「余剰ワクチン」平等性を保つには? “デジタル先進国”デンマークから学ぶ解決策
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(5枚)

 システム開発会社「オービック」の会長夫妻が、千葉県鴨川市の病院で医療従事者用の新型コロナのワクチンを接種していたことが分かった。

【映像】「余剰ワクチン」平等性を保つには?

 亀田総合病院はオービックの産業医で、オービックの会長夫妻は、4月20日と5月12日に医療従事者用のワクチンを接種。オービックによると、病院の理事長から「会長も高齢だし、社内でも感染者が出ているのでどうですか」と提案があったという。病院は「職員のワクチン投与終了の目途がたった段階で申し出た」とコメントしている。

 自治体トップや権力者による“抜け駆け接種”が物議を醸している日本。不公平を指摘する声も上がる中、北欧・デンマークでは余剰ワクチンの解決策が功を奏し、コロナ禍からの出口が見え始めているという。

 ニュース番組「ABEMAヒルズ」では、デンマーク在住の元新聞記者・井上陽子さんに現地の状況を聞いた。

「余剰ワクチン」平等性を保つには? “デジタル先進国”デンマークから学ぶ解決策
拡大する

 「デンマークの女性首相であるメッテ・フレデリクセン氏は43歳ですが、彼女はかなり早い時期に自分も閣僚も『自分たちの年齢層の順番が回ってきたときに打つ』と表明していました。それによって、国民は『首相であっても特別扱いはないんだな』という意識、理解が浸透した。ワクチン接種を自分の順番が来るまで焦らずに待つ。その雰囲気ができたことで、スムーズに接種が進んだ」(以下、井上陽子さん)

 また、井上さんは日本で議論になっているキャンセルなどによる“余剰ワクチン”について、デンマークでは無駄にしないための『余剰ワクチン申込システム』が導入されていると明かす。

「余剰ワクチン」平等性を保つには? “デジタル先進国”デンマークから学ぶ解決策
拡大する

 3週間ほど前にデンマークで始まったこの“余剰ワクチン申込システム”。井上さんは「『50歳以下は希望しても(電話がかかってくる)確率は低い』とただし書きがあったが、ダメ元で毎朝登録している」という。

 「余剰ワクチンの問題はデンマークでも問題視されていて、無駄にはしたくない。デンマークでは、デジタル先進国の強みの情報インフラをうまく使っていて、まず自分が住んでいる場所に応じて、管轄する医療センターのような施設がある。そこのWebサイトで、その日、余剰ワクチンが発生した場合に自分が受けたいと思ったら、リンクをクリックする。そこで名前、年齢、住所、電話番号を登録して、最後に自分の住所から30分以内に行けるワクチンセンターの場所を登録しておく。そうすると余剰ワクチンが発生した際に、ワクチンセンターの側からリストを見て年齢の高い順番に電話をしていく」

 井上さんによると“余剰ワクチン申込システム”の登録は当日午後1時半締め切りで、電話が来る時間帯は午後5~8時くらいだという。接種可能であれば、連絡から30分以内に接種センターに行って、接種する流れになっている。このような対策を講じれば「一定の平等性が保たれるのではないか」と井上さんは話す。今の日本の現状を井上さんはどのように見ているのだろうか。

 「すごく難しい状況(サイクル)に見える。余剰ワクチンが発生しても『近くにいる人に打ったら不平等だ』といった批判が起きる。かといって、捨てて無駄にしても批判になる。デンマークは予めリスト化した上で、国民が納得する平等性を保ちながら、ワクチンも無駄にしない。デジタル先進国のインフラを使って、早く上手く作ったと感じる」

「余剰ワクチン」平等性を保つには? “デジタル先進国”デンマークから学ぶ解決策
拡大する

 デンマークでは、早い段階からロックダウンによって感染者数を抑え込みに成功、大規模な検査体制を整備した。動物園の近くや倉庫など、あらゆる場所で簡易検査を受けられるとしている。

 「検査で陰性の人」と「ワクチン接種済みの人」によって、社会の通常化を早期に目指す構想を掲げたデンマーク政府。政府がツールとして導入したのが「コロナパス」と呼ばれるデジタル証明だ。自身の陰性やワクチン接種済みを示すツールであり、これによって店舗などの利用が可能になるという。

■ 日本のネットに慣れていない高齢者「どうやって救っていくのか」が課題に

「余剰ワクチン」平等性を保つには? “デジタル先進国”デンマークから学ぶ解決策
拡大する

 デンマークの“余剰ワクチン申込システム”について、日本初の個人向け大規模遺伝子検査・解析サービスを手がけるGenequest(ジーンクエスト)の代表取締役・高橋祥子さんは「とても素晴らしいシステムだ」と話す。

 「日本でもデンマークのようにオンラインで完結できるといいなと思う。新型コロナをきっかけに、日本が他の国から学ぶことは多い」(以下、高橋祥子さん)

 その上で「私の義理の母は70歳で、オンラインで予約ができない。そういった人は代わり誰かが予約する必要がある。そういったインターネットに慣れていない高齢者をどうやって救っていくのか。これが日本の課題だと思う。有事にいきなり対応することは難しいので(インターネットに慣れているデンマークの高齢者のように)平時から施策を行っていくことが大事だ。日本でもデジタル庁が動き出すが、このあたりを頑張ってほしい」

 迅速で混乱のないワクチン接種。日本がデンマークから学ぶべき仕組みは、多くありそうだ。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

“余剰ワクチン” 解決策は北欧にあり
“余剰ワクチン” 解決策は北欧にあり
【映像】ワクチン“先行接種”の問題は
【映像】ワクチン“先行接種”の問題は
この記事の画像一覧

■Pick Up
キー局全落ち!“下剋上“西澤由夏アナの「意外すぎる人生」
「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
「ABEMA NEWSチャンネル」知られざる番組制作の舞台裏

この記事の写真をみる(5枚)