コロナ禍は「自己責任ではない」 イラク人質事件の壮絶なバッシングと向き合い…今井紀明さん語る若者の窮状
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 「10代の孤立を解決するということで、5000人ほどの不登校・中退、経済的に厳しい10代の子たちが登録している、『ユキサキチャット』という進学就職のLINE相談を事業としてやっています」

 10代の「行き先」を一緒に考える相談窓口を開設している、今井紀明さん。自身が10代だった頃の17年前、世間の注目を集めた事件の真っただ中にいた。

【映像】今井紀明さん当時10代、イラクから帰国後の会見

 「僕の場合はナイフをここ(首)にやられて、あとは例えば銃をジャラジャラとしていたり、髪を引っ張られたり、足を蹴られたりするんですよ。ものすごく恐怖なんですよ」

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 イラク戦争終結後の2004年、日本人3人が武装グループに拘束された人質事件。高校卒業後、現地の実情を知るために今井さんはイラクを訪れていた。

 当時の福田官房長官は「行かれる方が状況を承知した上で、自分の責任で行かれるということかもしれないが、それにしてもいったんこういうことが起これば、どれだけの人に迷惑がかかるか考えていただきたい」とコメント。「危ない場所に行くのは自己責任だ」。帰国後に待ち受けていたのは、壮絶なバッシングだった。

 「当時は『自己責任』という言葉が、国の様々な方から言われた。国民、政府も含めてだと思うんですけれども、その論調が非常に大きかった。誤報も多かったと思うんですけれども、それで僕は殴られたりだとか、バッシングや罵声とかを路上であげられたりだとかもあったので、そういったことで引きこもった時期というのが長かったんです。もちろん反省は当然あるんですけれども、そこまで言われるかと。『死ね』まで言われるってなかなかないじゃないですか」

 インターネット上では誹謗中傷が書き込まれ、街の中で直接罵声を浴びせられることもあったという。

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 「批判の手紙とかいろいろいただいたんですけれども、そういう方々に全部返していったり、文通していったりとかもしてきました。あと、批判してきた方々にお会いしたりだとか、メールも全部送り返して会っていったりとかもあったので。そういったことが僕にとってはいい経験だったなと、今では思うんですけれども。ただ、自分が生きていく上では何度も死を意識するようなことというか、ある種絶望の中にいると本当に『自分の存在を消したい』と思うことは多々あったんですよね。僕的には書いていただいた方々の心情も理解したかったので、5万5000字あったんですけれどもすべてタイピングして、まずは覚えて、住所があるものはすべて返信していったというのがあります」

 事件後数年にわたり、対人恐怖症、パニック障害の症状に悩まされ、引きこもりのような生活を送る。そうした経験から人生の岐路に立つ時期に苦しむ若者を助けようと、その後今井さんが立ち上げたのが、定時制・通信制高校に通う高校生をサポートするNPO法人だった。2018年からはLINEを活用した相談窓口を開設し、若者からの悩みを聞いている。

 「去年の4月が700人くらいの登録者だったのが、今5000人超えていて。2年間やっていて700人だったものが、1年間ちょっとで7倍8倍になってきているので、非常に厳しい相談が多いというのが実情かなと思います。(相談は)3~4割ほどが食糧支援や現金給付の相談が多くて。もともとは進学就職の相談に特化していたんですけれども、去年の1回目の緊急事態宣言から『所持金がない』と。一人暮らしをしていて親に頼らずに頑張って働いていた高校生とか、中卒とかの子たちが飲食店でのアルバイトが多かったので、食べていけないという状況が出てきていて。それで食料支援とか現金給付を始めていたんですけれども、やっぱり3回目の緊急事態宣言でより深刻になってきているということですね」

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 現金給付のほか、去年1年間で5000食の食糧支援を行ったが、今年に入ってより事態は悪化していると感じているという。

 イラクでの人質事件から「自己責任」という言葉と常に向き合ってきた今井さんが感じることとは。

 「生活に不安があったりした時に、なかなか周りに相談ができないと思うんですけれども。今のコロナの状況下はあなたのせいじゃないというか、あなただけで切り抜けられる状況ではないと思うんですよね。だから自己責任じゃないんです。本当に不登校とか中退した状況で相談したいというのだったらでもいいですし、食べ物に困っているだとか、お金がない、コロナの状況で困っているという状況であれば、我々もサポートしていければなと思っているので。ユキサキチャットで検索していただけたらすぐに相談に乗りますので、ぜひ相談してみてください」

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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