寧仁太・アリのセミファイナル出場は、抜擢と言ってよかった。ウェルター級マッチ、赤コーナーは同級の元チャンピオンである山際和希だ。
対するアリはキャリアわずか5戦目。ここまでの4戦は全勝、かつすべてKOというパーフェクト・レコードを持つ。抜擢されたアリが元王者をも乗り越えてしまうのか、それとも山際が新鋭にトップの厳しさを教え込むのか。はっきりとしたテーマのある試合だ。
山際は蹴りを主体に、大崩れしない堅実な闘いで結果を残してきた選手。“勝ち職人”という異名もある。勢いだけで勝てる相手ではないのだが、アリはそんな相手と堂々たる勝負を展開した。
右の蹴りを軸にパンチも効果的。遠い間合いから放つ攻撃が山際を苦しめた。山際は何度か蹴りをキャッチ。これは反則なのだが、それだけアリの蹴りが厄介だったということだろう。
最終ラウンドも攻撃をまとめて判定は3-0。KOを逃したのは、山際のうまさによるものだったと試合後のアリは振り返った。とはいえフルラウンド闘ってジャッジ2者が2ポイント差をつけている。勢いやラッキーではなく、実力で勝ったと見ていい。
「KOしないと物足りないというか、試合をした気がしないというか」
そう語ったアリ。ともあれデビュー5連勝、しかも元チャンピオンに勝つという勲章も得た。そろそろタイトルマッチも見えてくるだろう。
「どうやったらチャンピオンになれるのか、毎日考えて練習や生活をしていきたいです」
父がガーナ人、母が日本人。少年時代はサッカーに打ち込み、ガーナにサッカー留学していた。そこまで熱中したサッカーで成功できなかったからこそ、格闘技では結果を残したい。身体能力、KOを量産してきた爆発力に加え、この山際戦ではトップ選手と闘い経験値も得た。KrushでもK-1でも、これからさらに要注目の大器だ。
文・橋本宗洋
写真/K-1