実況をやるつもりが、される側になった。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」の15チーム目を決めるエントリートーナメントの模様が4月3日に放送され、関東Bブロックは藤森哲也五段(33)が優勝した。ドラフト会議では、多くの棋士が指名される様子を実況する立場だったが、出場枠を自力で獲得。今度は本職である将棋で魅せる。
ブロック優勝、15チーム目に入ることが決まった後の感想は「実況やるつもりだったんですけどね」だった。藤森五段といえば、放送対局での解説がスポーツ実況さながらという特徴があり、将棋界にはないワードを用いることから「藤森語録」とも呼ばれてきた。ドラフト会議では、ともに実況していた戸辺誠七段(34)が指名を受ける様子を目の当たりすると、直後には大会を実況で盛り上げると宣言していた。それでも本職は戦う棋士。指名から漏れた棋士で戦うエントリートーナメントで、積極的な「藤森将棋」をフルに発揮した。
決勝は、塚田泰明九段(56)とまさかの師弟対決に。それでもトーナメント1回戦からずっと用いてきた穴熊で戦闘態勢を整えた後は、勢いよく攻めまくった。結果は102手で快勝。実況で見せる笑顔とはまた違う、晴れ晴れとした表情で「まさか自分がチームに入っちゃうとは。気楽にやったところがよかったんじゃないかな」と、対局を振り返った。
15チーム目を組むのは早指し巧者のベテラン・小林裕士七段(44)と、期待の若手・梶浦宏孝六段(25)。バラエティに富んだ3人組が出来上がった。実力者がぞろぞろといる他の14チームは強大だが、ダークホースとして切り崩すことができれば、藤森語録は作戦会議室でも響き渡る。
◆第4回ABEMAトーナメント 前回までは「AbemaTVトーナメント」として開催。第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦に。ドラフト会議は14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。ルールは持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チーム同士の対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)