VRアート「Alternate dimension 幻想絢爛」が、NFTと呼ばれる非代替性トークンのオークションサービス「OpenSea」で落札された。「Alternate dimension 幻想絢爛」は、世界的VRアーティスト・せきぐちあいみさんが手がけた作品で、落札価格は日本円でおよそ1300万円。
NFTは、デジタルアートなどの“データ”と“所有者”をブロックチェーン技術で一致させることで、デジタル作品を“所有できる資産”として販売する方法だ。22日には、ニューヨークに世界ではじめてのNFTギャラリーがオープンした。また、Twitterの創業者による世界初のツイートが3億円を超える値段で落札されるなど、話題を集めている。
せきぐちさんの作品は、VR空間に3Dのアートが描かれていて、観客がVRデバイスを使って中に入り込んで作品を体感できるようになっている。ライブペインティングなどの活動も行っているせきぐちさんは、NFTへの出品に挑戦した経緯をこう話す。
「海外でちょうど先週くらいに、NFT上の作品が高額落札されていた。『せきぐちさんもこういった形でやりませんか?』といろいろなところから連絡をいただいた。どことやったらいいかわからないから、自分で調べたら、自分でも挑戦できるんだと思って。すぐにやってみた」(以下、せきぐちあいみさん)
これまで、デジタル作品は、コピーや複製が簡単にされてしまうため、価値や所有権が付けづらいものだった。しかし、このNFTの活用で、せきぐちさんは「新しい可能性が見えた」と話す。出品期間は、一日だけだった。自分の作品に、およそ1300万円の“価値“がついたとき、何を感じたのだろうか。
「本当にもう感激で、ありがたい限り。私自身もVRアートにものすごく可能性があって、もちろん明るい未来があると思っていた。でも、VRアートそのものがお金になっていくには、まだ時間がかかる。私は死んでもやっていくつもりではあるけど『それで業界的に成り立っていくのか?』という気持ちもあった。もしかしたら、ここからデジタルの価値観や、デジタルアートの在り方自体が、新しく改革されていくかもしれない。とてもうれしいことだと思います」
せきぐちさんにとって“VRアート”は「リアルな絵画とまた違った魅力がある」という。
「画を作るのではなく、別の世界が作れるのはVRアートならではの技術。『リアルな画じゃないと嫌じゃない?』と感じる人も絶対いると思うが、デジタルでも最終的に一番大事なことは人の心に残ったり、記憶に残ったりすること」
感情、記憶、価値観――目に見えないけれど、大事なもの。せきぐちさんは将来、デジタルが「自分の人生の一部」になる可能性を信じている。
「私たちは今、スマートフォンやパソコンでデジタルな世界をかなり使いこなしているが、これからはもっともっとデジタルが私たちの身近なものになってくる。そうなってきたときに、デジタルも“自分の人生の一部”になってくるのではないか。(『Alternate dimension 幻想絢爛』の落札は)デジタルの世界が、より私たちの人生に近づく新しいきっかけになったと思う」
■ 漫画業界もNFTに注目 漫画家・赤松健氏「世界に向けても有望だ」
せきぐちさんのインタビューに『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』の原作者である漫画家・赤松健氏は「漫画業界もブロックチェーン技術には注目している」と明かす。
「(NFTは)所有者履歴が残るし、例えば作品が転売されるときに、あらかじめ契約を結んでおけば、作者に落札額の何割かが入る可能性もある。そこにクリエイターたちが興味を持っている。ブロックチェーン技術に関しては大手出版社も続々実験に乗り出していて、実際にデジタル作品を売る漫画家もいる。私が運営している電子書籍サイト『マンガ図書館Z』でも検討中だ」(以下、赤松健氏)
一部のクリエイターがこぞって始めているNFTの活用。実際にどのような作品が扱われているのだろうか。
「カラーイラストが多いようだ。そのデジタル上の所有権を売っている。付加価値として作者のサロンに参加できる権利をつけるなど、いろいろなアイデアが考えられる。大手出版社は今増収増益で、特に版権ビジネスが伸びている。世界市場に向けても有望だ」
さまざまな可能性を秘めているNFTの活用。デジタルを通じて、芸術に新しい価値が生まれる日も近いのかもしれない。
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側