3枚目の中が河に並んだ瞬間、その口元はわずかに歪んでいるように見えた。プロ麻雀リーグ「朝日新聞Mリーグ2020」ファイナルシリーズ、5月13日の第1試合。渋谷ABEMAS・白鳥翔(連盟)が役満・大三元を取り逃した場面に、ファンや解説者から同情の声が寄せられる一幕があった。
13日の第1試合開始直後の東1局、親の白鳥の配牌は白と発に加えてドラの7索も対子。序盤の発、白のポンで他家に重圧を与えて手の進行を束縛し、悠々と満貫のイーシャンテンとしたところまでは順調そのものだった。
さらに白鳥は1枚目の中を引き入れ、小三元はもちろん役満・大三元まで見える大チャンス手に。当然のように中を手の内にとどめた白鳥だったが、中盤に9索を引いてドラ含みのカンチャンターツができたことで選択を迫られる。目下首位を走る渋谷ABEMASにとっては、成就する確率の低い役満よりも満貫の可能性を少しでも高めたい局面。すでに他家は手を崩しているのが濃厚という読みも働き、白鳥は冷静に受け入れ枚数が増える中切りとした。
次巡、白鳥が引いた牌はまさかの中。この裏目に解説の渋川難波(協会)は「うーっ!」と悶絶しながらも、「でもこれが正着だと思います」と選択そのものは決して間違っていなかったと語った。その後、白鳥は狙い通り白・発・ドラ2・赤のテンパイ。跳満の可能性もあるドラの7索と五万のシャンポン待ちに構えた。
しかし直後のツモ番で、白鳥はなんと3枚目の中を引いてしまう。淡々とツモ切りながらも、残酷な牌のいたずらに翻弄されて苦渋の表情を浮かべる白鳥。解説の渋川も思わず「おいいーっ!」と打ち手の心理を代弁するかのように絶叫し、視聴者からも「激痛」「泣けてくる」「まじかよおおお」「これはきつい」「かわいそう」といったコメントが殺到した。
結果的に同局はEX風林火山・滝沢和典(連盟)が間隙を縫うアガリを決め、白鳥のテンパイは実らず。もちろん山に中が残っていることなど本人は知る由もなく、渋川が「何度も言うように白鳥選手はこれが正着です。役満は必要ないので」と強調したように、渋谷ABEMASのチーム状況からすれば妥当な判断だったことは間違いない。それでも責任を感じたのか、白鳥は試合後のインタビューで「あんなところから大三元のツモアガリになるんだな、と……」「アガリの形があったのが最悪だった」とがっくり。手痛いラスを引かされたこともあり、その表情は最後まで冴えなかった。
※連盟=日本プロ麻雀連盟、最高位戦=最高位戦日本プロ麻雀協会、協会=日本プロ麻雀協会
◆Mリーグ 2018年に発足。2019シーズンから全8チームに。各チーム3人ないし4人、男女混成で構成され、レギュラーシーズンは各チーム90試合。上位6チームがセミファイナルシリーズ(各16試合)、さらに上位4位がファイナルシリーズ(12試合)に進出し、優勝を争う。
(ABEMA/麻雀チャンネルより)
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