プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」予選Dリーグ第3試合、チーム永瀬とチーム広瀬の対戦が6月26日に放送され、チーム永瀬がフルセットの末5-4で勝利、Dリーグ1位での本戦出場を決めた。相手のリーダー広瀬章人八段(34)に3連勝を許すなど苦しめられたが永瀬拓矢王座(28)、増田康宏六段(23)、屋敷伸之九段(49)がそれぞれ勝利を挙げて競り勝ち。前年優勝チームが連覇に向けて苦しい勝負をものにした。
ベテランと若手の力がうまく噛み合っての勝利だった。初のフィッシャールールということもあってか、今ひとつ調子に乗れなかった屋敷九段だが、この第2試合では徐々に感覚を掴み始め、第1局で北浜健介八段(45)に勝利。これに「素晴らしい!」と気を良くした永瀬王座が連投を提案すると、屋敷九段も「あ、大丈夫です」と即答。続く第2局、丸山忠久九段(50)に後手番から十八番の一手損角換わりで挑まれるも、終盤の切れ味が鋭く連勝。永瀬王座も「文句なし」と絶賛した。一気に3連投した第3局では広瀬八段に敗れたものの、本来の早見えがフィッシャールールと噛み合っての2勝1敗は、本人にとっても本戦に向けて弾みをつけるものになった。
一方で、苦戦したのは増田六段だ。第1試合では2戦2勝と活躍したが、この試合では第5局で北浜八段に逆転勝利を収めたものの、連投した第6局では広瀬八段に力負け。第8局では再び北浜八段と戦い、終盤まで優勢に進めていたものの、よもやの逆転負けを喫することになった。これには「いやー、ひどかったですね」と対局後も言葉少な。連覇を目指す本戦を前に、課題を見つける3局となった。
予選1位通過への踏ん張りどころで力を出したのは、やはりリーダーだった。永瀬王座は第4局から発進。丸山九段を相手に、リードを奪った終盤は入玉も見えるほど自玉の安全度を高めてから、快勝を収めた。チームの勝利がかかった第7局では広瀬八段に最終盤、痛恨の逆転負けを喫したが、決定局の第9局では気を取り直し、丸山九段に押し込まれながらも粘り勝ち。「広瀬八段に諦めないことの大切さを教えていただいたので、その教訓を活かして最後まで手をつなぎました」と、その日の痛い経験をすぐに糧とするたくましさも見せた。
昨年から絶対的エース、藤井聡太王位・棋聖(18)が抜け、新たにベテラン屋敷九段を迎えた新生・チーム永瀬。振り返れば予選は2勝0敗、得失点差+5と堂々の成績で本戦出場を果たした。絶対に負けない将棋を指す永瀬王座、若さと巧みさを併せ持つ増田六段、そしていよいよ本領を発揮してきた屋敷九段。本戦までにチームの成熟度が増せば、2度目の栄冠への距離はさらに短くなる。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)
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