「ドスッ」…鈍い音を響かせて試合終了間際に炸裂した右のブーメランフックによる劇的KO決着に「時間はない…でも、パンチはある!」と実況が絶叫すると、視聴者からも「とてつもないパンチが入った」など驚きの声が殺到。正式な試合タイムは、文字どおり「3R 0分0秒」。まさにゴングと同時のKO決着とだった。
3月27日に後楽園ホールで開催された「Krush.123」で大岩龍矢(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)が山本直樹(優弥道場)にフルラウンド、フルタイムの末に衝撃のKO勝ち。試合終了のゴングと同時に飛び出した劇的なKO決着に、放送席からは「試合終了とともに、ゴングと同時は凄いドラマチックな試合ですね」と感嘆の声が漏れた。
昨年はレオナ・ペタス、朝久裕貴を喫している大岩。一方の山本も年末のK-1で村越優汰に完敗。K-1トップ戦線への生き残りを賭けた中堅同士が、2021年初戦に再起をかける一戦だ。
1ラウンド開始と共に強いプレッシャーと豪腕右フックを振るう大岩。対する山本はロー、膝、前蹴りに右ストレートなど手足巧みに相手に触らせない。山本が相手の左足を狙いカーフキックを効かせると、大岩も距離を詰めてボディ、右ストレートを振り抜くなど、緊迫した攻防だ。
2ラウンドも山本の狙いは、大岩の軸足となる左足だ。両足を使い、内側からカーフ、踵を使ったヴァレリーキックを叩き込むと、足払いまで繰り出して大岩の左足を徹底して狙っていく。
明らかに足にダメージを負った大岩も果敢に前に出るが、ディフェンスに長ける山本はしっかりブロックしてボディ、左右のミドル、細かいパンチと散らしながら応戦。さらに追い打ちをかけるような左足狙いの蹴りで、大岩を追い込む。
ほぼ山本に傾きかけたラウンドだが、そこは豪腕に定評のある大岩。残り1分、防戦から一転して右フックを当てると山本を後退させ、さらに右ストレートを振り向いて2発のパンチで形勢逆転。ダメージの大きい山本は残り時間、大岩の左右のフックの連打を浴び、辛うじてこのラウンドをしのぐ形で終えた。
3ラウンド、セコンドの兄・優弥にパシッと背中を叩かれリングへ向かった山本は、ヒザ、ロー、前蹴りと再び攻めに転じて息を吹き返す。一方の大岩は、何度もヒザを顔面に貰いながら愚直に頭を付け、近い距離での打ち合いで真っ向勝負を挑んでいく。大岩が左右のフック、山本がヒザやパンチでの激しい攻防だが、手数では圧倒的に山本。しかし残り10秒、投げ出すように飛び込んだ山本のヒザが空を切ると、そこに合わせるように大岩の豪腕フックが炸裂。手応えがあったか、勝利を確信して観客の方を向いて腕を振り上げる大岩に対して、立ち上がれない山本はそのままゴングを聞いた。
残り時間は0秒。試合終了間際の劇的な幕切れにABEMAで解説を務めた石川直生が「試合終了、ゴングと同時なんて凄いドラマチックな試合ですね」と興奮気味に話すと視聴者からも「ブーメランフック強い」「とてつもないパンチが入った」など多数の声が寄せられた。
2ラウンド、3ラウンドと優位に試合を進めながら、豪腕一発に泣いた山本。最後はリスクを負って逆転の一打に飛び込み崩れ落ちたが、終始攻め続けた激闘に、この日のゲスト解説・佐藤嘉洋は「恥じる必要はない、攻めた結果、勝ちに行った結果」と讃えた。
試合後のマイクで連敗を脱出した大岩は「最後気持ちが折れそうだったんですけど…」と厳しかった試合を振り返りながら、「やっぱりKrush・K-1はKOでなきゃダメですね…ラスト1秒だったですけど…」とラウンド終了と同時のギリギリ駆け込み勝利について自ら突っ込み笑いを誘っていた。