将棋界のスーパーレジェンド・羽生善治九段(50)の指名に、関係者たちも驚いた。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」の大会に先立ち行われたドラフト会議の模様が3月27日に放送された。今回が人生初のドラフト会議だった羽生九段は、1巡目に中村太地七段(32)、2巡目に佐藤紳哉七段(43)を指名、チームを結成した。羽生九段が誰をパートナーに選ぶのか。将棋ファンの間でも大きな話題だった結果がついに明かされた。
14人のリーダー棋士の指名と、自分の指名が重ならなかったのは、少し意外だった。「人数も多かったですし、結構重なるケースも多いと思ったんですけどね。自分が想像していたより、かなりスムーズに終わったという印象です」と、すんなり終了した人生初ドラフトを振り返った。
そんな中、1巡目で選んだのはタイトル経験もある中村七段。同じ八王子の道場出身という縁もある。「中村さんは去年のドラフトを見ていた時も、どこかが指名するのかなと思っていたんです。意外といけるんではないかと思って、指名をしました」と理由を述べた。
そして2巡目には佐藤七段を指名。解説やイベントなどで、かつらを飛ばすパフォーマンスでも知られるが、羽生九段はその“盤外戦術”だけ見ているわけではない。「佐藤さんは将棋がかなり本格派。普段の対局でも、早い段階で秒読みになっていることが多いので、このルールに向いているんじゃないでしょうか。公式戦での秒読みの経験値はかなり大きいです」。自身のアイデアをもとに生まれた、持ち時間5分・1手指すごとに5秒加算という、超早指しのフィッシャールール。日頃から公式戦の秒読み(1分将棋、30秒将棋)のプレッシャーに慣れていれば、このルールでも手が泳ぐこともない。そこに適性を見た。
もちろん、パフォーマンスに期待する部分も大いにある。この大会は、棋士の素顔や普段見せない様子などを収録した映像も人気となっている。自身も前回のチームでは、うさぎカフェに言って、どうぶつしょうぎを指すという、初出し映像を作り出した。「盤外ですか?そこはご本人次第で、楽しんでもらえれば(笑)サービス精神は旺盛なので、みなさんのご期待に沿うのではないでしょうか」と、この日一番に目尻を下げた。
自分の着想で生まれたこの大会だが、前回は1つも勝てずに4連敗したという苦い思い出もある。「今回はもうちょっとこのルールに慣れて、個人としてもチームとしても、前進できたらと思います」と、言葉に力を込めた。ファンが見たいのは、盤上では気高く強く、盤外では柔らかな笑みを浮かべる、そんなレジェンド・羽生善治だ。
◆第4回ABEMAトーナメント 前回までは「AbemaTVトーナメント」として開催。第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦になった。チームはドラフト会議により決定。リーダー棋士が2人ずつ順番に指名、重複した場合はくじ引きで決定する。第3回は12チームが参加し永瀬拓矢王座、藤井聡太王位・棋聖、増田康宏六段のチームが優勝、賞金1000万円を獲得した。第4回は全15チームが参加。14チームは前年同様にドラフトで決定。15チーム目はドラフトから漏れた棋士によるトーナメントを開催、上位3人がチームを結成する。対局のルールは持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チーム同士の対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負に変更された。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。