やはり持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算という超早指しは、プロであっても悪戦苦闘の局地戦だった。プロ将棋界唯一の団体戦「第4回ABEMAトーナメント」で、ドラフト指名から漏れた棋士によるエントリートーナメントを勝ち抜き大会出場を決めた小林裕士七段(44)が、チーム入りを決めた5連勝のうち2回、相手の時間切れで勝利したことを明かした。本大会では「切れ負け」は一度も起きていないが、やはり対局数が増えるほどにハプニングも起きていたようだ。
小林七段は同じくエントリートーナメントを勝ち抜いた梶浦宏孝七段(25)、藤森哲也五段(34)とともに、エントリーチームを結成。タイトルホルダーらがリーダーとなって結成された14チームに対して、下剋上を狙って本大会に殴り込みをかける。3人とも負けたら終わりのトーナメントで5連勝しチーム入りを決めており、超早指しの適性は証明済みだ。
普段の対局から早見え早指しで知られる小林七段だが、険しいエントリートーナメントについての印象を聞かれると「時間が短すぎる。でも私には合ってるのかも」と、シンプルながらわかりやすいコメント。さらに自身が参加した関西予選について「2回、相手の方に時間切れしてもらった。そういう意味でラッキーも続いた」と語った。
1手指すごとに5秒増えるとはいえ、最終盤には残り1、2秒というぎりぎりの指し手が連続することもあるのが、このルールの怖さ。昨年の本大会では、ストップウォッチの押しミスで、残り1秒・あわや切れ負けという事態も起きていた。相手の「切れ負け」を2度経験した小林七段は「1つはものすごく必勝形、もう1つは(形勢が)ちょっと悪いんじゃないかなと。切れた瞬間、相手の方が大声で『負けました!』と、ちょっと怒り気味だったので、こっちも『すいませんでした』と謝っておきました」と苦笑いした。切れ負け自体、小林七段に何か責任があるわけではないが、早指し過ぎて相手が苦しんだことに配慮しての言葉だったかもしれない。
チェスクロックは残り5秒となると「ピッ、ピッ」と時間を刻むが、3人ともエントリートーナメントではこの音を聞かないように務めていたようで、本大会に向けてもいかに切れ負けの恐怖と遠いところで戦えるかがポイントだと、口を揃えていた。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)