「中国人はその手は食わない」Tシャツもブーム? “米批判”に波紋…国内外で賛否
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 先週、アメリカと中国の外交トップによる会談が行われた。中国の楊潔チ政治局委員が発した言葉に注目が集まっている。

 会談の冒頭、アメリカのブリンケン国務長官は「我々が憂慮する新疆ウイグル自治区や香港、台湾の問題、アメリカへのサイバー攻撃や同盟国への経済的恫喝も協議する。そのどれもがルールに基づく国際秩序を脅かしている」と、中国への懸念点を列挙。この発言に中国の楊潔チ政治局委員は猛反発した。

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「アメリカにはアメリカ式の、中国には中国式の民主主義がある。アメリカは自らの民主主義を押し広めるべきではない。新疆ウイグル自治区、チベット自治区、台湾は中国の不可分の領土であり、内政干渉には断固として反対する」

「中国人はその手は食わない。アメリカは中国に上から目線で話す資格はない」

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 5分ほどで終わったアメリカの冒頭発言に対し、中国側は黒人差別問題などを持ち出し、およそ20分にわたって持論を展開。双方の発言が終わり、メディアが退出しようとするとこれまで黙って聞いていたブリンケン長官がマスクを外し、引き止めた。

「ちょっと待ってください。そちらが長く発言したのでもう少し言わせてほしい。先日、日本と韓国から聞いた話は、そちらの話とは大きく異なる内容だった。アメリカの国際社会への復帰に対する歓迎の声と、中国政府の行動に関する深い疑念だ」

 アメリカの反論後、今度は中国側がいったん退出したメディアをわざわざ呼び戻した。楊氏は「アメリカを好意的に見すぎていた。基本的な外交の礼儀は守るべきだ。中国の首を絞めようとしても無駄だ」とコメント。“異例の応酬”を繰り広げた。

 この米中会談に、日中問題に詳しい評論家の石平(せきへい)氏は、楊氏が発した「中国人はその手は食わない」という言葉に注目。ニューズウィーク日本版の記事で「これは、普段外交の場では使われないような相手に対する拒絶を表明する言葉で、中国国内に向けた演出だった」とつづっている。

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 中国内では米中会談を受け、あるTシャツの販売が始まった。Tシャツには『中国人はその手は食わない。アメリカは中国に上から目線で話す資格はない』と書かれた文字。ネット通販サイトではすでに100を超える店舗が販売を開始しており、地元メディアによると、製造業者には依頼や問い合わせが殺到しているという。

 石平氏の分析通り、楊氏の発言は、中国内でさっそく反響を呼んでいるようだ。

 さらに、石平氏は「アメリカ高官への強気の態度は、世界最強国と肩を並べるまでに中国を発展させたという中国共産党の業績をアピールする思惑があった」と分析。今年7月の中国共産党建党100周年に向け、自身が注目されるだけでなく、習近平国家主席にとっても良いアピールになる言動だったという

 中国国内に向けた演出が成功する一方、石平氏は今後の米中関係に言及。米中貿易戦争にまで発展したトランプ政権から今のバイデン政権へと移行したものの、今回の会談によってアメリカ国内の対中世論が悪化する恐れがある。国内政治を優先すべきか、国益のための外交を優先すべきか。「中国は永遠のジレンマを抱えている」と指摘している。

 中国に留学経験もあるニューズウィーク日本版編集長の長岡義博氏も「中国人は真っ二つになっている」と語る。

「全世界の中国人が真っ二つに割れている。中国の国内の人は楊氏の発言を支持しているが、国外で民主化や自由化運動を支持している中国人は『とんでもない』と懸念している」(以下、長岡義博氏)

「中国人はその手は食わない」Tシャツもブーム? “米批判”に波紋…国内外で賛否
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 そもそも、なぜ楊氏は前述の米批判発言を行ったのだろうか。発言の意図について、長岡氏は「アメリカのアラスカという場所で会談すること自体が異例だ」と明かす。

「アメリカのブリンケン国務長官は訪日・訪韓した後、中国にそのまま行っても良かったが、行かなかった。なぜなら、新任の自分から中国に挨拶に行ってしまうと、アメリカのメンツがない。そこで、アメリカと会談したかった中国が帰り際のブリンケン国務長官をアラスカまで追いかけて会談した。中国側にとってメンツが立たない状況だったが、楊氏は前述の発言をするために、あえてアラスカに行ったのではないかと思う」

 交互に記者を呼び戻して主張する米中のやり取りに「まるでプロレスのマイクパフォーマンスのようだ」と表現した長岡氏。楊氏の特徴について「外交官でとても英語ができる人物」と話す。

「楊氏は、アメリカ第43代大統領のジョージ・W・ブッシュに『タイガー』と呼ばれて気に入られていた。楊氏の名前の文字に虎の漢字が入っているためで、当然、米国通だ。楊氏には『欧米をよく分かっているバランスが取れた人』という印象を持っていたので、今回の発言に驚いた。石平氏がニューズウィークの記事に書いたように『自分の出世につなげたい』という思いもあったのだろう。加えて『中国はアメリカに負けない強い国だ』『中国はアメリカにノーと言える』と示すために、この発言をしたのではないか」

 緊張感が高まる米中関係。アメリカと中国の狭間にいる日本はどのような立場を取ればいいのだろうか。

「日本は価値観としてアメリカの民主主義や自由に共感しているが、国の引っ越しができない以上、中国との付き合いも続けていかないといけない。中国が大きくなっていくトレンドは止められないだろう。難しい局面だが、アメリカに一辺倒になるのではなく、中国に吸収されるのでもなく、自分自身で判断・決断していく力が求められている」

※楊潔チ:「チ」は正しくは竹かんむりの下にがんだれと「虎」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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