「今を生き抜いて」ナダル、いじめ経験カミングアウトの理由
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 コロナ禍で迎える二度目の春。学生にとって新学期は、クラス替えなどで環境が変わり、不安やストレスが高まりやすい時期だ。中には友達をうまく作れなかったり、ふとしたきっかけが「いじめ」につながったり、苦しい時期を過ごす子供もいる。

 2019年度に全国の小中高校などで認知された「いじめ」は61万2496件と過去最多を更新した(文科省去年発表)。年々深刻化する「いじめ」の問題。自殺する子供が後を絶たない中、お笑いコンビ・コロコロチキチキペッパーズナダルさんは「今を生き抜いて」といじめに悩む人にメッセージを送る。

■ 中学入学後、いじめの標的に「靴がなくなった」「黒板は僕の悪口だらけ」

「今を生き抜いて」ナダル、いじめ経験カミングアウトの理由
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 過去にいじめに遭っていたことを公表しているナダルさん。去年、公式YouTubeでいじめを受けた経験をリアルに語り、話題を集めた。

【映像】ナダル「昼休みが嬉しかった」コロチキ公式YouTubeより(2分ごろ~)

あの頃の対処法って、分からないですよね。どうやったら解決に向かうのか」(以下、ナダル)

 2012年に相方の西野創人さんとコンビを結成すると、2015年には「キングオブコント2015」で優勝。独特なキャラクターと声の良さを生かし、「やっべぇぞ!」「イっちゃってる!」など、持ち前のギャグを武器に芸人として活躍している。

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 順調に人気芸人としての階段を上るナダルさんだが、中学時代には陰湿な「いじめ」を経験していた。きっかけは、テスト期間中の“ちょっとした一言”だった。

「(先生が)テスト始めるよって言ったときに『ちょっと待って』と言った女子が一人いたんです。『全然覚えられていないわどうしよう』と。みんな『えっ』となって、先生も『何言ってんのさっさと(教室に)入り』と言って」

 しかし、その女子は「昨日部活が忙しくて全然寝られなかった。勉強できなかった」と話し、先生も5分だけ待ったという。

「5分経って先生が『もう早く入りなさい』と言うと、(その女子は)『あと1分でいいわ』と面白がっているようだった。『本当にええかげんにせなあかんで』と思って、僕は『おい、お前な。早く(教室に)入れよ。おまえな、ずっとそんなあかんで。おもんないから』と言ったんです」

 少しきつい言い方になってしまったとは言え「当たり前の注意をしたつもりだった」というナダルさん。

「僕も言い方が悪かった。そうしたら、その女子が『パーン!』と床に教科書を投げてきて、めっちゃ怖かった。もうピストル音みたいだった。そのまま僕のほうにスタスタと歩いてきて『今入ろうと思っとたんじゃ』と言われて、ずっと目を見られたんです」

 この1回の注意がきっかけで、その後、ナダルさんはいじめの標的になってしまう。

「廊下を歩くときは、(通行する生徒が)道をバーッと開けて『なんか歩いてる』とか言われました。『見たら自分の目が腐る』とか言われたり、自分の靴がなくなったり。放課後は、黒板が僕の悪口で埋め尽くされていました」

 日に日にエスカレートしていくナダルさんへのいじめ。どのようにすれば状況を変えられるのか、ナダルさん自身も苦しんでいた。

「百人一首大会で『すごいぞ』となったら空気を変えられるんじゃないかと思って。1年の冬休み明けに百人一首大会があって、めっちゃ練習して覚えた。(大会当日は)『すごく強い、優勝する』って言われた」

 すると、大会の途中、かるたを取ったナダルさんの手に一人の女子が遅れて触れた。

「『いやああああ』みたいな。体育館に響き渡ったんですよ。ほんま、びっくりするくらい」

 女子の叫び声を聞いて先生も3~4人集まってきたという。

「僕がなんかしたっぽい空気になって、僕が『何もしてません、勘弁してください』と言っても、女の子が『キモい、無理、嫌、続けられません』と言うんですよ。僕の手を触った女の子が『ひっひ』って(泣いていて)、僕をいじめていた中心人物の女子がその子の横で『泣かんとき』と言って、ずっと僕を睨んでいた。『あとで石鹸で手洗っときや』と言っているのを見て、僕の中で何かが切れてしまった」

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 何をしても悪い方向に進み、解決策が全く見えなかったというナダルさん。結局、中学卒業まで状況は変わらなかった。しかし、その後、ナダルさんは思わぬところで、苦しめられたいじめの中心人物と再会を果たす。

「村の祭りのビンゴかな。何か当たった後に『よっしゃー!』って声が出て。(景品の交換に行って)『おめでとうございます!』と声をかけてくれたのが『石鹸で手を洗っときや』と言った女子だった。『うわー』となって、一緒にいた相方の西野から『なんか様子が変やけど』って言われた。顔も引きつっていたみたいだった。(いじめの中心人物からは)『おめでとうなー!』ってめっちゃ言われた」

 いじめの中心人物と祭りで再会――。ナダルさんは「どんな感じで俺(がいじめを)受けていたか言ったろっかな」と思ったという。

「今元気にやってますけど、この子は中学校時代に僕をめちゃくちゃいじめてた女の子です」

 盛り上がっていた祭りもシーンと静かになった。

「急に言われたその子も顔が引きつってしまって。『やってへんよ』って叩かれて、『いやいや、やってましたけど』みたいな」

■ ナダル「そこが全てと思わないで」 学校生活の狭いコミュニティ

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 いじめをされた側は、はっきりと覚えている心の傷。去年、ナダルさんはコンビのYouTubeチャンネルでいじめの経験を告白し、自身の経験を包み隠さずオープンにしている。人を笑顔にする芸人のイメージとは正反対のつらい経験をあえて公表するのはなぜなのか。

「どっちかっていうと、僕もできればこんな話はあんまりしたくない。マジな話なってしまうから。でも、いじめられてつらい思いしている子はいる。今でこそ大人になって吹っ切れたが、僕もあのときはつらかった」

 入学した学校の人間関係に縛られ、生きづらさを抱える学生にナダルさんはこうメッセージを送る。

「狭いコミュニティで経験値もなくて、ついつい視野が狭くなって、そこが全てと思い込んでしまう世代だと思う。その子たちの救いとして、僕の経験が、ちょっとでも視野を広く持ってもらうきっかけになれれば。参考になればくらいの感じですね。ホンマに大変だと思うんだけど、将来には絶対救いがある。自分だけで抱え込まないで。なんとか、今を生き抜いて、将来につなげていってほしい。何もせずに生きてきたやつより、人の気持ちがわかって、人に寄り添える人になれると思う。つらい経験ほど財産になる。失敗も次に成功、より成長するための糧にできる。僕ら芸人もですけど、スベればスベるほど『次どうしよう』って考えられるんですよ」

 最後に「いじめられていた当時の自分にアドバイスするとしたら?」と質問すると、ナダルさんは「しんどくてこれからどうしようって思っているでしょうね」と笑う。

「でも、芸人のすごい先輩から『面白いな』って言ってもらえるし、最初はめちゃめちゃ嫌われていたけど、面白さで跳ね返すくらいになっているから。お前は吉本の宝として活躍しているからなって言いたい(笑)」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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