阿波国・徳島からアメリカの名門「スタンフォード大学」へ。今年、そんな夢をかなえた一人の女性がいる。
「本日、無事に学費・寮費等全額補助の給付型奨学金に合格しました! これで胸を張って言えます!! スタンフォード大学に進学します! カリフォルニアで夢を叶えます!!!」
松本杏奈さん(18歳)は今年春、徳島県の高校を卒業し、秋からアメリカの超名門、スタンフォード大学への入学が決まっている。ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、入学を間近に控えた松本さんを取材した。
■「一番の壁は周りからの理解のなさだった…」徳島からスタンフォード大学へ
そもそも、松本さんはなぜアメリカの大学を目指そうと思ったのだろうか。
「もともと日本で幼稚園、小学校、中学校、高校と学校で浮いた感じで、あまりコミュニティになじめなかったんです。『自分が認められる場所ってどこなんだろう』と考えたときに『アメリカだったら認めてくれるんじゃないか?』という、興味を持ち始めたのが最初です」(以下、松本杏奈さん)
そんな淡い希望を抱いた松本さんは、高校2年生の夏、海外でトップレベルの研究者が次世代の育成を行う「アジアサイエンスキャンプ」に参加。そこで出会った、同世代の天才たちに衝撃を受けたという。
「日本代表団の子たちもですが『僕はMIT(マサチューセッツ工科大学)を目指しているよ』と当たり前のように言う。しかも、そういう風に言っている子たちが普通にご飯を食べて、普通に遊べて、普通にお話ができる全員人間だった。『私も努力したらなれるんじゃないか』と思って、そこから海外受験をがっつり目指し始めました」
海外大学進学に火が付いた松本さん、帰国後、猛勉強を開始します。中でも、松本さんが人一倍努力したのは、自信がなかった「英語力」と未経験だった「課外活動」だった。
「東京大学がやっている高校生向けの研究プログラムの『東京大学グローバルサイエンスキャンパス』に応募した。9月から国費で東京に通わせてもらって、通った後は、国立情報学研究所の研究プログラムに通った。高校3年生になってからは国立情報学研究所の研究プログラムと並行しながら、絵を描いたり、芸術活動をしながら、自分で立ち上げた研究プログラムをやっていた」
複数の活動と並行して続けた、夢実現のための勉強。こうした努力が実を結び、松本さんはスタンフォード大学を含めた、アメリカの6大学に見事合格。
「スタンフォードってアメリカの大学で一番倍率が高い大学で、一番入るのが難しい大学。合格通知を見た瞬間『とんでもないことをしてもうた』って思って。信じられなかったです」
大学進学後は「視覚や聴覚に障がいがある人たちのコミュニケーション手段を作るための『触覚』に関する研究を行いたい」と話す松本さん。出身校から初の海外大学進学者となった松本さんが、道のりを振り返る中で感じたのは、海外を志す上での「地域格差」だった。
「一番の壁は、英語力でもなんでもない、周りからの理解のなさだった。地方の高校からアメリカの大学に行きたいってなったとき『日本人はいけない』という謎の教え込みが壁になって、それをいちいち説得しないといけない。『海外大学進学者が過去にいた高校だったら絶対にこんなところに時間を食われていないだろうな』といったことがいっぱいあった。私は反対されましたが、何回も何回も説得し続けました」
周囲を説得し、見事名門大学に合格した松本さん。後輩たちに向けて「“物差し”は他の場所に行って探してもいい」と話す。
「コロナ禍の影響でオンライン化が進んで、地方格差がかなりなくなったと思う。高校生に私から言うとしたら、“物差し”って意外と変えられるんだよって言いたい。日本で認められなかったら、他の場所で認められないなんてことは全然なくて、私はたまたま自分の“物差し”を認めてくれる場所が全部アメリカにあった。だから、“物差し”は他の場所に行って探してもいいと思う。もっと他に選択肢があると知って欲しい」
■「日本の大学に入って留学」ではなく「大学入学は海外へ」が増える?
タイムズ・ハイヤーエデュケーションが発表した2021年度の世界大学ランキングを見ると、1位にオックスフォード大学、2位にスタンフォード大学、そして3位にハーバード大学といった世界屈指の大学名が並んでいる。トップ200大学のうち、アメリカは59校、イギリスは29校がランクインしているが、日本は36位の東京大学、54位の京都大学の2校のみ。
『コロナ危機の社会学』の著者で東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏は「タイムズ・ハイヤーエデュケーションは世界でも権威あるイギリスの教育専門誌のランキングのひとつで、東大と京大を除いて、ここ20年間で日本の大学は軒並みランキングが急落している」と語る。
「隣の中国や韓国をはじめ各国が多額の研究投資を行っているのに対して、日本は過去(予算を)絞って、研究投資が減っていた時期が続いた。現在は横ばいの状況で、予算の削減が続いているわけではないが、海外では研究室(ラボ)ごとお金で買って持っていくようなケースもある。こういったことはお金がないとできない。そういったライバル国と競争するような予算措置は講じられないままだ」(以下、西田亮介氏)
その上で西田氏は独立行政法人日本学生支援機構が発表した「日本人学生留学状況の推移」の結果に言及。現状、学生の国内志向が強まっているわけではないと話す。
「留学数を見るとここ10年で3倍以上と激増している。短期留学をどこまで含めるのかといった議論は必要だが、若者の国内志向が強まっているという見方は間違いだ。スタンフォード大学に入学する松本さんをはじめ、世界のトップ大学へ留学する学生も増えている。日本の大学に入ってから留学するのではなく、学部から海外の大学に進学する学生も、世界における日本の大学の地位低下が進むようなら今後増えるのではないか」
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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