去年の自民党総裁選に出馬した岸田前政調会長が率いる宏池会が8日、1300人規模の政治資金パーティーを開催した。二階幹事長や公明党の山口代表の姿も見られる中、「日本はアフターコロナ時代、再起動し、再び心強く前進することができると信じている」と挨拶する岸田氏の映像を見ると、壇上の参加者はマスク未着用の人ばかり。
そして今週に入ると、岸田派の議員秘書ら6人のコロナ感染が報じられ、岸田氏自身も濃厚接触者になったことが判明。パーティー参加との因果関係は不明であるものの、同日、別のホテルでは水月会(石破派)のパーティーが開催されていたこともあいまって、コロナ禍でもパーティーは必要な催しなのか?との疑問の声が上がっている。
衆議院議員の政策秘書などを歴任、現在は国会議員秘書専門の人材会社「InStyle」を経営する政治家コンサルト・通称“勝たせ屋”の鈴鹿久美子氏は「みんなで拳を振り上げて“頑張ろう!”とシュプレヒコールを上げるのは、政治資金パーティーや選挙の時にも必ずやるのが決まりなので、やらないと気持ち悪い(笑)。ただ、全員がやっていたわけではないのを見て、そうだよね、コロナだもんね、と思った」と話す。
「今年は必ず衆議院議員選挙が行われる年なので、お金を集めるのが必須。岸田派の秘書から言われたのは、“うちは緊急事態宣言前に滑り込みでセーフだったのよ。良かった”ということ。逆に言うと、清和会(細田派)も平成研(竹下派)など、それで開催がダメになった派閥もいっぱいある。地元で開くパーティーと東京・永田町近辺で開くパーティーがあるが、大きな政党の大きな派閥の場合、超一流ホテルの大きな部屋で、大きな演台があってお料理がずらっと並んで、総理や大臣、有名な人たちも来る。そして、それを見にバスで来る。宏池会くらいの派閥になると、毎回4~5000人が会場に来ていたはずだ。
それが今回は1300人だったので、縮小してやったというおつもりなんだろう。ただ、デリケートな議員の場合、人が集まる時には目の前に大きなプラスチックのパネルを立てたりしているが、岸田派の会場には、それもなかった。万が一感染者が出た時のエクスキューズになるという言い方は悪いが、そういう時のためにもマスクはしておいた方がいいのに、なぜそれもしなかったのかと思う」。
なぜそれほどまでに資金が必要なのだろうか?鈴鹿氏は次のように説明する。
「お金持ちばかりが当選して政治が偏らないよう、公職選挙法を作ってポスターやビラの枚数を定め、金のかからない選挙になるようにした。政党から公認料として1500万円程度のお金が配られるので、事前の運動も含めて期間が短いこと。そして選挙区が小さければそれでも間に合うかもしれない。しかし参議院のように選挙区が広くなれば、それでは足りない。たとえば逮捕・起訴された河井案里さん事件でも“1億5000万円”という金額が報じられた。そんなにかかるのかと思われるかもしれないが、選挙区が広い所であれば、そのくらいのお金はかかる。
もっと言えば、その“前段階”もお金がかかる。知名度のある方は別だが、そうでなければ広告を出したり印刷物のポスティングをしたり、色々な所に出かけていって話をしたりして、支持者を集めて、名簿を作らなければならない。だからお金のない人が選挙に出るためには、まずお金を集めるのが仕事になる。無所属で、選挙費用をかけず、言いたいことを言えればいいという広報もいるかもしれない。しかし、お金を集められない人は、票も集められないということだ。
もちろん、将来はオンラインでの資金パーティーというのが出てくる可能性はある。ただ、お料理を出すとか、本を付けるとか、何かしらの対価性が無いと寄付になり、扱いが変わってきてしまう。そういうデリケートな問題もある。さらに言えば、高齢の方はSNSを使わないし、“パー券買ってよ”と永田町や地元の秘書が歩いて回る。一方、若い方は投票に行かない。投票行動につながらないことはやっても無駄だということにもなる。そうやって地域でファンを作り、“お父さん、今日あの人に会ったのよ。すごくいい人だったわ”と宣伝してもらう、そういうファンを増やさなければいけない」。
選挙活動を手伝った経験もあるという慶應義塾大学の若新雄純特任准教授は「政治家の活動は、選挙活動と政治活動に分けられる。政治活動というのは、選挙期間以外の時に、認知を高めるための活動だ。それが無ければ、2週間の選挙期間だけでは、無名の新人は現職や世襲の候補に勝てるわけがない。逆に言えば、お金をかけない選挙にしてしまえば、結局は地盤のある候補や世襲の候補ばかりが通ることになる。この難しさがある。
そして選挙資金パーティに関して言えば、本当に支援したい人なら、ただ寄付すればいい。しかし実際はそうではない。ホストが“客に金だけ置いてって”と言うと“結局、私は金だけ?”となるように、支持者は政治家にちゃんと来て欲しいし、一緒に写真を撮って欲しい。支持者が“こういう時期だから、手紙1枚くれたらいい。Zoomで会えればいい”と言えばいいのに、“一緒に座って飲んでくれよ”という構造があるということだ。とはいえ、そういう古いお金の集め方だって変えることはできる。そして、それができるのが与党のはずだ」と指摘した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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