「夜中でもLINEで連絡」「役員辞任は史上初と言われた」アメリカ人准教授が指摘する“日本型組織”PTA
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「くじ引きで“当たって良かった”と言う人がいない。みんな、“当たってしまった”と言う。PTAは悪いところばかりではないのに、そういうふうに思われてしまっているのは非常に残念だ」(北九州市立大学准教授のアン・クレシーニさん)。

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 Parents(保護者)、Teacher(先生)、Association(組織)=PTA。子どもたちの健やかな成長のため、保護者と先生が協力して様々な活動を行う集まりだが、新学期開始から2カ月、Twitter上には、その役員・委員に就いてしまったことを嘆く保護者の声が早くも上がっているという。

■保護者だけのコーラス大会、進め方をめぐる揉め事…

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 3人の子どもを育てるセブンさんは、子どもが小学校に通う間、一度は委員にならなければならないという“暗黙のルール”、さらに依頼の電話もあったことから断ることができず、「文化委員」を引き受ける。

 そこで待っていたのは、子どもとは無関係のようにも思える、保護者だけのコーラス大会とそのための練習、さらにベルマーク収集のための封筒作りだった。「平日の昼間に集まって、回収日が書かれた用紙を糊で貼り付けて…」。有給を使って参加する保護者もいたが、最終的に集まったのは、数百円分に過ぎなかったと振り返る。

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 また、子どもが通っていた幼稚園でPTA役員になったことのあるまろさんは、企業勤めを経験した母親と専業主婦だった母親との間で起きた、仕事の進め方をめぐる揉め事を間近に経験した。「効率化しようにも、“こうした方がいいな”って思い始める頃には任期が終わる。給料も発生しないし、今の時代に必要なのかなって思ってしまった」。

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 一方、育児エッセイ漫画を手掛けるライターのじゃがいもころりんさんは「PTAをやっていると他の学年のお母さんたちと関わる。その辺から入ってくる情報の量や濃さは違う」「苦楽を共にした仲間とはすっかり友達」と話す。先生の評判や教育方針を、学校行事の手伝いを通じて、普段とは異なる子どもの一面を垣間見ることができるなど、保護者にとっては様々なメリットもあるようだ。

■PTA副会長になったアメリカ人准教授“日本人をバカにするなよ”と言われた

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 前出のクレシーニさんは2年前、仕事の傍らPTAの副会長に就任することになった。

 「日本に来た時からPTAの大変さは聞いていたので、“何があっても絶対にやらない”と決心していた。それでも日本文化に馴染んで行くと、日本人の親がやらなきゃいけないことは私もやらなきゃいけない、日本人と同じ扱いをしてほしいと思うようになった。ただ、やらなければならないことの説明が無かったので、クラス役員との違いもよく分からないまま、“本部役員ならできるんじゃないか”と勘違いして引き受けてしまった。

 大学で准教授をしながら新聞の執筆やテレビのコメンテーターをやっていたので、週末に仕事が入ることも多かった。平日の集まりには当然出られないし、週末の研修会にも参加できないことがあった。しばらくすると会長やもう一人の副会長に“無責任だ、人にどれだけ迷惑をかけるのか”などと言われた。

 差別用語を使ったり、“日本人をバカにするなよ”と言われたりしたこともあった。夜中や海外にいるときにもLINEが来るので、どこに行ってもPTAから逃げられないと思うようになった」。

■“昔からやってきたことだから、これからも同じようにやらなくてはいけない”が問題

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 仕事にも支障が出ると感じ始めたクレシーニさん。家を空けることも多く、ついに子どもから「ママ、辞めてくれる?」と言われ、PTAを辞めることを考えるようになったという。

 「いろんな人に迷惑をかけることになるが、それでも自分のことを第一に考えなくてはいけないと決心した。騒ぎになりたくなかったので、まず教育委員会に相談した。すると“学校と相談しますね”と言われた。しばらくすると学校から電話がかかって来て、“辞められないんですよ”と。任意団体なのになぜ?と思ったら、“規約に書いてないから”と。日本語の“ボランティア”と英語の“ボランティア”では、意味が違うと思った。しつこく言った結果、最終的には辞めさせてもらえたが、“歴史上、初めてPTAを辞めた人”と言われてしまった。

 PTAは良いこともたくさんやっているし、知り合いも何人もいた。上手くやれている学校もあるし、悪だとは全く思わない。私も周りの理解さえあれば、忙しい人でもできたと思うので、あのようなことになったのは本当に残念だ。周りにもストレスで倒れた人が2、3人くらい出た。

 やはり問題は、“昔からやってきたことだから、これからも同じようにやらなくてはいけない”と、必要ないこと、複雑すぎることを残し過ぎていることだと思う。でもそれを変えるのには、ものすごいエネルギーが必要だ。日本のママたちはしんどい。何かおかしいと思っても、変えるだけのエネルギーも時間もないから、とにかく1年間我慢して次の人に回すというパターンがずっと続いていくのだと思う」。

■「公費で回さなければ行けない部分まで保護者のリソースで回そうとしてきた」

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 学校の問題に詳しいノンフィクションライターの大塚玲子氏は「参加する保護者にとってのメリットもあるが、子どもや学校のメリットはどうか。これまで“寄付”と“お手伝い”、言い換えれば“金”と“労働力”として役に立ってきたと言えると思うが、これからもそれをメリットと言っていていいのだろうか。

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 PTAという形ではなく、代わりに保護者の会みたいなものがある学校は結構あるし、必要なお手伝いについても、学校が直接呼びかければ募集できる。PTAを通せば保護者間の同調圧力で集めやすく便利だというだけ。そうやって、本来であれば公費で回さなければ行けない部分まで無理やり保護者のリソースで回そうとしてきたし、だからこそ公費も付きにくいという、“ニワトリと卵”みたいな構造になっている」と指摘する。

■「こういう組織は日本のあちこちに残っている」

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 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「自然発生的にできる互助会みたいな組織は日本に昔からあった。これがいいのは、安心感があるのと同時に出入りが自由だということだ。しかしPTAにはその自由がなく、しかも抑圧が生まれやすいという。典型的な日本型組織のパターンだと思う。その特徴は強いリーダーシップを発揮する人はおらず、皆が“やめた方がいいんじゃないか”と内心が思っているのに口に出せない空気で維持される、というものだ。そもそもPTAには何ら法的根拠のない、単なる任意団体だ。だから法律による縛りを変えることも、行政による指導もできない。だからこそ変えるのが難しい」とコメント。

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 慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「そもそもやりたい人たちが主体的に参加するから成立するのであって、平等に仕事をするといった発想自体、ボランティアという考え方に背いている。挙手制にして、やりたい人がやり続ければ上手くいく可能性もあると思う。この“皆で持ち回り”という発想は、いかにも農村的な文化だと思うし、地元で農業をしていた若者が多かった時代だから消防団が回っていたのと同様、PTAも社会に専業主婦が多いという前提に成り立っていたのではないか。

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 また、組織のリーダーというのは皆から信頼されている人がなるものだし、ルールや仕組みも状況に合わせて変えていかなければ生き残れない。しかしPTAの場合、“たまたま”入った人ばかりが集まってできたチームだから、そういう決定権も誰にあるのか分からない。組織論的に崩壊している。結局、こういう組織は日本のあちこちに残っていて、クレシーニさんのような、物事を動かそうという考え方を持っている人が運営のところで疲れてしまう」と分析していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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