家畜の屠殺にタブー視も…魚の解体ショーはOK? 日本のアニマルウェルフェアは?
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 今月18日、フランスのジュリアン・ドノルマンディー農業・食料大臣は養鶏場で行われている雄のひよこの殺処分を「2022年から禁止する」と発表した。

【映像】“雄ひよこ”は粉砕機で殺処分? 鶏の分類(1分20秒ごろ~)

 AFP通信によると、ドノルマンディー氏は養鶏業者にふ化前のひよこの性別がわかる機械の設置を求めていて、必要な設備を購入するために、1000万ユーロ(日本円で約13億円)の助成金を支給するとしている。

 養鶏場で飼育される鶏は、大きく分けて二種類が存在する。卵を取るための鶏と鶏肉として利用するための鶏だ。

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 卵を取るための鶏の場合、雄は卵を産まないため不要になる。よって、雄のひよこは生まれてすぐに殺処分されてしまう。こうした殺処分は動物愛護の観点から長年問題視されている。

 ドイツでも今年1月に「2022年から雄のひよこの殺処分を禁止する」と発表。スイスも去年、ひよこを生きたまま粉砕機にかける行為を禁止にした。その一方、AFP通信によると、現在もガスによる殺処分は認めているという。

 各国の動きについて、消費者教育が専門の日本女子大学・細川幸一教授は「生産プロセスに人間が注目するようになってきた」と分析する。

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「人間が勝手に産ませたのに『いらないから』と、生まれてきたひよこをすぐ処分してしまう。そこに批判があった。消費者の責任、消費の裏側にある生産プロセスに人間が思いを向けるようになった。問題が大きくなって、政治的な力を持つようになってきたから、こういう動きになったのだと思う」

 こうした中で、細川教授は「アニマルウェルフェアの考え方が必要だ」と話す。アニマルウェルフェアは、動物らしい生き方ができるよう配慮し、本来の生態・欲求・行動を尊重した飼育方法の指針だ。

「いくら家畜であっても、苦しみから逃れる自由、あるいは動物らしく行動ができる自由、そういったものを保証していく。今回の鶏の話では、狭い身動きできない狭いケージに入れられて、そこでひたすら卵を産むだけ。そういった身動きできない劣悪な環境から解放して、より動物らしい生き方ができるような環境で育てましょうといった考え方だ」

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 一方で日本では、動物が快適に過ごせる十分な飼育スペースの確保ができない、また、生産コストの増加によって食品が値上げせざるを得ない状況になるなど、課題も多く存在する。しかし、細川教授は「事業者だけの問題ではない」と訴える。

「値上げしたら消費者が買わなくなるので、事業者はコスト削減のために狭いスペースで育てている。当然、広いところで育てるとコストがかかる。この問題は事業者だけを批判すればいいといった話ではない。『値上げしたけれど、環境にやさしい育て方をしていますよ』と、それを理解して買う消費者がいなければ、アニマルウェルフェアに基づいた育て方をしても売れない。事業者と消費者、両方の理解が必要だ」

 その上で、細川教授は「ひとりひとりがこの問題に目を向けて、どのように行動していくかが重要だ」と話す。

「エシカル消費といった言葉が最近使われ始めているが、自分が買い手としてメリットがある、利益があるだけではなく、自分の消費行動が生産プロセスでどのような影響を与えているのか。卵の背景にある真実を通じて、まさにこのニュースは『考えて消費しましょう』と訴えかけている。日頃食べる食材の背景として、どのようなものが犠牲になっているか、考えてもらいたい」

■ 日本はアニマルウェルフェア後進国? 生産プロセスが注目されない背景

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 このニュースに『ABEMAヒルズ』に出演した明星大学心理学部准教授で臨床心理士の藤井靖氏は「アニマルウェルフェアに関して、日本はかなり遅れている」と言及。その上で「動物愛護、動物保護の概念やその理解がふわっとしていて『動物を大事にする=ペットを可愛がる』といった意味に捉えがちだ」と述べる。

「日本では、マグロの解体ショーをしたり、生きたままの魚を活き造りとして提供する一方で、家畜の屠殺はタブー視されている。しかしタブー視したところで当然その過程が無くなるわけではなく、現場は密室化していき、さまざまな立場の視点が入りにくくなる。その結果、家畜が快適な過ごす上での配慮があまりされておらず、アニマルウェルフェアに関して、日本は諸外国と比べてかなり遅れをとっている」

 また、藤井氏は日本でアニマルウェルフェアへの理解が遅れている背景として、輸入と輸出のバランスに注目。「日本は海外からの外圧に弱いが、アニマルウェルフェアに関してはあまり圧がない。これは、輸入量に比べて輸出量が非常に微量であって、牛や豚、鶏などがどのような育て方をされているのか、海外の消費者からの目が入りにくいことが関係しているのではないか」と指摘した。

「これは単純に動物だけの話ではない。狭いスペースに家畜がたくさん入れられて、悪環境に起因する病気の予防や治療のために抗生物質を使う。すると、耐性菌が増えるなど最終的にそれを食べる人間に影響が出てきうることも長く指摘されている」

「今後は、消費者の意識を変えていくべきではないか。例えば、卵は“物価の優等生”といわれ、求めやすい価格が維持されているが、そこに疑問を持つことも必要ではないか。背景には、例えば飼料の価格が上昇したとしても、販売価格は変えられにくいということがあって、そのしわ寄せが生産する環境の調整にきているとも考えられる。狭いバタリーケージではなく『平飼いで飼育された鶏が産んだ卵』は、より食の安全・安心にもつながり、アニマルウェルフェアの観点からも付加価値がついているという認識を持たれるといいし、ビジネスとしても成立していって欲しい」 (『ABEMAヒルズ』より)

【映像】フランス “雄ひよこ”殺処分を禁止へ
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