『保育園落ちた日本死ね!!』から5年。東京都の小池知事も1日、都議会で「待機児童数は本年4月1日時点(速報値ベース)で1000人を切る見込みとなった」と成果を語るなど、国や地方自治体は“待機児童ゼロ”に向けて突き進んできた。
厚労省も今年度からの4年間で14万人分の受け皿を確保すべく始動しているが、一方で2025年の段階で“保育所が過剰になる”との試算を発表したことも話題となっている。コロナ禍によって予測以上に少子化が加速、多くの地域で経営難に直面する保育園が出現することが危惧されているというのだ。
保育園・幼稚園事情に詳しい大嶽広展・カタグルマ社長は、待機児童をめぐる現状について次のように説明する。
「国は“子育て安心プラン”として保育の受け皿確保を掲げ、昨年度末に待機児童を解消すると宣言していた。結果として待機児童が減少したこと自体は一定の評価ができると思うが、今も1万2000人強の待機児童がいるわけで、“待機児童ゼロ”という目標については未達で終わったというのが現状だ。その意味では、国が14万人分の受け皿を用意するという対策も短期的に見れば必要だろう。
一方で、実は全国7割以上の市町村では“待機児童ゼロ”を実現しているので、地方の方からすると、東京を中心とした一部地域だけの問題だろうという捉え方になっている。また、保育園には行政が介在する認可と、そうでない認可外の施設があるが、前者は定員割れを起こした施設の活用方法を考えておかないと、“なんであの時作ったのか”という話になってきてしまうし、後者も補助金や助成金が入らない以上、事業者の撤退による閉園という事態が起こってくるだろう。すでに自治体が介入して他の事業者が譲り受けるといったことも起きたりしている」。
慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「日本の政策というのはいつも“周回遅れ”だ。問題が起こってから“何とかしろ”となるので、次に来る社会に合わないことが多い。もっとも、政治家は次に来る社会のことよりも今起きている問題について公約に掲げたり演説したりする方が当選しやすいという傾向があるらしい。有権者も、今の問題についてしか、“ヤバい”と思えないからだろう。だから保育士の給料を上げるといった政策についても、支持されるようになったのは最近になってからなのではないか。だから何をやっても周回遅れになる」と指摘。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「人口問題というのはものすごくスパンの長いテーマだし、例えば工業化も終わり、人口ボーナスの時期も過ぎていたはずの1970年頃の政策を見てみると、“人口爆発をいかに防ぐか”という話が盛り込まれているくらいだ。しかし、どうしても政治家は自分の寿命の先にあるような長期の政策については言いにくいし、官僚も財界や社会と政治家の調整役に回ってしまい、そこまでのグランドビジョンを描くことはできない。
実際、“保育園落ちた日本死ね!!”が話題になった時に“子どもの数はいずれ少なくなっていくんだから、そんなに作る必要がない”と言ったとしたら、袋叩きに遭ってしまったのではないか。保育園を増やしたことでのプラスとマイナスを踏まえた上で長期的にどういう政策をとっていくか、難しくて答えの出にくいテーマだと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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