岩手県の盛岡市動物公園が公表した“安楽死”をめぐり、ネット上に様々な意見が出ている。
園によると、安楽死したのは来園者との「ふれあい展示」にも出ていた15匹のカイウサギ。一昨年5月、このうち複数匹が「パスツレラ感染症」という病気を発症。抗生剤による治療や飼育舎の消毒などにより、再発も見られたものの一時鎮静化。それでも園ではふれあい展示の中止を継続していた。
ところが去年11月に入ると、再び複数匹で再発。対策を講じたものの全体への蔓延が見られたため、12月に「回復が見込めず症状の進行により苦痛が伴う」「過去と同じ治療や対策を行っても発症を繰り返す」などとして、「全体での病気の根絶は難しいとの結論に至り、苦渋の決断ではあったが全頭の安楽死」を決定したという。
そして今年3月、園がこれらの経緯を公表。するとネット上には「重症化していない個体まで安楽死させる必要はあったのだろうか」「安楽死という都合の良い言葉で、ごまかそうとしている」「里親を探すなりできなかったのだろうか」といった批判の声が寄せられたのだ。
「パスツレラ感染症」について、「さいとうラビットクリニック」の斉藤久美子院長は「イヌ、ネコ、ヒトなどの人獣共通感染症で、ウサギが感染した場合、くしゃみや鼻水などを発症する。完治は難しいが、死に至る病気ではない。また、人が感染した動物の飛沫を吸い込むことでごくまれに肺炎、気管支炎を起こしたり、噛まれることで腫れたり、高熱が出たりすることもあるが、ウサギからヒトへの感染は聞いたことがない」と話す。
自身も動物実験用だったウサギを保護して飼っているという動物保護団体「PEACE」代表の東さちこ氏は「このウサギは希少種ではないし、ふれあい展示に使うという目的を果たせないとか、管理のため人員を割くことができないといった経済的な理由、いわば人間側の都合だと受け止めている。治療すれば回復するわけで、安楽死させるような病気ではない。もっと対策はできなかったのかと、非常に驚いた。免疫力が落ちてくると罹る病気だと思うので、どうしてそんなに繰り返し出ていたのか、ということも気になる。ただ、治療も受けさせず、本当に残酷な状態で放置している業者もいるし、園の判断そのものを非難するつもりはない。逆に言えば、そもそも動物が死んだことも公表しないことが多いので、このように安楽死させた事実を公表したことはすごく画期的だったと思う」と複雑な心境を明かす。
その上で「そもそも日本の動物園の飼育環境はコンクリートだったり、予算もない中だったりと、世界的に見ても問題があると感じているし、うさぎやモルモットを使ったふれあい自体、すごくストレスのかかることなので、やめて欲しいと思っている」と訴えた。
ドワンゴ社長で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「確かに動物園というのは、ある種“見世物的”なものだが、一方で飼育員の方々は誰よりも深い愛情をもって飼育・管理されていることと思う。そこは園の方々の判断を尊重するしかないのではないか」、保護猫を飼っているというパックンも「動物好きとしては心が痛む話。それでも動物園というのは“人間の都合”で動物を狭いところに留置している施設ではある。そこで感染症が発生した場合、判断はすごく難しいと思う。ただ、安楽死させたことを公表したことも含め日本の動物園は倫理的・道徳的だと思うし、尊敬できると思っている。簡単に批判するのは難しい」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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