誰もが目にしたことがある?“毛穴どアップ画像”などのコンプレックス広告がサイトに表示され続ける背景
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 いわゆる“嘘・おおげさ・紛らわしい”で消費者を誤解させる“誇大広告”。東京都によれば、「悪質事業者通報サイト」への誇大広告に関する通報件数は、前年度と比べ28%ほど増加しているといい、ネット上には「これを塗ればシミがみるみる剥がれる」「これ1粒でお腹をキレイにします」というような広告や、芸能人の写真を勝手に使った広告、ステマギリギリの手法を使った広告が度々問題になってきた。

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 インターネット上の取引トラブルに詳しい深澤諭弁護士によると、真実より優良な商品・サービスだと誤認させる表示、あるいは真実はそうではないのに有利な取引条件だと誤解させる行為は主に不当景品類及び不当表示防止法(景表法)で禁止されており、“個人の感想”といった記述があっても違法になる場合もあるのだという。

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 広告ができるまでには、広告主から発注を受けた業者が制作、それが代理店などを経由してサイトやSNSなどに配信・掲載されることになる。このうち、ニュースサイトなどに表示される広告を配信しているpopIn株式会社取締役の西舘亜希子氏「やはりネット広告は参入障壁が非常に低く、ルールを知らない人たちや配信事業者が本来の目的である“情報を届ける”ということを忘れ、ギリギリのところで“いいよね”と進めてしまっているのだと思う。ネット広告を“打ち出の小槌にしてしまえ”と思っているような、モラルの低下があるのではないか考えている」と話す。

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 「私たちの事業の中でも、おそらく皆さんも一度は目にしたことがあると思うが、例えば毛穴のボツボツとなっている小鼻がどアップになった、集合体が怖いと思う方には恐怖を与えるような写真とともに“汚れがごっそり取れる”というコピーがついたような広告が配信されていた。一方で、実績の中では、そういった広告が見た方のコンプレックスを刺激しているというデータも出ていたことも事実だ。ネットは自分の目の前で見るものなので、どうしても人に言えないコンプレックスや悩みと向き合う時間も出てきてしまう。そういう中で、“なんとか解消させたい”とすがってしまう人たちを引き寄せる、付け込む、ということがあるのだと思う」。

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 作詞家の児玉雨子氏は「毛穴の画像もそうだし、便秘を解消するとか、絶対そんなわけがないだろうといような言葉が、すごくグロテスクなビジュアルと一緒に出てくる。私は不快だが、コンプレックスを刺激する部分もあるのだろうし、過激なほどいいのだろう」とコメント。

 そんな中でpopInでは今年5月、葛藤を抱えながらも誇大広告配信停止の決断を下した。

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 「倫理観としていけないと考え、やめることを決めた。ただ、世界を牛耳っているような大手のプラットフォーマーさんも配信しているし、横を見れば“あそこの会社も出しているよね”という状態。自社だけが頑張って世の中のためにいいことをしたとしても、業績が下がってしまい、社員がご飯を食べられなくなるかもしれない。何が正義なんだろうという思いもあった。実際、一番下がった時期で、売上は5割ぐらいになった。

 それでも倫理感の高い企業やコンプライアンス意識の高い代理店から私たちにお声掛けをいただいて“応援するよ”“トライアルでちょっとやってみましょうか”“こういう志があるのならばテクノロジーで解決しましょう”というありがたいお言葉、お力添えを頂いて、2割程度の低下というところまで回復しているが、まだまだ頑張りが足りないというところだ。同じように、倫理感と収益性とのバランスの中で悩んでいる人たちも多いのではないかと思うし、まさしく二極化していくのではないか」。

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 テレビ朝日平石直之アナウンサーは「例えば番組で整形手術のトラブルや癌のことについて取り上げる時に、ネットでたくさん調べる。そうすると、関連する広告ばかりが出てくるようになってしまう」、「慶應義塾大学特任准教授でプロデューサーの若新雄純氏は「若手起業家がベンチャーを立ち上げて、人がいっぱい集まるサイトを作り、そこに広告を載せるというビジネスが流行った。そして早く収益を上げろと言う投資家たちを満足させるために、そういう広告をバンバン載せて“これだけ売上が上がった”と。そうやって成長させたサイトや会社を売却したという若者がチヤホヤされ、市場が荒れていったと思う。ただ、これらが日本特有の状況なのか、海外はどうなのだろうか」と疑問を投げかける。

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西舘氏は「技術的な話にもなるが、個人情報保護の問題として欧州ではGDPR、ターゲティング広告の廃止という取り組みも始まっているので、徐々に追跡型のものは減っていくのではないかと考えている。また、アメリカでは『Pinterest』が“ボディポジティブ”のような形のダイエット商材などを廃止する方針にするなど、コンプレックス広告については日本よりも進んでいる。また、アジアの一部地域では過激な広告が許されている状況があるが、例えばタイでは“少し弱めてください”という声も増えてきた」との見方を示した。

 さらに“誇大広告包囲網”として、医薬品や化粧品の効能や効果の表現に関する規制や罰則を強化した改正薬機法が来月1日に施行される。西舘氏は「改正前は広告主が罰則の対象だったが、改正後は広告に携わった全ての人たちが罰則の対象になる可能性がある。この番組を見ていただいている方の中で広告配信事業に携わっている方やメディアの方は、他人ごとではなく本当に自分に関わってくる変わってくるルールだと捉えていただければ」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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