23歳の若きパフォーマーが、プロ将棋界の超早指し団体戦に大注目だ。人気ダンス&ボーカルグループ「THE RAMPAGE from EXILE TRIBE」のメンバー、岩谷翔吾は小学生のころからがっつり指し続けてきた将棋ファン。その実力は現在、プロ将棋界の頂点に立つ渡辺明名人に「将棋番組のアシスタントぐらいなら、すぐにできる」と言われたほど。その岩谷が楽しみにしているのが「第4回ABEMAトーナメント」だ。3人1組、計15チームが優勝賞金1000万円をかけて戦う一大企画に「木村一基九段が大好きなんです!」と、“中年の星”として輝く棋士の名を出し、チームの予想メンバーまで考えた。
少年時代は、日曜日に将棋番組を見て、父と約1時間かけての対局を2回は指していたという岩谷。今でもアプリ「将棋ウォーズ」で指すことが多く、アプリ内では三段の腕前だ。居飛車も振り飛車もこなすハイブリッド型で、渡辺名人と二枚落ち(飛車・角落ち)で対戦した時は、矢倉に囲って飛車を使った端攻めと、その実力の片鱗を見せるしっかりとした指しぶりだった。
棋士にとっては不慣れな団体戦だが、岩谷は16人という大所帯でパフォーマンスを続けているだけに、チームを組むことのメリットは痛感している。「1人だったら、1人で360度を見渡さないといけないけれど、3人だったら120度でいい。それが16人だったら、もっと負担が減るし、見るべきところが少なくていい。お互いがお互いを支え合って、大きな船みたいになっているんです」と、力と力が合わさることで人数以上の力が生まれることを知っている。アマチュアからすれば、神の領域にいるプロの棋士が3人も集まれば、その思考もまた超ハイレベル。いつもは1人で戦う棋士が3人集まって協力したらどんな戦いになるのか、今から楽しみのようだ。
同大会の大きな特徴の一つが、棋士が棋士を選ぶドラフト会議。タイトルホルダーらトップ棋士14人が、2人ずつ指名して3人1組のチームを作る。ここで岩谷から名前が出てきたのが、受け巧者であり“千駄ヶ谷の受け師”の異名を持つ木村九段。46歳3カ月という、史上最年長での初タイトル獲得は、若手の勢いに押される中年に希望を与えたとして、メディアでも大々的に取り上げられた。
若さゆえに攻め将棋が好きかと思われたが、受け将棋に興味を持つあたり、岩谷の将棋レベルの高さも伺い知れる。「木村先生はとても好きな棋士の一人です!こういうご時世ですし、後半に粘り強い人を応援したくなるんです。どんなにパンチを打たれても絶対に負けない精神です」と、新型コロナウイルス感染拡大に沈む世の中だからこそ、木村九段のような不撓不屈の精神に、いつも以上に興味をそそられた。
では、木村九段はどんな棋士とチームを組むか。「高野智史五段は、お弟子さんですよね。お若いですしチームに入れましょう。師弟コンビとか、いいじゃないですか」と、1巡目に弟子の名を入れた。では2巡目はどうか。「本田奎五段も、すごいですよね。渡辺さんと棋王戦で戦いましたし。推したくなります」と、実質的なデビュー年度でタイトル挑戦まで駆け上がった期待の若手を選んだ。この高野五段と本田五段の2人、前回大会では三浦弘行九段とチームを組んでいた。リーダーだけが代わり、他の2人は同じというのも、組み合わせとしては斬新だ。ファンが気になるドラフト会議の放送は3月27日。岩谷の予想の結果は、はたして…。
◆第4回ABEMAトーナメント 前回までは「AbemaTVトーナメント」として開催。第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦になった。チームはドラフト会議により決定。リーダー棋士が2人ずつ順番に指名、重複した場合はくじ引きで決定する。第3回は12チームが参加し永瀬拓矢王座、藤井聡太王位・棋聖、増田康宏六段のチームが優勝、賞金1000万円を獲得した。第4回は全15チームが参加。14チームは前年同様にドラフトで決定。15チーム目はドラフトから漏れた棋士によるトーナメントを開催、上位3人がチームを結成する。対局のルールは持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チーム同士の対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負に変更された。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。