解説席が「眼が追いつかない、一瞬の出来事すぎて…」と絶句したカウンター決着。アゴを捉えたはずの右を打ち消すように飛んできた強烈な左フックをまともに被弾し、エビ反り状態で“大の字”失神KOを喫する衝撃の結末に場内がどよめいた。
5月30日に後楽園ホールで開催された「Krush.125」。明戸仁志(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)と加藤港(WSRフェアテックス三ノ輪)の一戦は衝撃のKO決着。加藤がカウンターで放った左フックに明戸がエビ反り状態で崩れ落ちると、視聴者から「ヤバい倒れ方」「大丈夫か?」など、驚きと心配の声が相次いだ。
35歳(明戸)と33歳(加藤)、ベテラン同士の対決となった一戦。とくに加藤は4年半ぶりと久々のリングだ。それだけでなく、明戸の計量オーバーのため減点1、明戸が10オンスに対して加藤が8オンスのグローブ着用というグローブハンデ。さらに明戸がファイトマネーの減額も受け入れるなど、さまざまな条件変更を経ての試合となった。
1ラウンド、重いパンチが魅力の加藤が、左右のフックやジャブ、間を取りながら伸びるパンチと、4年のブランクを一切感じさせない動きを見せる。対する明戸もローキックやストレートをカウンターで返していくが、加藤が足を活かしたヒットアンドアウェイで優位に試合を進める。
2ラウンド、明戸がラウンド開始からじわりとプレッシャーをかけると鋭い右。加藤のフットワークにやや手を焼きつつも、ラウンド中盤にはコーナーに相手を押し込んで強引にパンチをまとめて盛り返す。対する加藤は左をコツコツと確実に当て、ヒザや下がりながらの蹴りなどで主導権は渡さない。
減点1のビハインドで試合に挑んだ明戸にとって、後がない最終3ラウンド。ゴングとともに勢いよく前に出て攻勢を仕掛けると、その勢いに加藤が思わずクリンチ。軽快にステップを踏んで攻める明戸、後退する加藤という展開は、劇的な幕切れを迎えた。
距離を縮め、ロープ側に相手を追い込んだ明戸が右ストレートを放つと、加藤がカウンターを合わせて左フックを一閃。完璧なタイミングで入ったカウンターを被弾した明戸は、ストンと垂直に崩れ落ちると、その反動で“ぐにゃり”とエビ反りするようにダウン。天を仰いで大の字になり、失神する衝撃的なダウンシーンに、この日ABEMAで解説を務めた大倉士門は「正直自分の眼が追いかけられなかった、一瞬の出来事すぎて…」と絶句した。
ダウン直後にドクターが駆けつけ、担架が用意された衝撃KOを受け、視聴者からも「すごいカウンターだった」「大丈夫か?」「ヤバい倒れ方だった」など驚きと心配の声が多数寄せられ、ネットは一時騒然となった。しかし、担架で運ばれた明戸は幸いにも大事に至ることはなかった。
奇しくもこの日、解説を務めた石川直生は7年前の自身の引退試合で、加藤にKO負けを喫している。石川は「やっぱり(加藤選手は)パンチがあります。明戸選手を1発でKOする場面はなかなかなかったですからね」と実感がこもったコメントを残した。
また試合後にマイクを握った加藤は「Krushファンの皆さん、ほとんど初めましてだと思うんですけど、ご無沙汰しております」と4年半ぶりにファンの前で挨拶を行うと「明戸選手、計量オーバーしちゃったんですけど…ペナルティも設けてるんで、何か言うのはナシでお願いします」と述べ、コンディションが整わない中でリングに立った明戸に対する敬意と配慮をうかがわせた。