聴覚障害のある女の子が将来得られたはずの収入は健常者の40%? テクノロジーが進歩する今、算出方法はこのままでいいのか
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 「障害に関係なく、希望や能力に応じて、誰もが職業を通じた社会参加のできる『共生社会』実現の理念の下、すべての事業主には、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務がある」として企業に義務付けられた「法定雇用率」。雇用されている障害者数は約58万人と過去最高を更新、法定雇用率も今年3月には2.2%から2.3%に引き上げられている。

・【映像】聴覚障害者の将来の収入“健常者4割”は差別か? 我妻ゆりかと考える

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 そんな中、大阪地裁で審理が行われている訴訟に注目が集まっている。聴覚障害のある女の子(当時小5)が重機にはねられ死亡した事故をめぐり、両親が運転手らを相手取り損害賠償を求めている裁判だ。焦点は「逸失利益」、つまり将来得られたはずの収入だ。被告側は女の子に聴覚障害があったことを踏まえ、逸失利益は健聴者の女性の40%だと主張していることから、原告側の両親と対立しているのだ。

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 人事向け情報サイト『人事のミカタ』の手塚伸弥編集長は「最近では障害者雇用が活発な企業であればあるほど、例えば聴覚障害のある社員のために音声認識ツールを活用していたり、周囲の社員が手話を学習するといった取り組みをしていたりする。筆談ができるのであれば、チャットツールを使って会話することも可能だと思う。40%という数字に驚いたし、根拠となる基準も時代に合っていないのではないか」と話す。

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 先天性の感音性難聴で補聴器を使用しているタレントの我妻ゆりかは「私の場合、飲食店で働いていた時には確かに聞こえづらかったこともあったが、努力と持ち前の明るさでやっていたので、障害があるというだけで判断されてしまうのはすごく悲しい」とコメント。「小学生の頃から、“大人たちに受け入れてもらえないんだろうな、夢とかあんまり見ない方が傷つかないで済むかな”と思って生きていた。でも今はこうやって自分のしたいことが叶えられているし、優しい人たちにも出会えている。自分のことを理解してくれる大人はたくさんいるので、諦めないで夢を持って欲しいと思う」と涙を浮かべて訴えた。

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 作家の乙武洋匡氏は「“ハラスメント”という言葉が使われすぎていて、本当に無くすべきだった“ハラスメント”の存在がぼやけてしまっているように、“差別”という言葉も、いろいろなことに使われすぎた結果、本当に無くさなければならない差別がぼやけてしまっているように思う。僕の考える差別は、ある特定の人々が合理的な理由なく低く扱われること。それで言うと、今回のケースこそ本当に無くしていかなければならない差別の一つだと思う。

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 例えば今回亡くなった女性が健常者だった場合、2019年のデータでは女性の逸失利益は男性の74.3%、つまり約4分の3と算定されてしまう。しかし、“女性だから補償は男性の4分の3だ”と言われたら、皆さんはどう感じるだろうか。元になっている女性の生涯賃金の平均が低いのは、能力が男性より低いのではなく、出産・育児などをサポートする体制が整っていないせいではないのか。この社会の不備を、なぜ個人が補填させられないといけないのか。そこに憤りを感じる。

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 今回のケースも同様だ。聴覚障害の方は、確かにコミュニケーションに難があるかもしれない。しかし学力の定着の難しさがあるのは、教育へのサポートが足りていないからではないのか。『労働能力喪失表』を見ると、“両手の全指切断”は労働能力100%喪失だ。でも、俺はまあまあ稼いでいるよ(笑)。我妻さんだって、ここからさらに売れてめちゃくちゃ稼ぐようになるかもしれないし、女の子だって(もし生きていたら)社会に出る頃には今よりもテクノロジーが進歩して、聴覚障害がハンディキャップにならない時代になっているかもしれないし、していかないといけない。

 今月からは、僕の友人の発明家・吉藤オリィさんが開発した遠隔操作型ロボット“OriHime-D”を使って、障害や病気で家から出られない人、中には寝たきりの人がカフェで恒常的に働けるようになる。そういうテクノロジーも出来てきているんだよということを、声を大にして言いたい」。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「裁判所も、“現行制度ではこういうことなので”、ということで算出するのだと思うが、その一つである国の労働能力喪失表が、どういう時代背景に作られた基準なのか、しっかり考えなければならないと思う。我妻さんがBluetooth内蔵の補聴器を使って音楽を聴いているということを知って、僕たちは驚いた。そのくらいテクノロジーはどんどん進化して、様々な部分で能力を補えるようになってきている。また、大量生産大量消費の価値感の時代から、個性や特性が輝く価値観の時代に変わってきていると思う。今年は衆議院議員選挙がある。イノベーションを起こして効率よくやっていこう、という政治家だけでなく、そういうところも変えてくれる政治家を国会に送り込む必要があると思う」と指摘した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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