“多様性”と言いつつ“正解”を求めてしまうメディアや社会…「カミングアウトしない選択」をしたLGBTQ当事者のことも知って
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 LGBTQなどのセクシュアルマイノリティが家族や友人などに対して自分の性的指向や性自認を伝える「カミングアウト」。

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 自分がゲイだと認識した中学生の時から15年もの間、カミングアウトできずにいたというのがモアさんだ。「お前はオカマかとか、ホモかってからかわれてきたから、誰にも相談できずに抱え込むしかなかった。でも、嘘偽りなく生活できるようになって本当に良かった」。

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 トランスジェンダーであることを友人に、そして最後に家族にカミングアウトしたという奏太(かなた)さんは「自分にウソをつき続けることになってしまうので。特に性転換するにあたって絶対にしなきゃいけないということでカミングアウトした」と話す。

 「見た目がボーイッシュだったこともあって、友達に“あなたは男性女性どっちが好きなの?”と唐突に聞かれた。“あ、この人には話していいんだ”と思ってカミングアウトした。ただ、家族は一番身近な存在だけに、嫌われてしまうのも一番怖い存在だ。このことを一生背負わせてしまうと思って、話すのも一番怖かった。僕の場合は性別を変えている側なので、カミングアウトすることでかなり生きやすくなった。

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 社会にLGBTQという言葉が浸透して、認知も進んだかなという印象もある。ただ、理解については、その“一歩手前”なのかなと感じている。言葉の端々で、”この人には話してもいいのかな”となんとなく察する部分もある。カミングアウトされて“理解しなきゃ”“どうして欲しいの”と先走ってしまう方も多いと思うが、信頼関係のない相手には絶対に話さないし、まずは素直に受け止めて、そっと見守ってあげるということが一番大事だと思う」

■カミングアウトをするかどうか…思い悩む当事者たち

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 奏太さんが感じているように、LGBTQの理解の進み具合は、必ずしもイメージ通りではないようだ。実際、auじぶん銀行株式会社の調査によれば、「職場ではカミングアウトしていない」という当事者は8割以上に上っている。

 バイセクシュアルであることを公表している漫画家のトミムラコタさんのコミックエッセイには、「“え!女同士?”“どうやって性行為するの”…カミングアウトするたびに聞かれるから、そっから隠すようになったかも」と話すレズビアン、「才能ある人多いし憧れちゃうな」と言われ、「僕は平凡に会社員やってて………そんな僕が受け入れてもらえるのだろうか」と思い悩むゲイの姿が描かれている。

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 戸籍上は女性だが、性自認は男性でも女性でもないXジェンダーの湊士(みなと)さんも、家族や友達にもカミングアウトできずにいる。「自分とは違うからって線引きされたりとか、距離を置かれるようになったりするんじゃないかと思うと、やっぱり怖いなって」と話す。「女性用トイレに入る時、格好が男性だから“2度見”されたり、“えっ?”っていう顔されたり。“こっち男子トイレじゃないよ”って言われることもある。そこで“女なんです”ってハッキリ言えないのが、すごい苦しくて…」。

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 なかなか切り出せずにいた息子が目に涙を浮かべ、そして意を決して母親にカミングアウトする映像がある。

 「僕は恋愛対象として男性が好き」「やっぱりな。そうやと思った。あんたがそれで幸せやったらそれでいいやん」

 「家族は家族で変わりないし。親は親で変わりないから」「うん…」

 このように、当事者にとってカミングアウトは決して簡単なことではないのだ。

■カミングアウトしないことを選択した人たち

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 無意識の誤解や偏見が残る現実を踏まえ、カミングアウトしないことを決めた人もいる。あるトランスジェンダーの女性は取材に対し「なりたかった女性としてすでに生活を始めているし、カミングアウトは男性であった過去の黒歴史を公開するようなもの。百害あって一利なし」と断言する。

 また、今はゲイであることをカミングアウトしない選択をしているまるとさんも「必要に迫られてないし、あえて周りの人に言わなくてもいいのかな。職場でもLGBTQに関する研修が始まったので、社会的な認知度は高まっていると思う。ただ、周りの考え方を聞く機会がないのも事実なので、暮らしやすくなったという実感はそこまで持てていないというのが正直なところだし、やはり周囲の方の言動を踏まえると、自分に対する視線が変わってしまったり、不利益を被ったりしてしまうのが怖い」と胸中を語る。

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 「悟られないように気を付けている生活しているし、もし気付いたとしても、気付かないふりをしてほしいというのが正直なところだ。一方で、同性愛のコミュニティに所属するようになって、隠していることへの罪悪感やストレスから解放された部分もある。今後パートナーができて同棲を始めたり、一緒に人生を歩んでいくという時には考えなくてはいけないし、カミングアウトすることによって人生が一歩前進することはあると思うが、カミングアウトしていない自分は停滞したままで、一皮向けていないみたいな感じにとらえてしまう風潮があると思う」。

■“多様性”と言いつつ、“正解”を求めてしまうメディアや社会

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 議論を受け、時事YouTuberのたかまつななは「メディアがこういう問題を取り上げる時には、苦しんでいる人にクローズアップしがちなので、言った人、言いたくて言えない人にフォーカスしすぎた結果、言わないという選択肢を選んだ人たちがプレッシャーに感じてしまうこともあると思う」とコメント。

 たかまつの指摘に、慶應義塾大学の若新雄純特任准教授では「多様性のある社会をどう作るか、という議論が盛り上がって久しいが、LGBTQも多様である、ということに向き合おうとするのなら、“正解がある”という思い込みをなくすしかない。つまり今日のテーマで言えば、“みんながカミングアウトできて、それをみんなで許容できる社会がすばらしいよね”という“正解”を提示したり、逆に何かをタブー視して、“それは間違っているかもしれないから、一切いじっちゃいけない”と提示してしまうことだ」と応じる。

 「YouTubeで流行っている動画も、“この人がこう言っていたから、これが正解っぽい”というものばかりが再生されているし、悲しいかな、この番組もそういうのに若干乗っかってしまう部分がある。これは小学校・中学校で一つの正解を出すという教育に時間を使っている以上、難しい問題だと思うが、多様な性自認、多様な背景、多様な人生観があって、その数だけ問いがあり、それらを丁寧に聞けるようにならなければいけないということだ」。

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 奏太さんは「おっしゃる通りで“多様性”と言いつつ、“正解”を求めているし、LGBTQについても、“このひとはこうだから”という区別の輪郭がハッキリしだして、それに対する“正解”を見つけようとしすぎていると思う。僕自身、カミングアウトすることが正しいと言いたいわけではなく、選択肢の一つだと言うこと。押しつけがましく“カミングアウトしろ”と言うのは間違っていると思う」、まるとさんは「問題として取り上げていただけることは当事者としてありがたいが、個性であるはずの部分がフォーカスされすぎていたり、普段の自分の生活とはかけ離れているようなところフォーカスされ、議論されていることに違和感を覚えている」と話していた。

 認識から理解へ。そのためには、ひとりひとりに違った価値観が存在するということを忘れてはならない。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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