“男性版産休”、取れるかどうかだけなく“中身”も重要 「『お客様育休』ではダメ」
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 今月3日に可決・成立した、男性の育休取得を促す「改正育児・介護休業法」。柱となるのが、産後8週間以内に4週間の休暇を1回か2回に分けて取ることができる「男性版産休」と呼ばれる制度だ。

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 また、今回の改正法では、1歳になるまでに同じく4週間の育休を2回に分けて取れるようになり、男性が最大4回に分けてまとまった休みを取ることが可能になる。

 育休取得率の改善により、女性の就業率の向上や第2子以降の出産の可能性が高くなることが期待されているが、果たしてうまくいくのだろうか。産後の夫婦のずれを解消するための講座を各地で行う「patomato」の狩野さやかさんに聞いた。

“男性版産休”、取れるかどうかだけなく“中身”も重要 「『お客様育休』ではダメ」
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 「男性が育休を取りやすくなった、制度が一歩進んだということは大いに評価すべきだと思う。それにあたっては努力してきた方がいっぱいいて、それが実って法律が変化していくことは評価しなければいけないし、喜んで受け止めている」(狩野さん、以下同)

 男性の育休取得率は2019年が7.48%で、政府はこれを2025年に3割まで引き上げたい考えだ。しかし、その休暇の内容も重視すべきだと狩野さんは指摘する。

 「例えば『育休お客様状態』と呼ぶ時があるが、(休みを)取るけど“休暇”として捉えてしまう。それから『出産おめでとう休暇』。今コロナで病院にも行けないと思うが、病院にお見舞いに行くお祝いの気持ちで休みを取って終わってしまうという、その過ごし方でいる限りは働き方も関わり方も変わってこないと思う」

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 これまでも制度としては整っていた男性の育休だが、取得率が低かった背景には、当事者や社会全体の育児に対する意識が希薄だったことが挙げられるという。

 「女性も知識が足りないし、男性はもっと知識が足りないし、それは男女関係ないことだと思う。女性の皆さんも『生んでみるまでこんなに大変だとは知らなかった』とおっしゃるし、『誰もこんなこと教えてくれなかった』とおっしゃる方もたくさんいる。男性もお手伝いするくらいで済むと思っているところがあって、『自分がそこまでやらなくてもそんなに大変ではないだろう』と受け止めている。そこの常識なり、育児に対する知識が全体として足りていない」

 いざ始めてみると、想像以上の大変さがある育児。その認識が不十分なまま放置すると、自覚してほしいとイラつき攻撃する母親と、仕事をすぐには投げ出せない父親が防戦するという状態に陥ってしまう。狩野さんはたとえ育休が取得できない状況でも、少しの寄り添いでそうしたお互いのズレを変化させることができるとした。

 「赤ちゃんってどうにもならない。寝かせてくれないし、寝てくれない。赤ちゃんが一番大切であり、一番の敵なんですよね。そこに対して、2人がタッグを組んでどうやって対処していくか。危機管理だし、作戦会議をするべきだし、そういう構図を描いて乗り越えていこうという絵がかけることがまず重要だと思う。女性も1人ではできないということを前提に、手放すものは手放していく。男性は、1人じゃできないことを妻が1人でやったらどういうことになるか。正しく見積もって、正しく危機管理をするということが非常に重要だと思う」

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 日本の父親の育児休業制度について、ユニセフは「世界一の水準」と評価している。“宝の持ち腐れ”となっている要因として、BuzzFeed Japan News副編集長の神庭亮介氏は「社員やスタッフが少ない職場では、『私が休んでしまうとどうなるんだろう』という引き目・負い目もあって育休を取りづらい。日本企業の人手不足という根本の問題を手当てしないと、育休取得率だけ上げていこうと言っても難しい部分がある。育児休業給付金や社会保険料の免除で、手取り収入のおおむね8割程度は補償されるが、それでも2割の収入減となると生活的に立ち行かない家庭があることも推察される」との見方を示す。

 また、「patomato」の狩野さんが指摘したように育休の“中身”が大事だとして、「育休取得率を上げることだけに血眼になると、まさにお客様状態で、数日間だけの『取るだけ有給』に終わってしまう可能性もある。育休にかこつけて父親がリフレッシュするだけだったり、キャリアアップのための資格の勉強などに『悪用』したりしてしまうようでは困る。家でダラダラしている夫の分まで妻が食事を用意しなければならない、なんていう事態になったら本末転倒だ。本当に子どものため、妻のためになるような育休にしないといけない」と指摘した。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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