プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Aリーグの第3試合、チーム三浦とチーム稲葉の対戦が4月24日に放送され、チーム稲葉が勝利、リーグ2位に入り本戦トーナメント出場を決めた。9本勝負の第5局までに1勝4敗と追い詰められたが、ここから奇跡の4連勝。加古川親善大使の3人が、最後まで諦めない棋士の根性で加古川を、広く世に知らしめた。
「棋士のまち加古川」。この看板を背負った三人衆の粘り強さは尋常ではなかった。第5局までにチームリーダー稲葉陽八段(32)の連敗もあり1勝4敗。両チームともこのカードに敗れた時点で予選敗退が決まる中、崖っぷちに追い込まれていた。しかし3人の思いを集めたチーム戦で、あっさり投了するわけにはいかない。稲葉八段がカド番の第6局で、チーム三浦で好調だった高野智史五段(27)に126手で勝利。「開き直ってどんどん行くしかない。次につなげられた」と笑みを見せると、チームメイトの船江恒平六段(33)も「さすが」と喜び、久保利明九段(45)は「ドラマに向けて…」とニヤリとした。
1つの勝利がここまで流れを変えるものか。第7局では、残り2局を残していた船江六段ではなく、振り飛車のトップ棋士・久保九段が登場。今大会は振り飛車に美濃囲いで通していたが、ここでフィッシャールールではよく用いられる穴熊を採用。本田奎五段(23)に押し込まれ、一時は持ち時間でも4分以上の差をつけられながら、驚異的な粘りで逆転勝利。リーダー稲葉八段も「この絶体絶命を這い上がってきたのは、だいぶ勢いついたな」と、言葉にも力がこもった。
3勝4敗まで巻き返し、ここで残り2局を託されたのが船江六段。「これで負けたら本当に男じゃないです。これだけ流れを作ってもらって。当たって砕けずに帰ってきます!」と自身を鼓舞すると、相手のリーダー三浦弘行九段(47)を横歩取りの研究手で撃破。ついに4勝4敗でフルセットに持ち込むと、高野五段との最終局にも128手で勝利。最終盤には、大量の連続王手をかけられての競り勝ちに、作戦会議室で見ていた稲葉八段も思わず「いやー!」とのけぞるほどだった。
この大逆転劇には、視聴者も今大会最大の盛り上がりに。ABEMAのコメント欄には「まさかの4連勝で逆転」「漢を見た」「めっちゃ面白かった。見応えあった」「全加古川が泣いた!!!」と、目で追うのが大変なほどの量の書き込みが殺到した。
この団体戦、棋力だけで戦い抜けるものではない。3人のチームワーク、そして仲間がいるからこそかかる重圧をどれだけ力に変えられるかが、勝敗を大きく左右する。相手のチーム三浦も昨年と同じ構成で、チームワークはばっちりだった。ただ「棋士のまち」を背負って戦った3人は、それにも増して強い絆と意志で、ドラマチックな逆転勝利を演じてみせた。ぎりぎりからもぎ取った本戦トーナメント。加古川の棋士たちの戦いは、これからもにぎやかに、そして熱く続く。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
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