先月のANN世論調査によれば、「さらに延期した方がいい」が29%、「中止した方がいい」が38%と、予定通りの開催に反対の立場を取る人が67%に達している東京オリンピック・パラリンピック。新型コロナウイルスの感染拡大を懸念し、聖火リレーの中止や縮小を検討する自治体も相次ぎ、ネット上には不安や不満の声も噴出している。
そんな“空気”を一変させたようにも見えるのが、闘病生活を乗り越えた競泳の池江璃花子選手の活躍だ。今週、見事に代表に選出されるや、政界やメディアも含め“大盛り上がり”の状態になっている。
スポーツライターの小林信也氏は「自分の立場としては、あくまでもオリンピックやスポーツが何のために存在するのか、そして、どうすれば国民が安心できる状態で競技が実施できるのか、ということを考えたい。しかしそれが議論の中心にならず、それぞれがオリンピック、あるいはスポーツを自分の主張に利用している気がする」と苦言を呈する。
「もちろん、開催にはお金が必要だ。しかし、そのためにオリンピック自体が肥大化している。そういうことも議論されるべきだと思う。実際、簡素化は行われていて、これまではIOCの人たちに超一流ホテルの一番高い部屋や、黒塗りの専用車を用意するのが当たり前だったが、組織委員会は折衝の結果、そうした待遇を改めることを承服させた。こういうすごい改革が進んだ状態で開催すれば、次の大会の前例にもなる。
あるいはボランティアや聖火ランナーの辞退が取り上げられているが、海外からの観客が来なくなるということは、通訳やガイドの人が要らなくなってしまう。一方で、コロナ対策をして開催したテニスの全豪オープンでは、消毒のための部隊がいた。オリンピックでも、感染対策のためのボランティアが必要になるだろうし、それなら協力してもいいという人もいるかもしれない。
こうしたことはいずれも公表されている話だが、皆さんがあまり興味を持たず、テレビ的に“これが受けるんじゃないか”という方に行き過ぎてしまっている。オリンピックによる経済効果も大事だが、ロサンゼルス大会以来の“儲かる”ということよりも、心や社会のつながりの効果を重視する方がいいと思う」。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「経済を回すこと、アスリートのことを思えば開催すべきだと思う。ただ、黒字になるかどうかといった話は別で、無観客も含め、感染防止はちゃんとする必要がある。開幕後も静かなオリンピックだってあってもいいのではないか。そして、森前会長の話などに皆の目がいって、現場で働くエッセンシャルワーカーなどの方たちの問題には注目が集まっていないが、オリンピックを批判するということは、コロナ対策を支えている膨大な人たちの努力を水の泡にしてしまう可能性もあるということも受け止めなければならないと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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