「原動力は政府への憤り」「協力的な担当者も多い」…コロナ在宅死の実態も明るみにした“開示請求の鬼”WADA氏に聞く、情報公開制度のリアル
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  法律に基づき、行政機関に対し公的文書や情報の開示を請求できる情報公開制度。報道機関はもちろん、個人でも行うことができ、時には重要な事実を暴く鋭い刃となる。これを駆使して相次いで文書を取得し話題を呼んでいるのが、「開示請求の鬼」の異名を取るのがWADA氏だ。

・【映像】“開示請求”制度って?世の中が大きく動いた事例も

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 先月11日には森友問題に関する合同ヒアリングにリモートで参加、財務省担当者に「開示請求かけますからね。市民と国会議員の質問に答えないことは国家公務員法96条に反する行為」と詰め寄る場面も見られた。

 修士(理学)博士(医学)の学位を持ち、現在はアカデミックポストを探しながら、“開示請求クラスタ”の仲間とともに活動しているWADA氏は、そのモチベーションについて「答えない、差し控える、出さない、という国会を含めた態度に対する憤りを覚え、それなら開示請求をして、少しでも出させようと考えた」と話す。

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 「国の場合、最初に手数料として300円の収入印紙が必要だ。請求の提出は郵送でも可能で、行政機関の方で審査が終わると、開示か非開示かの決定通知が出る。開示が決定された場合、全て請求した場合の金額が書かれてくる。基本的にはコピーは白黒1枚10円。スキャンする場合、紙は1枚10円、CD-Rが1枚100円。データの場合は1ファイル210円というのが規定だ。私の場合、一度に紙で2000ページくらい請求する場合もあるので、その際は2万円ということになる。

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 Twitter上にいる“国会クラスタ”と呼ばれる方々が審議情報や要点を流してくれているので、その中で“ここは答弁しなかったんだ”“これについてはデータを持ってなかったんだ”というものについて請求をすることが多い。具体的に文書を特定する義務は国や行政機関側にあるので、開示請求をする側はある程度のことを箇条書きで書いても大丈夫だ。特に文書の多かったり複雑だったりする場合、“開示請求クラスタ”の20人ほどの仲間で一緒に見る。分量が多くなる方が嬉しいし、ネットに公開して、みんなの知恵を借りることもある」。

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 そんなWADA氏が“ワースト省庁”と呼ぶのが、防衛省、外務省、財務省だ。「非常に遅いし、対応が渋い(笑)。特に外務省と防衛省は“国家の機密”という言い方をしてくる。あるジャーナリストの方が防衛省に請求したところ、決定が3、4年後だったということもあったそうだ。ただ非開示の場合も不服審査請求といって申し立てができる。その場合、総務省の審議会で検討されることになる」。

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 ただし、開示された情報が、ほぼ“黒塗り”だったこともあるという。その話を聞いたBlack Diamondリーダーのあおちゃんぺは「そもそも自分たちに関係のある情報なのに、お金がかかるということに驚いた。黒塗りなら、その分は値引きしてくれてもいいんじゃないか」と感想を漏らした。テレビ朝日平石直之アナウンサーは「番組でチームを組み、自治体の公文書館に籠もって資料を見ていく作業をしたことがあるが、ものすごく時間と労力がかかる。それをやっているのがすごい」と舌を巻く。

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 そのようにして開示された情報の中には、警察庁から取得した“コロナ在宅死”にまつわるものもある。このデータについては大手メディアも報じ、2ちゃんねるの創設者・ひろゆき氏も「一般人が開示請求することで起こったという面白い現象」と評している。

 「1月下旬のデータが最新だという厚生労働省の国会答弁があったが、厚労省は自宅で亡くなられている方を把握してない。それはひどいと思ったが、把握してない以上、厚生労働省に請求しても出てくるはずがない。しかし検死されていれば警察が取り扱うことになるので、警察庁に問い合わせをした。身内を亡くした時の経験から、自宅で死亡した場合、警察が来るという知識があったことも大きい。

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 ただし、まさに究極の個人情報でもあるので、開示請求では個々の事例はわからないこともある。だから自宅で亡くなられた方へのインタビューなどは報道機関にやってもらうしかないと考えているし、志のある記者さんたちとはコンタクトをとっていて、開示請求する文書について一緒に考えたりすることもある」。

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 そんな中、東京都は業務への負担から“請求を受け付けない”基準の検討を始めている、も報じられている。WADA氏は「情報を公開することも役所の重大な責務の一つ。それに支障をきたすようなことをするのは自己矛盾だ。ただ、全体としては改善が進んでいるところもあるし、担当者の方が協力的なことも多い。例えば入管法改正に関する開示請求をしているが、主要な部分はホームページで公開してあるから、という返事が来た。少しずつ公開に向かって動いてはいると思うし、別の省庁に請求した場合も、“それはこちらの方にお願いします”というアドバイスをいただけることもある」。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「僕は米サンディエゴの原発に不具合があったときに情報公開を請求して資料を入手したことがあるが、驚くほど簡単だった。公文書館にアクセスし、キーを入れて出したら、三菱重工の担当者の電話番号とメールアドレスまで公開された。アメリカが民主主義の国として底力があるのは、文書も写真も映像もデータベース化されていて、まるでネットで検索をしているかのように引き出せること。

 一方、日本は政治資金収支報告書もPDFで管理されているので、データベース化されてないものに関しては名前を打ち込んでもすぐには出てこない。本来、様々な情報を公開することで、“じゃあこれはうちのサービスで改善できるとか、こういう分野はうちがサービスに転換できる”など、社会問題が改善する方に持っていくこともできると思う」とコメント。

 アメリカ出身のパックンは「政府が抱えている情報は全て国民のもののはずだし、政府のボスである我々が“出せ”と言えば出してもらえるのが本来の姿だ。アメリカでもFOIA(Freedom of Information Act)という法律があり、それによって政権交代に繋がるような重要情報が引き出されたこともある。ただ、アメリカでも最近は黒塗りがすごく多いし、職員が資料を探すのに使った時間分の費用は請求される。情報開示請求を守る法律も定期的に更新しなきゃいけないと感じている」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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