リアルとバーチャル世界の融合。実際に目に見えている世界に映像を映し出す機械も小型化が進み、ゴーグルやメガネ型といった身に着けるデバイスの開発が進んでいる。
さらに今、話題を集めているのが、コンタクトレンズをディスプレイ化する研究だ。ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、今年3月に研究の成果を発表し、アメリカの学会で論文を公開した東京農工大学の高木康博教授を取材した。
「コンタクト型ディスプレイ(の研究)は従来からありました。一番の問題点は、コンタクトレンズの中に入れたディスプレイが見えるかどうか。目のピントが合わなくて見えなくても、ホログラムを使うと見えるようになる技術がある」
ディスプレイを目の中に――。“究極の小型化”とも言える技術。しかし、コンタクトレンズは目に直接つけるため距離が近く、映像のピントを合わせられない問題があった。そこで高木教授が注目したのが、デバイスから離れた空間上に表示させるホログラフィー技術だ。
「この透明なホログラムにレーザー光を当てると、雪のようなマークが見えませんか? ホログラムにレーザー光を当てることによって、絵を出しています。レンズの中にも“半導体レーザー”という、小さなレーザーが入っています。ホログラムもコンタクトレンズの中に入っていて、レーザーから出た光がコンタクトレンズの中を伝搬して、ホログラムを照らしています」
【映像】取材スタッフが見た“雪マーク” 赤い光に照らされている(2分ごろ~)
高木教授によると、この技術を応用することで、コンタクトレンズを通して現実に映像を映し出すことが可能になるという。
「今は『AR』の文字を映しましたが、表示する文字はどんどん変えられます。目の動きに合わせて表示を出すためにはセンサーも組み込まなきゃいけないので、そこも今後開発しなければならないと思っています」
例えば、ナビゲーションや商品情報の表示など、スマートフォンを取り出して調べるようなことが、コンタクトレンズを通して視界に表示させられるかもしれない。
「将来的には、目の前にいる人の名前を出したり、あるいはその人が英語を話していたら日本語に変換して表示したりなど、そういったこともできると思います。これだけで終わってしまうと、今のARの延長線上でしかないので、それを越えていきたいですね。例えば、パワードスーツといった身体を強化する服と同じようなイメージで人間の視力を強化するなど、そういったところに使えたら面白いかなと思っています」
高木教授によると、実用化には「既存のコンタクトレンズと同じ程度の薄さにする」「酸素を通す」「“表示デバイス”などを動かすエネルギー(電池)の所在をどうするか」といった“3つの課題”があるといい、今後もさらなる開発が必要だとしている。
■『WIRED』日本版編集長・松島倫明氏、SFの世界は「本当に手が届くところにきている」
研究が進むAR技術に『WIRED』日本版編集長・松島倫明氏は「これからの10年はメガネを通してモノと情報を重ねて見る時代になるだろう」と述べる。
「今年はAppleやFacebookのようなテックジャイアントが市場に“ARグラス”を投入してくるのではないかと言われている。これまでの約10年、僕たちが小さいスマートフォンの画面を通して見ていたものが、これからの10年はメガネを通して現実と情報を重ねて見ていくような、そういう時代になる」(以下、松島倫明氏)
また、高木教授が研究している技術に松島倫明氏は「今後が楽しみ」と期待。「日本のコンタクトレンズメーカーのメニコンが、スマートコンタクトレンズを開発するアメリカのMojo Visionと共同開発する取り組みも始まっている。VRゴーグルでも同様に焦点のイノベーションが起きてきたように、高木教授のコンタクト型ARの研究がブレイクスルーとなれば素晴らしい」と見解を語った。
「ちょうど『WIRED』日本版の最新号でも『都市の未来とネイバーフッド』といったテーマでARが普及した都市の姿を紹介したばかりだ。ARやVRなどの技術を開発する企業『MESON』の梶谷健人さんが、今後は『都市がソフトウェア化していく』と言っていて、情報のレイヤーが重なることで『街のテスラ化』が起こると予測している。コンタクトレンズ型ARなどのアイウェアを人間がつけて、街に出ていくとどうなるか。自分が買おうと思っていたものや、六本木で誰といつ会って何を話したかなど、必要な情報をコンタクトレンズが教えてくれるような世界になるかもしれない。SFの世界と思われるものは、本当に手が届くところにきている」
(ABEMA『ABEMAヒルズ』より)
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