シエラレオネは、1961年にイギリスから独立した、西アフリカにある共和制の国家だ。11年間続いた内戦の影響で、2016年まで平均寿命は51.3歳と「世界で最も寿命が短い国」だった。
【映像】親に“持参金”をあげるために…14歳で母親になった女性（4分ごろ～）
シエラレオネでは、今でも都心部を含め水の供給は週に3日のみ。国民の7割が1日200円以下で生活する「絶対的貧困」に置かれている。十分な栄養が手に入らず、伝染病などの影響で5歳を迎えられずに亡くなる子どもも多い。
日本からはシエラレオネまで1万4262kmの距離があり、飛行機でおよそ30時間かかる。この遠い国を懸命に支援する日本人の下里夢美さんは、現在1歳と2歳の男の子を育てる、29歳の女性だ。
下里さんが代表理事を務める「NPO法人アラジ」は、2017年に起業、法人化して以来、日本で寄付を募り、貧困家庭への教育サポートなどを行ってきた。いったいなぜ、下里さんはシエラレオネを支援しているのか。
きっかけは、下里さんが高校時代に観たテレビ番組だった。
「テレビでたまたまシエラレオネの男の子、アラジくんという男の子が紹介されていた。アラジくんという男の子は反政府軍に両親を目の前で殺されている。孤児になった後、その後学校に通えなくなってしまった」（以下、下里さん）
当時、初等教育が有償だったシエラレオネ。孤児の少年が学校に通えるはずもなく、アラジくんは生きるためにダイヤモンドの鉱山で1日中鉄くずを探し、児童労働をしていた。番組のディレクターが「何か欲しいものはあるか」と彼にした質問が、下里さんの人生を変えた。
「（アラジくんは）はだしで物乞いをして、食べるものがないという状況だったのに『勉強がしたい』と言っていた。8歳の男の子が、何より勉強をすればその後の未来が開けていくということを主張していたのが、すごく印象的だった」
突き動かされた17歳の下里さんは、国際協力の学べる大学へ進学。そこでシエラレオネの貧困問題解決のみに取り組む民間のNPOなどはなく、青年海外協力隊の派遣もないことを知り、下里さん自身で「NPO法人アラジ」を立ち上げた。
「勉強をすれば、その後の未来が開けていく」
この言葉を胸に活動する下里さんは、「10代で妊娠した女の子を復学させる」ためのクラウドファンディングを開始。
「シエラレオネでは中学を卒業できる割合が約6割、高校だと約4割。そういった子供が中等教育、高等教育を卒業できない理由に若年妊娠が考えられます」
実際にシエラレオネでは15歳から18歳の女子の3割にあたる、およそ30万人が10代で出産を経験。理由は「児童婚」と「性教育の欠如」だ。結婚すると女性の家族は夫の家から持参金をもらえるため、そのお金を目当てに親が決めた相手と12～13歳で結婚することも珍しくない。一方で、セックスをすれば子どもができること自体を知らないまま性行為をし、結果として妊娠してしまうケースもあるという。
2020年までシエラレオネでは「妊娠をしてしまった学生が学校に復学してはならない」という法律があった。女の子のみを罰するようなこの法律は、国際的に大きな批判を浴び、去年ようやく撤廃された。しかし、下里さんによると、その影響は今でも残っているという。
「女の子は、赤ちゃんを抱えながら赤ちゃんの分も稼がないといけない。法律が改正されたからといって、学校に戻ることは精神的にも経済的にもすごくハードルが高いというのが現状です」
今回のクラウドファンディングでは、赤ちゃんの父親が経済的な責任を果たしておらず、養育費を捻出するために、子育てをしながら農業や物売りなどの労働をせざるを得ない10代のシングルマザーの女の子に、教育費と養育費をセットにした奨学金を提供するという。
「ちょうど3月から復学のプログラムが始まった。今7人の女の子が小学校と中学校に復学登録が完了している。きちんと中等教育、高等教育を完了してもらって、幅広い未来を描いてほしい」
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