリーグ戦もあるので、どのくらい進めているか、何位だったかなとか、チェックしてほしいです。
乃木坂46入りし、芸能活動を始めたのが2011年。それからちょうど10年経ち、別の道でスタートラインになった中田を、もう一度最初から推せるのは、今までのファンにとっても、これからのファンにとっても、絶好の機会だ。
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