2020年10月、長崎県諫早市、デイケアセンター・Hyggeに歌声が響く。溝上文徳さん(56)の声だ。横には妻の由佳さん(52)が寄り添う。
由佳さんが最初に異変を感じたのは、文徳さんが53歳の時だった。それまで文徳さんは、建設業の仕事と、遊び一筋で宵越しの金は持たないような、豪放磊落な性格だった。だが、いつしか「もったいない」が口癖の“節約家”になっていた。さらには同じ事を何度も言ったりお酒が入ると、場の雰囲気をわきまえず急に「わいどん(お前たち)は、ばかさ」などの暴言を吐いたりするようになった。