K−1随一の激闘派がみせたフルタイム、真っ向勝負の殴り合いは試合終盤、セコンドから「(倒れずに)帰って来いよ!」と叫び声にも似た掛け声がかかる壮絶な展開に。K-1レジェントの魔裟斗が「壊れる…」「このままだと選手生命が短くなる」と警鐘を鳴らす一幕もあった。
5月30日に横浜武道館で開催された「K-1 WORLD GP 2021 JAPAN ~K-1バンタム級日本最強決定トーナメント~」で行われたスーパーファイト。島野浩太朗(菅原道場)と佐野天馬(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)の一戦は壮絶な打ち合いに発展。3ラウンド、互い足を止めて真正面から殴り合う衝撃の展開に、解説を務めた魔裟斗が「見ているほうは面白いが、選手生命が短くなる」と警鐘を鳴らした。
佐野にとっては2014年のK-1甲子園決勝以来、実に6年半振りとなるK-1の大舞台。K−1グループ黎明期から出場し、Krushで30戦近い経験を積むもK-1の試合に出場するのは今回が初めてとなる。対戦する相手は、K−1随一といえる“激闘派”ファイターの島野。折れない心で常に真っ向勝負に徹する様子から“名勝負”製造機と評価も高い。
試合は序盤からローや至近距離でのパンチの応酬となる。両者高い技術を見せ、譲らないベテランらしい攻防だ。ABEMAでゲスト解説を務めた魔裟斗は佐野の動きの良さとイン、アウトと蹴り分けるローキックを評価した。1ラウンド後半にかけてもボディ、顔面と静かに削り合う戦いが続く。
2ラウンド、熱を帯びた戦いはロー、ミドルと執拗な蹴り合戦からスタート。島野のストレートの連打に対し、佐野はボディ、左フック、前蹴り、右ストレートと攻撃が多彩だ。島野も強打を振るうが、佐野の攻撃を真正面から受ける場面が目立ち始める。しかし、そこは島野。打撃を貰っても必ず返す不屈のスタイルに視聴者からも「島野カウンター貰いすぎ」「打たれ強いけどなぁ…」「ダメージが蓄積する」と心配の声が聞かれ始める。すると魔裟斗も「島野は打つのはいいけど、貰うんですよね…いつも見ていて勿体ないなと思うんです」と、”肉を切らせて骨を断つ”真っ向勝負すぎるスタイルに言及した。
そんな声もどこ吹く風。3ラウンドに入ると、両者の激闘はエスカレートする。いきなり足を止めてボディ、顔面フックの応酬。魔裟斗が「島野は打たれても、打たれても、打つという…」と話した次の瞬間、佐野の左フックをアゴに被弾した島野は大の字にダウン。
ダメージの残る様子の島野だが、ここは立ち上がる。すると、打ち合いはさらに過激な展開に。直進しながらノーガードで左右を強振する島野に佐野もスイッチが入ったか、パンチを貰いながらも強いフックで応戦。向こう見ずな両者の打撃戦に視聴者からは「顔面サンドバッグ」「狂気だ」など、悲鳴のようなコメントが。
ラウンド開始から2分近く殴り続けた両者。ここで島野が泥臭く前に出て盛り返し、佐野をジリッと後退させる。連打に顔を歪める佐野だが、初のK−1の舞台での気迫は並々ならぬものだ。殴られながらも不敵な笑みを見せ、パンチを連打していく。会場のボルテージが最高潮に達する中、魔裟斗は「凄い打ち合いですけどね…これは選手生命が短くなるだろうな」と冷静に本音をのぞかせる。3分間、全力で殴り合う激闘はもはや危険水域に達しつつある。
残り34秒、島野のマウスピースが飛び試合は中断。コーナーに戻った島野は鼻血を流し胸元にはおびただしい血しぶきが。それでも島野、佐野の目はギラギラと闘争心で溢れている。残り30秒、殴り合いから、佐野が力を振り絞り左右ハイキック~右ストレートで再びダウンを奪ってここで終了のゴング。ラウンド終盤の攻防はセコンド陣から「(倒れずに)帰って来いよ!」と叫び声が上がり、魔裟斗も「壊れる、壊れる」と漏らすのがやっとの激しさだった。
試合は2つのダウンを奪った佐野が判定でK-1初勝利。死闘を目の前にした魔裟斗はやや呆れた様子で「見ているほうは面白い試合ですけど、島野選手が壊れてしまうんじゃないかと、心配でしょうがない。毎回こういう試合を見せてますから…」と、毎回殴り合う激闘ぶりを案じていた。