異例のデビューだった。5月30日のK-1横浜武道館大会。初開催となるバンタム級日本トーナメントにエントリーした大村修輝は、これがプロデビュー戦。アマチュアでの実績と闘いぶりが評価され、大抜擢のトーナメント参戦となった。
所属はPOWER OF DREAM。武居由樹、江川優生といった強豪を輩出したジムで、大村は小学5年生の時から練習してきた。キャッチフレーズは“PODの秘密兵器”。まだ18歳ということもあり、実力は未知数。しかし1回戦の時点で、大村がただ者ではないことは観客全員に伝わったはずだ。
対戦したのは萩原秀斗。代打参戦で準備期間は短かったが、30戦のキャリアを持つ。
そんな相手に、大村は見事な試合運びで勝利してみせた。柔らかい動きでフェイントも使いながら、絶妙な距離感でカウンターを狙う。延長判定2-1の接戦ではあったが、プロデビュー戦の18歳には見えない闘いだった。
さらに準決勝では、Krushバンタム級チャンピオンの壬生狼一輝と対戦。ここで敗れた大村だが、延長にもつれこむ大健闘だった。1回戦では距離感を保つためか下がる場面も目立ったが(これはK-1ルールではかなり不利な要素だ)、壬生狼との延長戦では前に出ていた。課題をしっかりと修正していたのだ。
この結果、大村のプロ戦績は1日で1勝1敗。キャリア30戦の選手に勝ち、チャンピオンに敗れ、どちらも接戦だった。デビュー2戦で「K-1トーナメント・ベスト4」である。
年齢を考えても、相当な大器が登場したというべきだろう。試合を終えた本人は「けっこう納得のいく試合ができました」。自分の力がすべて出せたわけではないが「半分以上は出せたと思います」。
落ち着いたコメントぶりも印象に残った。破格のデビューを終え、これからあらためて一戦一戦、勝っていくことが求められる。しかしこの日の動きを見る限り、再びトップ戦線に入ってくるのもそう遠くなさそうだ。
文/橋本宗洋