3月8日に公開されて以来、全国で大ヒットしている映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。公開21日間での興行収入は60億円超、観客動員数も396万人超と、シリーズ作品としては既に最高記録を更新している。28日、実に「エヴァンゲリオン」シリーズとしては24年ぶりに行われた舞台挨拶は、主人公・碇シンジ役の緒方恵美が「最初で最後」と語る、キャスト14人が大集合に。試写会や、一般公開された後の劇場など、それぞれが初めて集大成の完結編に触れた時の思いを語った。
緒方恵美(碇シンジ) 新劇場版は、特に『:破』ぐらいから、割とバラバラに収録することが多くて。特に今作は、本当にみんながバラバラで収録したので、どういう芝居をしているかよくわからずにいました。「こうなったのか」と完成版を見て初めて知って、みなさまと同じような気持ちで拝見しました。全てのクリエイタースタッフのみなさまに「お疲れ様」と言いたかったです。
林原めぐみ(アヤナミレイ(仮称)) 2時間35分。長い長い時間を観終わり、そしてさらに長い長いエンドテロップを観ながら、これだけの人が集結した映画なんだなと、改めて感慨深い思いでおりました。おそらく30代以降の方たちはここが一つの終わりであり、10代の人たちにとっては、もしかしたらここが入り口なのかもしれないなという思いでおりました。無限ループの中を漂う人も、一度抜けてまた帰ってくる人も、エヴァンゲリオンという一つの世界が存在していたことを噛みしめるような思いでした。
宮村優子(式波・アスカ・ラングレー) 試写と、地元で友達と映画館で、2回観ました。昔、エヴァンゲリオンがすごく社会現象になった時に、インターネットがそこまで普及していなくて、「エヴァンゲリオンの謎」みたいな考察本が出ました。その当時、私もそういうものを読んで、「みんないろいろ考えているんだ、そうなんだー」と思っていたんです。今回2回観ても、いろいろ自分で考察したり、インターネットでみなさんの考察を見たり聞いたりして、「えっ?そんなところ、そうだったっけ!?」みたいな。これが正しいエヴァンゲリオンの楽しみ方なんだなと思いました。完結編でも、1粒で何度もおいしい思いをしているなと、自分でも思います。みなさんもいっぱい楽しんでくれたらいいなと思います。
三石琴乃(葛城ミサト) 試写で1度観ました。人物たちの気持ちはすごく心にぐっと迫るものがありまして、涙したりもしたんですけど、細かい設定とか、この地球がどうなっちゃっているんだろうとか、わからないままなんです。葛城ミサトとしては、大切な役割を担って重要なシーンを任されたのでそこはうれしくて、一生懸命頑張ってやりました。
山口由里子(赤木リツコ) 私は初日、(舞台挨拶の会場だった新宿)バルト9でこっそり、後ろの方で。(夕方)5時の回だったかと。今(舞台挨拶の客席には)女性の方が結構いらっしゃいますが、その時はほぼ男性で。エヴァってこんな世界だったのかとびっくりしました。本当に台本を読んだ時、30分ぐらい泣いていたと思います。あまりに感動して。でもその時よりも、さらにさらに動けないぐらいの感動でした。素晴らしい芸術作品、アニメを超えた芸術作品だと思って。出会えてよかったです。いろんな方に感謝しながら、エンドロールが終わった途端、一瞬しんとなって間があった後に、ぶわっと拍手がわいた、本当にあの時のことは忘れられません。本当にあれを味わえたのは幸せです。間違いなくトップ映画、好きな映画、『シン・エヴァンゲリオン』と言うと思います。あと10回は観ると思います。
石田彰(渚カヲル) 僕もこの作品を観終わった後に、作品自体に翻弄されました。ある種、異様とも言えるような映像を観せられて、これをどう解釈すればいいのかと。細かな設定的なこととか、理解が及ばないことが多すぎて、物語自体をどうとらえればいいのだろうと思ったんですけど、でも話自体を理解するには、特にシンジとゲンドウの会話をきっちり、聞き逃さないように追えば、わかるようになっているのかなという気がします。僕はそれで解釈した気になっています。そんな僕はゲンドウがシンジに、あるタイミングで「大人になったな」って言うのを見て「お前が言うな!」と思いました。そういう作品です。
立木文彦(碇ゲンドウ) ゲンドウとして当然非常に大事な役どころであったんですけど、収録の時よりもこの作品を最初に観た時に、印象が違って観えたんですよ。それはなんでだろうと思ったら、それまでのみなさんの、役者の方々、スタッフの方々の努力の結晶が全部に表れていて。最初に観た時の印象は、全ての役に本当に愛があるし、本当にみんなが好きになるくらい。エヴァでみんなを好きになる、それぐらい思い入れが1回目から強くなりました。エヴァンゲリオンという作品は、アニメではないなという気が非常にします。これは「THE映画」。25年間、テレビシリーズから愛してもらっている所以なんだと思います。自分の中では、言いたいことはいっぱいあるんですが、庵野監督と同世代で、この映画に到達するまでやれて、この先はわからないですが、一つの区切りをつけられたということが、僕としては自分の中の「Beautiful World」というか、そんな感じです。
岩永哲哉(相田ケンスケ) 僕は映画館の試写を拝見しました。観た後、とんでもない映画ができてしまったというのが、素直な感想です。メカニック的な動きといい、人の表情といい、こんなところでこんな音楽使うんだとか。びっくりしちゃって、本当にすばらしい作品が完成したというのが実感です。相田ケンスケとしては『:破』以来、12年ぶりに復活しました。本当に干支が一回り、回ってしまったんですけど、最後に間に合って無事に復活して、ケンスケ的にも役割がありまして、いい仕事ができたかなと。本当に最後、みなさんと関われて本当に感謝しております。
岩男潤子(鈴原ヒカリ) 私は3度、試写会を観るのが怖くて、お断りしてしまい…。公開されてからはチケットが取れなくて、3日目だけ1席だけ空いているところを見つけて、1人で観て来ました。席についたとたん涙が溢れてしまって、1回目は泣きじゃくるに近い状態で。お隣に座っていた女性も同じくずっと泣いていて。2回目でしっかりと、事務所のスタッフのみなさんと観ることができました。庵野監督の温かい気持ちや優しさが散りばめられていて「誰も一人にさせないよ」って。みんな幸せになるんだよというメッセージが込められているようで、観終えた後にすごく優しい気持ちになりました。感謝の気持ちがあふれてきました。本当にありがとうございます。
長沢美樹(伊吹マヤ) 伊吹マヤとしては、庵野監督の「プロフェッショナル」を見せていただいた時、その中で監督が「美しいだけのものって、あまり魅力に感じない」と思っていらっしゃる節だとか、「どこか欠けている存在の方が魅力を感じる」ということをおっしゃっていて。そう思って振り返ってみると、伊吹マヤって、エヴァンゲリオンという特殊な世界の中で、普通の女の子がぽつんと一人でいて、その中でもしかしたら嵐のような個性的な人たちと、嵐のような世界観の中で、すごく普通というか。きれいと言ったら違うかもしれませんが、すごく整った存在でいたんじゃないかと思います。ところが始まっていくうちに、マヤ的にびっくりなエピソードがたくさんでした。エヴァンゲリオンの捕食シーンとかでは、げろげろってなっちゃったりとか、リツコ先輩のことがすごく好きでたまらなくて、以前の劇場版の時には、溶けてしまう時に、「絶頂を迎える感じで『先輩!』って言ってくれ」というオーダーをいただいたりですとか。『:Q』になっていきなり変わったように、「どうしたの、マヤちん!」と思うくらいの感じになっていて。整っているところを無理矢理壊されるような瞬間が、マヤ自身には結構たくさんあったんじゃないかと思っています。こういうのが、庵野監督が大事にしていらっしゃることの一端だったのかなと、今振り返ると思ったりしています。新劇場版を観ながらも、またそんな風に思っておりました。この役をやるにあたって、人生で大切な、活用できるセリフをたくさんいただけました。テレビシリーズの時には「不潔」と、日常生活でいっぱい使わせていただきましたし、今後の私の人生においては「これだから若い男は」というのを、いろんな人たちに向けて言っていこうと思います。観終わって「これはアニメじゃなかった、神話だったんだな」と思いました。
優希比呂(日向マコト) 観終わった後も、いろんなことを考えすぎてしまって、作品をどこまで楽しめたのかなと思うと「何回か観ないといけないな」と。(収録は)ほとんどが抜き録りだったわけでありまして、ただエヴァンゲリオンを見ていると、特に今回の『シン』で言うと、複雑な人間関係が散りばめられているんですよね。難しいセリフが多いんですよ。それを抜き録りで、ここまで出演者ができたっていうのが、観ていて「なんてすごい声優たちなんだろう」と、僕は感動しましたね。芝居に関して。本当に複雑なんですね、演技で言うと。「よく相手がいなくて、これが言えるよなあ」と客観的に、みなさんのことを思って感動していました。作品の中のエンターテインメントであるとか、SFファンにはたまらない、いろんな設定だとか、これもまた何回か観ないと理解できないと思っています。
伊瀬茉莉也(北上ミドリ) 私がエヴァンゲリオンに初めて触れたのが、新劇場版『:序』になるんです。初めてエヴァを観た時に、すごく衝撃がありまして、その後に『:Q』でオーディションを受けさせていただいて、役が決まってから、テレビシリーズも一気観をさせていただいた。まさか本当に最終章まで関わることができて本当に光栄だなと思います。完成した作品を観た時には、涙が止まらなかったです。庵野監督の作品への愛だったり、キャラクターへの愛だったり、キャラクター同士の愛というものをすごく感じられたので、とても感動しました。
勝杏里(多摩ヒデキ) 僕が劇場版を観終わった後は、やはりすごく涙が出て金縛りのように、動けない状態でした。作品に対して感動したこと、自分が携われたこと。それと僕も最初10代のころにテレビシリーズに触れているので、この業界に入る前から、一ファンとして見ていたものに、まさか自分が携わるとは思っていなかったし、携わって、それが最後を迎えたというのが、自分の中ですごく大きくて。いろんな尺度から、ものすごい感情が来て、それで金縛りみたいになっちゃいました。10代の時に自分が見ていたもの、テレビ版を観直しても、その時の自分によって、作品がどんどん変わっていくというのが、この作品の特徴だと思うので、これからも一エヴァンゲリオンのファンとして、ずっと観続けていきたいと思います。
山寺宏一(加持リョウジ) 僕は出ていてよかったなと思いました。セリフを一応録ったんですけど、庵野さんが「つまんないからカットしましょう」って、「プロフェッショナル」を観ていた時に、言いかねなかったんで(笑)。本当に庵野さん、たくさんのスタッフが命を削って作った。世の中にたくさんエンターテインメントがある中で、唯一無二の存在であるエヴァンゲリオンに出られました。我々声優は作品との出会い、キャラクターとの出会いがほぼ全てと言っていいぐらい。僕も長くこの作品と、加持という役に携わらせていただきました。(自分の)代表作をよく見ると、加持リョウジとアンパンマンのチーズと出るんで、その2つのキャラクターに感謝をしたいと思います。本当にありがとうございます。
◆「エヴァンゲリオン」シリーズ作品
1995年にテレビシリーズ『新世紀エヴァンゲリオン』がスタート。汎用人型決戦兵器・人造人間「エヴァンゲリオン」と、そのパイロットとなる14歳の少年少女、謎の敵生命体「使徒」との闘いを中心に描かれると、その斬新な設定やストーリーから全26話放送後にも社会現象になるほど注目された。1997年には、テレビシリーズとは異なる結末を描いた『劇場版』が公開に。それから10年後、設定・ストーリーをベースに再構築した『新劇場版』シリーズの公開がスタート。2007年に第1作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』、2009年に第2作『:破』、2012年に第3作『:Q』、そして2021年に最新作にして完結編の第4作『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開された。