「結婚していなければ“同意書”は不要なんだと知ってほしい」女性側に重い負担、悲劇を生む日本の妊娠中絶の矛盾
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 名古屋地裁岡崎支部は先月、死体遺棄などの罪に問われていた21歳の女性に対し懲役3年執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。女性は去年6月、愛知県西尾市内の公園のトイレで出産した男の子に適切な医療措置を行わず死亡させ、遺体をビニール袋に入れて同公園に遺棄していた

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 事件の背景には、日本の妊娠中絶の制度をめぐる問題があった。誰にも相談できず、同居する母親にも知られたくなかったと供述していた女性は中絶の同意を得るために赤ちゃんの父親に連絡を取ったものの、返事がもらえないまま手術が可能な時期を過ぎてしまっていた。名古屋地裁岡崎支部は「犯行に至る経緯には、父親の不十分かつ不誠実な対応が発端にある」と指摘している。

■「法制度も含めて問題があったということではないか」

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 中絶に関する情報発信を行う「国際セーフ・アボーション・デーJapanプロジェクト」のメンバーでもある金沢大学非常勤講師の塚原久美氏は「今回の判決では情状が酌量されたが、“落としどころ”としてはこれしかなかったのだろう。ただ、男性の不誠実さを責めるばかりでは、かえって女性たちに“誠実な対応をお願いしなくてはならない”と思い込ませてしまうことにもなりかねないと思うし、女性に罰があるなら男性にも罰を、という議論も違うと思う」と話す。

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 「この女性が安全に中絶を受けられず、たった一人、トイレで産まなきゃいけない状況に追い込まれたというのは、やはり日本の法制度も含めて問題があったということではないか。

 というのは、未婚の男女間の場合、中絶に同意書は必須ではないからだ。まず、それが医療者に伝わっていないという実情がある。そして、そのことを知っているにも関わらず、後で男性に民事訴訟などを起こされないために、“自衛措置”として同意書を求める医療者も少なくないという実態もある。

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 一方で、結婚している女性の場合には母体保護法によって配偶者の同意が必須だ。しかし諸外国の法律には同様の規定はないので、“日本の女性は子ども扱いされているのか”と驚かれることがあるくらいだ。そもそも同意ができないということは、それだけ夫婦仲がおかしくなっているということだし、産む・産まないすら決められない状況にあるということだ。実際、男性側が女性をつなぎとめるために同意しないということも起きている。

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 そもそも日本の刑法の堕胎罪は女性の権利が1ミリも考えられていなかった明治時代に作られたもの。そして、この堕胎罪に問われないよう作られているのが母体保護法なので、堕胎罪を無くしてしまえば、母体保護法もいらなくなるはずだ。

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 やはり、まずは情報だ。“うちは同意は必要ありません”という病院は必ずあるが、“2カ所行ったけどダメだった”となると諦めてしまうだろう。しかし、結婚していなければ同意書はいらない、それは本当なんだということを知っておけば、もっと探してみようという気になれるのではないか」。

■「日本社会のジェンダーの問題の表れではないか」

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 人工妊娠中絶の経験がある大学生のりりさん(仮名、21)の場合、病院で「結婚していないので同意書はいらない」と説明されたという。「しかも成人していたということもあって、彼と自分の判断だけで手術が受けられた。だから家族には未だに言えていない。親と話ができていたら違った結果になっていたかもしれない」。

 同じような思いを抱えている人は多いのではないかと感じたりりさんは、Twitterを使って悩み相談を行っている。「やっぱり情報を得て、よく考えた上で手術を受けることが必要だ。特に中絶の経験は公表しづらいので、体験した人の話はほとんどない。男性からも“彼女の生理が遅れている”という相談をいただく。自分にとっても欲しかった情報だし、それによって考えを見直したりすることもできるはずだ」。

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 「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事を務める慶應義塾大学大学院1年の能條子氏は「日本では年間で延べ14万件の中絶が行われているので、つまり背景には延べ14万人の男性がいるはずだ。みんながルールを知っていれば、救われたケースもあったかもしれない。やはり自分の体のことは自分で決められるべきだし、それは結婚していたとしても同じだろう。仮に男性が出産をする立場だったら、こういうルールは残っていなかっただろうし、それだけ意思決定層に女性がいないという日本社会のジェンダーの問題の表れではないか」とコメント。

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 実業家のハヤカワ五味氏も「同じ婦人科でも、ちょっと年齢が上の医師になると認識がずれているなと感じることがある。アフターピルをもらいに行くと説教されたり、病院ごとに独自ルールを設けていたりするのは困る。中には週数を稼いで、出産の一時金が出るラインになってから中絶させるというケースもあったようだ。加えて、海外では週数によっては数千円の薬で中絶することも可能なのに、日本ではWHOが推奨していないような、身体への負担が重い手術がベース。10万円以上かかってしまうこともあり、お金がないことで問題が深刻化してしまうケースもあると思うが、今年に入って日本で中絶薬が承認申請されるということなので、状況が変わってくるかもしれない」と話した。

■「当事者ではない人たちにとっては性別を問わず“他人事”になってしまいがち」

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 スタジオの男性ゲストからもコメントが出た。

 元経産官僚の宇佐美典也氏は「自分も男なので言いづらいが、やはり男性社会の弊害で、最低なことだと思う。女性に罰があるのなら、男性にはそれ以上の罰がなければならないと思うし、子どもを育てる父親としても、許しがたい」と上で、「現行の制度上、病院がリスクを恐れて同意書を求めるのは仕方がない部分がある。一方で、今の制度は完全に男性側が“フリーライド”で、女性に対して差別的。同意書が必要だというなら、事件になった場合は男性にも罰則があるということでなければフェアじゃない。逆に同意書が不要というのなら、病院側が免責されるような仕組みもなくてはいけない」と提言。

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 ドワンゴ社長で慶應義塾大学特別招聘教授の夏野剛氏は「選択的夫婦別姓をめぐる議論もそうだが、実は男性の政治家だけの問題ではない。当事者ではない人たちにとっては性別を問わず“他人事”になってしまいがちなところがあり、真剣に向き合ってもらえない。中絶に関する制度改革についても、男性だけでなく、女性の政治家の間にも根強い反対論があることは事実だ」と指摘した。

 塚原氏は「私たちのプロジェクトではオンラインイベントやロビイング、ホームページでの情報提供、現在はChange.orgを使って配偶者同意要件をな無くすための署名活動をしているので、賛同する方はぜひ署名していただけたら嬉しい」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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