「在庫があるのに頭を下げて予約を取り消す市長なんて、どこにもいない。実質的に“在庫”は無い」突然のワクチン供給量減少に憤る兵庫県明石市の泉房穂市長
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 自治体が進めてきたワクチン集団接種。しかしここに来て供給が足りず、2回目を打つ時期が確定できないといった事態を避けるため、新規の予約受付などの中止、さらには1回目の予約キャンセルなどが相次いでいるという。

・【映像】ワクチン不足なぜ起こる?9月末の接種完了を掲げた明石市 泉房穂市長が苦言

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 6月2日に『ABEMA Prime』に出演した際、“9月中のワクチン接種完了”を宣言していた兵庫県明石市長の泉房穂市長も、6月30日の会見では「7月6日から国からの配送は希望数の47箱に対して22箱。25箱の不足で、3万回分が足りない状況」「いくら会場設営して医療関係者がスタンバイしていても、ワクチンが来ない以上は打てない」と説明、今月2日からは新規接種の予約を一時停止する事態に追い込まれている。

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 自治体での接種にはファイザー製のワクチンが使われており、年内の確保数は1億9400万回分で、このうち4日までに8825万回分が全国に配送済みだという。一方で医療従事者と高齢者、一般接種と合わせて接種回数は4日までに4781万回となっていることから、残りの約4000万回分はまだ全国の自治体が保管している計算になる。一体、何が起きているというのだろうか。

■全国の市長同士で“どうするよ?”と連絡を取り合った

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 5日の『ABEMA Prime』に生出演した泉市長によると、全国の自治体に対して、これまで希望通りの供給が行われてきたものの、7月6日以降の供給量は、全国平均で必要数の約半分、次々回は、3分の1以下との連絡が国からなされたのだという。

 「市民に対しては、“9月末までには”と広報紙で言った直後に“ごめんなさい”と言うことになった。今回は“本当に申し訳ございませんのトーン”だ。ただ現場を預かっている立場からすると、報道の多くに“違う”と思うことが多い。例えば“65歳以上の高齢者分はある”と言われるが、それはあるに決まっている。明石市も、高齢者の分は既に来ている。そうではなく、政府が“一般の方もどんどん打ってください、1日あたり130万回を目指そう”という話だったので、みんなで頑張って来たのに、という話だ。

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 6月末までは希望した分が全て来ていたし、だから7月6日からは一般の方への接種を一気に進め、9月末までに終わるというスケジュールを組んでいた。ところが6月15日に半分になるという連絡があり、びっくりした全国の市長同士で“どうするよ?”と連絡を取り合っていたが、実際に7月6日に来るべきワクチンが半分以下にされてしまい、さらにその次は希望量の3割とかになることが分かった。ハイスピードでやっていた他の自治体も、いきなり打てなくなってしまっている状況だ」。

■事実に反する批判だ。明石市はちゃんとVRSに入力してきた

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 一方、明石市のVRS(=ワクチン接種記録システム)への情報入力に不備があったのではないかとの見方もある。これに対し泉市長は「全く事実に反する批判だ。明石市はちゃんと入力してきた」と断言する。

 「ただし、神戸市もそうだが、人口が多い自治体の場合、接種券を配り、しっかりと予約を組んで打ち始めなければならず、その分だけスタートは遅くなる。しかし一度スタートすれば一気に進む。

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 明石市の場合も、個別接種は5月31日、集団接種は6月5日に本格スタートした。しかし14日、どうやら接種率が上位の自治体を“特別扱い”するらしいとの情報が漏れ伝わってきた。そして翌6月15日、全国に1万1000箱(1箱あたり1170回分)が割り振られるとの連絡を国からいただいた。このうち8000箱は住んでいる人の数で一律に割り振る“人口割”なので、接種率とは無関係だ。調整枠を除いた1000箱が、VRSに入力した接種率を元に調整して配分される分だ。しかし入力のためには開業医から予診票を回収するか、開業医に入力をしてもらわなければいけない。

 突然このルールにされた結果、人口が5000人、1万人といった自治体が満額回答を得る結果になってしまったということだ。だから明石市の場合、入力以前に接種が本格的に始まっていない時点(6月10日が基準日)の数字を元に、47箱という希望に対して、22箱(7月6日に供給)という数字がV-SYS(=ワクチン接種円滑化システム)にポンと出てくることになってしまった」。

■調整していただくスキームに入ってきている

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 一方、西村経済再生担当相は「河野大臣のもと、公平に配分・配送がなされている。特にVRSのデータに基づいて、接種が進んでいるところは優先して配分していこうということ」と説明。「(明石市は)非常にペースを上げて急速に接種を進められているので非常に評価しているところであるが、他方全国的にもペースが上がっているので、さらに接種が進めばそれに応じて供給がなされると理解している」として、明石市に対しては7月18日までに高齢者2回接種分を上回る量を供給すると述べている。

 番組に電話で出演した自民党の古川俊治参院議員も「我々はトータルで流通させた数と接種された数を計算している。VRS上のデータなので実際とは少し違いもあるとは思うが、明石市の場合、システム上の概算では、打った量が供給した量の半分以下になっている。半分以下しか使っていないということは、仮に全員が1回しか打っていないとしても足りる計算になるということだ」と説明する。

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 さらに「すでに1億回分が入ってきていて、9月末までにはモデルナと合わせて確実に国民の皆さん全員分のワクチンが確保できることにはなっているが、この先、少し輸入量が減ってくるので、今までと同じペースで入って来ることはなくなる。これはワクチンのメーカー次第ということもあり、直前になって知らせてくるということもあり、我々としては目処が立てられない。

 ただ、自治体の方には既に8000万回分が渡っているし、7月には2500万くらい来るのではという読みでやっているので、7月分も含めて1日120万回、フルスイングで150万回くらいまで行っても市中在庫が残る計算だ。ただ、その先は80万回くらいに調整していただくスキームに入ってきているということで国の方ではお願いをしている」。

■在庫があるのに頭を下げて予約を取り消す市長なんて、どこにもいない

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 こうした古川議員の説明に、泉市長は「それは違う」と反論する。

 「現場を預かっている立場としては、1回目を打った方が3週間後の同じ曜日に2回目を打てるよう責任を持って対応している。“在庫”というが、それは1回目に打った方の2回目の分だし、次に来るのが“7月下旬”としか聞かされていない。例えば7月6日に打った場合、2回目は7月27日になるが、そこまでに追加分が来るかどうかが分からなければ、怖くて6日には打てない。それは在庫とは言わない。在庫というのは、予約を取った方の1回目の分、1回目を打った方の2回目の分、これを除いた部分になるわけで、実質的にはほとんど無いというのが通常の理解だと思う」。

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 古川議員は「どのくらい供給し、どのくらい接種したかのVRSのデータについては、全て都道府県に知らせている。ファイザーは1箱で約1200回分になるが、当然、余りも出てくる。そこは調整いただき、自治体間で分けていただくようお願いもしている。また、3週間、つまり8月の供給までは自治体の皆さんが予定を組めるべく、7月以降は考えているので、少なくとも高齢者については7月中に打ち終われるはずだ」と説明。

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 しかし泉市長は「高齢者はもう終わっている。私が言ってもあまり信用されないのかもしれないが、神戸市も千葉市も大阪市も同様だ。在庫が残っているのに、市民に頭を下げて予約を取り消す市長なんて、どこにもいない。兵庫県自体にも、希望数1467箱に対して333箱しか入って来ない」と再反論。

 「明石市としては隣町の情報は見られないし、知っているのは国だけなので、そこは方針を決めて対応してもらえると助かる。今後は供給スケジュールを言っていただければ、それに合わせて調整していきたい。市民からすれば、国も県も市もない。だから市長としてはごめんなさいと言うしかないが、これ以上、市民に期待だけ持たせて二転三転するのは避けたい。少なくとも数と日付をちゃんと連絡いただきたい」と訴えた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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