世界中の多彩なボーカリストを迎えて楽曲のリリースを重ねる、日本人2人組の覆面アーティスト「AmPm(アムパム)」。AmPmは今月19日、未公開の楽曲「Intro」をNFTとして販売すると発表した。
NFT(Non-Fungible-Token:非代替性トークン)とは、コピーがされやすく価値が付けづらいデジタルデータを、ブロックチェーン技術によって所有できる資産として販売する方法。最近では、ニューヨークに世界で初めてNFTギャラリーがオープンしたほか、Twitter創業者の初ツイートが3億円を超える値段で売却されるなど話題となっている。
AmPmの楽曲が販売されているのはNFTのオークションサービス「OpenSea」で、販売期間は31日午前0時まで。楽曲は1枚限定で、最高額で落札した人には「世界で一枚だけの楽曲の所有者」という“お墨付き“が与えられる。未公開楽曲の限定視聴性NFTは、日本人アーティストとしては初めてとなる。
AmPmの楽曲をNFTとして出品しているのは、CryptoGames株式会社とCuddling合同会社。ブロックチェーンゲームやNFTサービスの開発を手掛けるCryptoGamesの代表取締役・小澤孝太氏は、音楽分野でNFTの参入に挑戦した理由についてこう話す。
「CryptoGamesは3年くらい前からNFTの事業をやっているが、2020年末から海外を中心にかなりNFTの事例が出てきた。音楽ジャンルでもかなり事例が出てきた一方で、まだ日本ではあまりNFTの事例が出てきていない。2021年3月に入ってから音楽を使った事例を日本で初めて出したいと思って、AmPmさんにご相談させていただいた」と話す。
今回のAmPmの挑戦は、他のアーティストへも前向きな影響を与えているという。
「AmPmさん自身は、新しい分野に積極的に入っていくような日本人のミュージシャン。今回も新しいNFTという分野に最初に挑戦して、いい事例となって『他のアーティストも参加するきっかけになればいいな』とおっしゃっていた。やってみた感想としては、思った以上に事務所やミュージシャンから前向き、ポジティブな反響をいただいているらしく、かなりいろいろな問い合わせがあるようだ」
小澤氏は「今は一時的なNFTバブルが起きている状態」だとした上で、NFTとデジタル業界の今後についてこう話す。
「NFTの本質は、二次流通におけるクリエイターの還元の部分であったり、今までデジタルでは価値が出なかったけど、コピーできないデジタルデータつくれることになったことで、デジタルデータにもきちんと価値を持つことができるようになったというところだと思う。中長期的にオンライン時代になっていく中で、これからいろんなものがDX(デジタル変換)して、オンラインのものとしてNFTが活用されていくんじゃないかなと思っている」
NFTについて、BuzzFeed Japan News副編集長の神庭亮介氏は経済面から次のように話す。
「今は緩和マネーがあふれ返って、どこに向かうか探しているような状態。そこでNFTが注目され、デジタルアート作家Beepleの作品に75億円もの値がついたり、ニューヨーク・タイムズのコラムが6000万円で落札されたりしている。1980年代のバブル期に、ゴッホの『ひまわり』が50億円超で落札されたことが思い返される過熱ぶりだ。もちろん長く持ち続けるために買う人もいるだろうが、ある種の金融商品として購入し、高くなったら売り抜けようと考えている人もいるだろう」
では、NFTによって音楽を含む芸術のあり方は変わっていくのだろうか。
「ドイツの思想家、ヴァルター・ベンヤミンは“アウラ”という概念を提唱した。『いま、ここ』にある一回性の芸術作品に宿るもので、“オーラ”と訳されることもある。オリジナルのアウラは複製されることで失われていく、とされている。
20世紀を振り返ると、演奏を録音したレコードが大量に流通し、それがCD、デジタル、さらにはストリーミングに変わり……とアウラは薄らいでいく一方だった。『所有からアクセスへ』の流れのなかで、見放題・聴き放題のサブスクリプション・サービスが隆盛を誇り、一生かかっても消費しきれないほど大量のコンテンツが供給されている。
そんな供給過剰の時代にあって、デジタルとはいえ唯一無二で複製できないNFTが、アウラ=オリジナルの復権を促し、『アクセスから所有へ』の再回帰を生み出す道筋になり得るのか? 現時点では懐疑的だが、NFTが今後、バブルやマネーゲームを乗り越えて定着していくなら、そういう可能性の芽も出てくるのかもしれない」
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