昨年4月、小学校における英語の授業が必修化した。大学入試も昨年までは筆記が200点、リスニングが50点だったが、今年からリーディング、リスニングともに100点に変更。リスニングが強化された一方、スピーキングの導入は見送られた。
東進ハイスクールの英語講師の安河内哲也氏は今の英語教育をどう見ているのだろうか。ニュース番組『ABEMA Prime』では、人気カリスマ英語講師と英語教育について考えた。
【映像】小学3~4年で34単位、5~6年生で年間70単位も…英語教育の変化まとめ(2分ごろ~)
小学校で始まった必修英語授業や大学入試の変化に、安河内氏は「日本はまだまだ遅い」と述べる。
「世界の英語教育はもっと先に進んでいて、遅い速度で日本が追いかけている。大学入試でリスニングの配点は大きくなったが、結局マークシートだ。マークシートの試験を一生懸命勉強して、どれくらいの人が英語を話せるようになったか。実際にコミュニケーションができるような英語を学校で本当に学んできたのか。いい方向に向かっているのは間違いないが、日本はまだまだ遅い」
英語の必要性について、ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「英語が読めないと情報量が足りない」と話す。
「たとえば新型コロナの話でいうと、去年から治療薬やワクチンなど、英語が読める人しか正しい情報が分からなくて、情報量が足りないのが現実だ。『自分は頭が悪い』と自覚している人は、英語ぐらい読めるようにしておいた方がまだマシだと思う」
日本では中学・高校でそれぞれ3年間、大学でも英語を学べば10年間英語を勉強していることになる。ところがほとんどの人が使いこなせていない。一体なぜだろうか。
カルフォルニア州出身の文化通訳者でシンガーソングライターのネルソン・バビンコイ氏は「モチベーションの問題だ」と指摘する。
「なぜ英語を勉強するのかと言われて、点数取るためと言われたら、モチベーションが下がる。英語はツールだ。英語を使って何をするのか。英語ではなく、別の外国語でもいい。たとえば、韓国語を勉強すると韓国のドラマがいち早く観られる。そういうところで何かモチベーションとなるものを見つけないといけない」
ひろゆき氏も「英語のモチベーションがないのは至極当然だ」とキッパリ。
「どのような大人になりたいか、それに合わせて学習させたらいいと思うが、今の日本は英語が話せない先生もいる。日本の英語教師として話せるだけで、アメリカに行って起業できるかと言ったら、それに必要な単語がわからない人ばかりだ。僕はそもそも教えている人が無能だと思う」
ひろゆき氏の意見に安河内氏は「先生も千差万別で、目標が違う」とコメント。「日本には、入試に合格させるために教えている先生、英会話を教えている先生など、さまざまな種類の英語の先生がいる」とした上で、「これからは“コミュニケーションの英語”が必要だ」と答える。
「簡単な英語だったら、今はAIが全部スマートフォンで翻訳してくれる。文章だってAIが作る時代だ。テクノロジーがあるわけだから、AIをどんどん使っていけばいい。ただ、人間関係を構築するときに、外国人と一緒にご飯を食べたり、パーティーに出たり、そういうときに、話す英語、聞く英語が大事だ。いろいろな国の人がいる会議を、途中で止めたり、切り込んだり、笑わせたり、挑発したり、そういうことができる英語をもっと学校でやらないといけないと思う」
ひろゆき氏は「価値あるものを提供している人は、英語が話せなくても人が寄ってくる」といい、英語を一切話せなかった知り合いの海外担当役員の例を紹介。
「その人はアメリカ人がガンガン寄ってきて、日本の通訳を入れて話しかける。飲みに行こうとなると、アメリカ人が連れてきた通訳とバーで、日本語で話す。それで仕事は進む。価値あるものを提供していれば、言葉のコミュニケーションがなくても友達になれる」
これを聞いた慶應義塾大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「最初にひろゆきさんが『頭が悪いならせめて英語ぐらい勉強しよう』と言ったことに、僕は賛同だ。めちゃめちゃ優秀な人は他の分野で頑張れるから放っておいて、何もできない人は『英語ぐらいやっておいた方がいいよね』と。それぐらいがいいと思う」と話す。
AIの台頭でスマートフォンなどの電子機器が通訳してくれる時代になったが、それでも英語を勉強する必要性はどこにあるのだろうか。
安河内氏は「AIを使ってコミュニケーションをするにしても、結局ある程度の英語がわかっていないと、翻訳した文章に対する責任は負えない」と指摘。その上で「AI翻訳を使うことは大賛成だが、ある程度の英語がわかっていないと、AI翻訳も使えないだろう」と述べる。
安河内氏の説明に、ひろゆき氏も「AIがあるから『英語を勉強しなくていい』は別の話だ」と同意。「他の国の人がどのような考え方をするのか、別の言語を学ぶことで、思想も学べる。だから『AIがあるから勉強しなくていい』ではなく、英語は勉強として必要な気がする。小学生ぐらいからGoogle翻訳の使い方を教えて、そのあと細かいところをちょっとずつ覚えていく感じがいい」と語った。
スタジオで唯一の外国人出演者であるバビンコイ氏も「意見の食い違いは、伝えようとしていることが伝わらないだけ。それが勘違いされて、食い違って、戦争が起こる。お互いの文化や言葉がわかると、伝えたいことがわかる。それが平和にもつながるはずだ」といい、議論をまとめると“勉強としての英語は必要”という結果に。
安河内氏は自身は“AI賛成派”であるが「AIが話す日本語と、外国人が話す日本語は(受け取り方が)違う」と説明する。
「スタジオで日本語を話しているのが(AIではなく)バビンコイさんだから、私たちは親近感を持つ。言語を共有することは、やはり人間関係の構築に重要だと思う。だって、同じ言語を共有する人と飲みに行きたいじゃないですか。相手と一緒にワインを飲みたい。そういうことだと思う」
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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