「経験を積み重ねることが大切。失敗を叩くのではなく、応援して」夏フェスの季節を前に、有観客ライブ開催の可能性は? 医師に聞く
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 新型コロナウイルスのワクチン接種が進んだ国々で、大規模イベントの開催再開に向けた動きがみられるようになってきた。フランスでは5000人を集めた屋内コンサートの実験が行われた。客席を密の状態にする一方、参加者には3回の検査とマスク着用が義務付けられ、感染防止策の有効性が検証される。スペインでは3月に行われた5000人規模のイベントで6人の感染者が報告されたものの、「感染が拡大したとは言えない」との結果が出されている。

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 AKB48のメンバーとして長年にわたり劇場公演などをこなしてきた柏木由紀は「去年のライブは無観客で、その後は様子を見ながら上限50%にしたり、緊急事態宣言が出てからは中止にしたりということでやってきた。出る側としては、やっぱりお客さんあってのもの、という思いはあるし、わざわざ足を運んでくれる方とかは協力する気持ちが強いので、COCOAのインストールなどについても協力してくれると思う。

 ただ、私が所属しているグループはとにかく人数が多く、100人が出ることもある。ステージに立った時の感覚で“近いな”と思い、“すみません、最前列をもう少し下げた方が安心感があります”とお願いして、意見を取り入れてもらったこともある。“盛り上がってますか!”とお客さんに聞くこともできないので、メンバー同士で“メンバー、声出せるか!”と聞くようにしてみたり、歌詞を間違えて歌が止まったりすると、優しいファンの方が一緒に歌ってくれるので、そういうことが起きないよう、歌詞は絶対間違えないようにしようねって話し合ったり。でも、そういうことが正解なのか不正解なのは確かめられていない」と明かす。

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 コロナ対策についてオーケストラや文化庁などに助言をしてきた亀田総合病院集中治療科部長の林淑朗医師は「ライブイベントでクラスターが発生したこともあるし、やはり感染リスクは高いと思う。だからこそ換気やマスクなど、様々な対策が取られてきた。しかし、そうすることでの安全性の検証はほとんど行われてこなかった。なぜなら、そういうことをやる雰囲気ではなかったからだ。それでも欧米の人たちは我慢できなくなり、“人体実験”に近いようなイベントを開催してみたわけだ。私も飛沫の実験をしたことはあるが、やはり“試験管内”程度のものだった。イベントを開催することで、どれだけのクラスター発生リスクがあるのかを知りたければ、やはり色々な条件で実際に開催してみなければわからない」と話す。

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 「オリンピックもそうだが、公衆衛生の専門家や行政が気にしているのはイベントの中で起きることだけでなく、むしろその前後や裏側で起こることだ。数千人規模のイベントになれば、会場を去った後のことまでしっかりコントロールできる手段があるならば、大きなクラスターが発生することなく、イベントに行かなかった人たちと同じくらいの発生率に抑えることも理論的には可能だと思っている。実際、スペイン等の実験でも、ある程度の傍証が出ているようだ」。

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 一方、日本では去年3月、大阪のライブハウスでクラスターが発生、さらに緊急事態宣言以降はライブやコンサートの開催に厳しい規制がかけられ、延期や中止の決断も相次いだ。その後、無観客・ネット配信でのイベントや人数制限をした上で換気の時間を設けるイベントなど、様々な工夫が講じられてきた。

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 林医師は「今回のコロナ禍のようなことが起きたのは100年前のスペイン風邪以来のこと。音楽家はもちろん、政治家も専門家にとっても生まれて初めての経験だ。公衆衛生の責任を負っている行政が暗中模索で慎重に進めていこうというのも理解できる。部分的には失敗したり成功したり、世界中でいろんな事例があるが、結局のところやってみてからじゃないとわからないことが多い」とコメント。

 「私たちとしても、日本のリーダーや行政が取ってきたやり方を受け入れていくしかなかったのかなと医師の立場からは思う。音楽家の友人たちの立場に立つとものすごく厳しい状況だし、イベントについても、大切に思っている人、待ち望んでいる人もいる。開催するかどうかも主催される方や関わる方々の価値観、判断なので、止めることはできない。それでも行政や会場からの要請や規制を無視するわけにはいかないと思う」と胸中を語る。

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 そんな日本でもワクチン接種が進みつつある。もうじきやってくる夏フェスの季節を前に、明るい見通しも見えてくるのだろうか。

 林医師は「私たちが1年前に想定していた以上に有効なワクチンが、これだけ短期間で出てきたことは奇跡に近いんじゃないかと思っているし、もしかしたら将来を変えてくれる可能性があるとも思う。実際、イスラエルでは世の中が変わってきているので、失敗も含めて、慎重に経験を積み重ねていくことが大事だと思う。例えばプロ野球のチームでクラスターが発生したニュースが頻繁に報じられているが、それに対して毎回突っ込むような人はほとんどいなくなったと思う。やはり注意深く前に進み、失敗した時は立ち止まってみるということが大切だ。コンサートとかライブに対しても社会が失敗した人たちを叩くのではなく温かい眼差で見ていただき、行政も支援をし、メディアも伝えていくということが必要だ」と指摘。

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 「ただし、オリンピックというのは世界中の人たちが集まる壮大なイベントになるので、公衆衛生学的に見れば“あり得ない”イベントだ。ただし開催するかどうかは科学や医療、世論だけで決められることではないということもよくわかるし、実際、すでに政治の話になっている。私たちの手の届かないところで決められるのは仕方ないが、開催するのなら、リスクをなるべく最小化するような助言をするのが専門家の役割になってくるだろうし、私も個人的にはトップアスリートの競技は見てみたいと思っているし、一人の医療者としては不測の事態が起きた時は協力していくというのがあるべき姿だと思う」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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