最終3ラウンドで3つのダウンを奪う圧巻KO劇だ。さらに最後のダウンはゴングと同時。カウンターの右ストレートを被弾した敗者が崩れ落ちる最中にゴングが鳴り響くと、場内はどよめきと歓声、拍手で騒然となった。
5月30日に後楽園ホールで開催された「Krush.125」。内田晶(チーム・タイガーホーク)と三井大揮(WIZARDキックボクシングジム)の試合は、3ラウンド9分間の激闘の末、試合終了のゴングとともに劇的なKO決着。鮮やかな駆け込みKOに「まるで(バスケの)ブザー・ビート!」「ギリギリでKOボーナスゲットだ」など、ファンも盛り上がりを見せた。
ここまでのキャリアはKHAOS/Krushと5戦参戦し4敗1分と結果がでていない内田。一方、現役消防士のムエタイ・ファイターとして注目される三井も昨年「K-1 WORLD GP 2020 JAPAN~K-1秋の大阪決戦~」での初戦を落とし、ともにK-1グループ初勝利が欲しいところ。
試合は両者ローやパンチを打ち合うバチバチの幕開け。徐々に内田がスピードを活かし三井の打撃をいなしながらペースを握っていく。勢いよく飛び込む三井に対して、内田は的確に左、さらにコンビネーションで相手の攻撃を見極め、絶妙な距離で攻撃を仕掛ける。
この日、ABEMAでゲスト解説を務めたレオナ・ペタスも「内田選手は速い、三井選手がそれに対応できていない。内田選手の左の蹴り、ミドル、ハイキック、インローはほとんどモーションが一緒で見えづらいと思う」と内田の蹴りを評価。まだ未勝利という点にも触れ「この1年半の間にかなりの練習を積んで今日に臨んでいるでしょうね」と内田がこの試合に賭ける意気込みを代弁した。
2ラウンド、三井もじわじわと距離を縮めて突破口を探る。ロープ側でワンツーを放つと、すかさず内田もパンチの連打、さらにローを返して譲らない。ラウンド終盤にはレオナが指摘した、速さを実感するようなジャブの連打、軌道が読みづらいハイとローのコンビネーションで内田がラウンドを支配した。
最終3ラウンド、試合は残り3分。明らかに差が見え始めた局面を打開すべく三井は泥臭く前に出るが、内田がカウンターぎみに左フックを当て最初のダウンを奪う。ダメージが残る三井に対して内田が落ち着いて猛攻をしかける。ハイキック、右、左、たまらず組みにくる相手を見ながら左フックを畳みかけると、狙い澄ました左フックで2度目のダウン。
残り15秒、3ダウンは避けたい三井はクリンチからの離れ際、残り1秒のワンプレイで飛び込んだが、内田の見事なカウンターで返り討ちに遭い、試合終了のゴングと同時に3ダウンを宣告された。
解説のレオナは内田の見事な勝ちっぷりに「観ているみなさんも、内田選手がKrushのリングで初勝利というのは信じられないんじゃないでしょうか。以前の試合から格段に別人のような技術の進化、メンタルの進化を遂げてますね。勝負の決め手は距離感でしたね」と劇的な結末を迎えた試合を振り返った。