菅総理は18日、東京都と埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県に出されている緊急事態宣言を「21日で解除する」と表明した。

 東京都によると、18日に確認した新型コロナウイルスの新たな感染者は323人。重症者の数は前日から3人増え、44人だった。前日の17日は東京都で409人の感染が確認され、1カ月ぶりに400人を上回った。全国では26日ぶりに感染者が1500人を超え、空港検疫でも14人が陽性になっている。

感染症専門家「日本は感染者を数えているだけ」 梅毒やエイズ流行の時代から繰り返されてきた“失敗”
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 この段階の緊急事態宣言解除は適切な判断なのだろうか。感染症専門家で神戸大学の岩田健太郎教授は「役割を果たした上での解除ではない」と話す。

■「医療がひっ迫していない」は理由にならない 感染症専門家・岩田健太郎教授


「緊急事態宣言は時間が経つほど、効果が落ちていく。これ以上やってもメリットが非常に小さい。役割を果たした上での解除ではなく『これ以上やっても無駄だから解除』という、消極的な理由から解除に踏み切ったのだろう」(以下、岩田健太郎教授)

 およそ2か月半にわたった2度目の緊急事態宣言。宣言解除によって感染者が爆発的に増える可能性はないのだろうか。岩田教授は「感染者を減らす別の施策が必要だ」と指摘する。

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「緊急事態宣言をいたずらに続けるのは愚策だが、何もしないのはもっと愚策だ。よく言われる『病床がひっ迫していない』はダメな理由。去年の夏頃も同じことを言われたが、病床がひっ迫してなくても、感染者が増えているなら、根絶やしにかからないといけない。増える感染者を放っておくと、次はもっと増えて、最終的に医療がひっ迫することになる。だから『今は医療がひっ迫していない』を言い訳にしてはいけない」

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 依然として、新型コロナの新規感染者数の減少が鈍化している日本。コロナ禍を少しでも長引かせないために、我々には何ができるのだろうか。岩田教授によると「ポイントは2つある」という。

「1つ目は会食。食事そのものは感染を広げるファクター(要因)にはならないが、複数の人と同じ場所で飲食することは感染リスクになる。緊急事態宣言の問題点は『夜8時以降の営業を短縮する』という“時間”で取り締まったことで、昼間から宴会をやる人が出てきてしまった。これでは全く意味がない。レストランやバーの閉店時間ではなく『どのような形態で飲食をするのか』に着目するべき」

「2つ目は、3月から4月は人の移動が多い時期。本来政府がやるべきことは『送別会や新入歓迎会は絶対やらないで』という呼びかけだ。転勤などもできるだけ最小限にし、今年は毎年やっているような春の人事異動をしないようにする。会社の工夫で、変異株の感染拡大を最小限に抑える必要がある」

■ 「20代だけ頑張ればいい」は間違い 繰り返してきた“日本の伝統的な失敗”


 東京都の感染者数を年代別に見ると、20代が最も多くなっている。岩田教授は「20代だけが頑張ればいいという話ではない」と語る。

「一貫して、20代が最も多く、年齢が上がっていくに従って感染者が少なくなっている。しかし、これはあくまでも相対的な違いであって全体として『じゃあ20代だけ頑張ればいい』は間違っている。また、20代だけが悪いわけではない。大切なことは全年齢が感染対策に努めること。『この年齢層だけきちんと対策しよう』『この年齢層の人たちがいけない』といった報道はミスリーディングだ」

 気になるのは変異ウイルスの出現だ。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の研究チームは「イギリス型変異ウイルスの致死率は従来の型よりも55%高い」と発表。また、フランスでは、PCR検査をすり抜けたとみられる新たな変異ウイルスの出現が報道されている。日本でも千葉県で15日、変異ウイルスのクラスター感染が初確認されるなど、国民の不安は高まっている。

 岩田教授は、梅毒やエイズが流行した時代にも見られた「日本の伝統的な失敗」に言及する。

「今日本で広がりつつあるのは、イングランド型の変異ウイルスだ。これはVOC(Variant of Concern ※注視すべき変異)と言われていて、既存株より死亡率も高い。本来、変異ウイルスを徹底的に抑え込むことが筋だが、国内で変異ウイルスが見つかったときに水際対策ばかり一生懸命やって、国内の感染の広がりをどうするかの対策に注力してこなかった。今も検査の規模を増やしているが、これは数を数えているだけで、抜本的な対策にはならない。これは日本の伝統的な失敗で、梅毒やエイズが流行した時代もそうだった。あらゆる感染者の感染者数は数えるけど、広がりを抑える対策がうまくできない。数を数えた上で、変異株を抑え込み、感染者を増やさないようにしていく。そこまで持っていかないと、対策とは言わない」

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 今月に入って、医療従事者への新型コロナワクチン優先接種も本格化している。岩田教授も先週、1回目のワクチンを打ったばかりだという。しかし、岩田教授は「まだワクチンの影響を語るには早い」と話す。

「パワフルなワクチンで、感染抑制は高いと言われているが、“感染者の広がりを抑える”という意味では、医療従事者だけ接種しても全然足りない。東京都や宮城県で感染者が増えているが、住民の6~7割がワクチンを打って。初めて感染抑制のインパクトが出てくる」

 東京でも3月の下旬からお花見シーズンが始まる。今年は人が集まるような宴会を避け、静かに桜の花を見て、美しさを楽しむなどの行動が求められそうだ。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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