ベテラン棋士もうっかり「コンピューターと同一化してしまいました」藤井聡太王位・棋聖、正確無比の指し手が呼んだ三冠挑戦の権利
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 藤井聡太王位・棋聖(18)の将棋を大盤で解説していたベテラン棋士・中村修九段(58)が、こんなことを言った。「終盤に強い藤井さんなんで、まるで読んでますよって言わんばかりですね。あっ、角を引いたのはコンピューターさんなんですね。コンピューターと藤井さんを同一化してしまいました。失礼しました」。将棋ソフト(AI)が示していた最善手を、藤井王位・棋聖が指したと勘違いしてのことだ。ところが、そう話し終えた数秒後、本当に指した。「指し手が似ているんでね。あらららら。コンピューターのように指しますね」。笑うしかなかった。ベテラン棋士が勘違いするほどに、将棋ソフトらしい一手は、藤井王位・棋聖の三冠挑戦を手繰り寄せる、実に大きなものだった。

【動画】藤井王位・棋聖が挑戦権を獲得した一局

 中村九段が解説をしたのは、6月26日に行われた叡王戦挑戦者決定戦。対戦相手は、タイトル経験や名人挑戦の経験もある斎藤慎太郎八段(28)だった。序中盤は斎藤八段のペースで進み、藤井王位・棋聖はやや押され気味。それでもなんとか形勢を好転させようと粘っていた中、中継していたABEMAの「SHOGI AI」では、最善手に△4四角という手が示されていた。

 2六の地点にいた角を引きつけて攻防に活用する手。ここから角交換に進んだ後、持ち駒にした角を4六の地点に打ち込めたことを、対局後の藤井王位・棋聖も対局のポイントに挙げていたほどだ。このあたりから形勢もゆらぎ始め、藤井王位・棋聖が終盤に向けて逆転をしていく。それだけ大きなポイントだった。中村九段が思わず「同一化」してしまったことに、視聴者からは「AIかよw」「コンピューターだった」「藤井コンピュー太」といったコメントが多数寄せられたが、実際に指された瞬間は驚きの声が殺到することとなった。

 昨年は「AI超え」というワードでも話題になったが、恐ろしいのはむしろ「AI超え」ではなく勝負どころで将棋ソフトが示す最善手を当然のように繰り返すことだ。ソフトが正解のように示したとて、プロでも「これは人間に指せない」というものは多い。ただ藤井王位・棋聖は、それを指す。当然、将棋ソフトと同じくその先の展開が把握できていなければ指せるはずもない。だからこそ指した時には、そこから最善手ラッシュが続くことになる。相手も最善手で対応できればよいが、次善手、もしくは3番手でも指そうものなら、あっという間に差が広がっていく。さっきまで互角だったのに、一気に形勢が傾く時によく見られる光景だ。

 天才棋士とて、初手から最後まで将棋ソフトが示す手をずっと指しているわけではない。ただ、ここぞという場面になった時、その一致率は異常に高まるように見える。それは人らしく指す時と、将棋ソフトらしく指す時を使い分けていると思わせるほどだ。斎藤八段を下し、豊島将之叡王(竜王、31)への挑戦権を獲得した藤井王位・棋聖。棋聖戦、王位戦と合わせて3つのタイトル戦を並行して行うことになったが、この「AIモード」を要所で発揮してきた時、タイトルを掴む握力がぐっと高まる。

(ABEMA/将棋チャンネルより)

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