「あなたを応援している人の方が圧倒的に多いんだよと言いたい」オリンピック出場選手への相次ぐ誹謗中傷に、経験者のアスリートが訴え
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 開幕から1週間を迎えた東京オリンピック。ここに来て、選手たちへの“誹謗中傷”が問題視されている。卓球の水谷隼選手と伊藤美誠選手、体操の橋本大輝選手への国内からの誹謗中傷は大きく報じられており、体操の村上茉愛選手は29日、競技後に「嫌なコメントを見てしまって…」と涙ながらに訴えた。

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 今週、警視庁は選手からの被害届が出れば対応する方針を示しており、加藤官房長官は会見で「ユーザーのひとりひとりが他人を傷付けるような書き込みはしない。そうしていただくことに留意していくことが大事だ」、丸川五輪相も「他人を傷付けるような書き込みはしないということご自身の旨として、活躍を暖かく見守ってくれることを願っている」と呼びかけている。

■「トータルで見たら、あなたを応援している人の方が圧倒的に多いんだよと言いたい」

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 29日の『ABEMA Prime』に出演した北京五輪400mハードル強化選手でスプリントコーチの秋本真吾さんも、SNSでの激しい誹謗中傷を経験した一人だ。

 「僕の場合、競技者としてはオリンピックに出られなかった、夢が叶えられなかった人間だったので、アスリートや子どもたちに走り方を教える立ち位置を次のキャリアにした。しかしそういうブランディングや夢の作り方をしていると、“オリンピックにも出てないお前が何やってんだ”という声に変わった。Twitterのアカウント名を僕の誹謗中傷用に変え、“死ね”“お前が何やってんだよ”みたいな言葉を毎日何十件と投げつけられた。当時はそういうことに対する免疫もなかったのですごく苦しんだ。夜寝るときにはアカウントに鍵をかけて寝て、朝起きたら解除するみたいなこともした。それでも日中になるとそういうアカウントにフォローされる。ひたすらブロックした結果、ブロックリストには300以上のアカウントが残った。

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 僕が抱えているクライアントのプロサッカー選手やプロ野球選手、あるいは周りのアスリートには、そういうものを力に変えている選手が多く、“そういうふうに言われるのは有名になってきた証拠じゃないか。よかったね”という選手もいる。それは普段から試合に負けるとブーイングを受けたりするので、選手自身も耐性がついているような気がする。しかし、やはり僕がやっていた陸上、あるいは水泳などの個人スポーツの場合、スタンドからヤジが飛んでくることはありえない。同じような感覚を全てのアスリートに持ってくださいと言うつもりはないし、むしろ競技に影響が出てしまう選手もいるはずだ。しかもオリンピックというのは4年に一度の、多くの国民の注目を集める場。失敗した時に受けるダメージというのは相当大きいと思う。

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 “オリンピック選手には税金が投入されているので、言われるのは仕方ないんじゃないか”という意見もあるだろうが、国や国民のために頑張ろうというよりは、まずは自分自身のために頑張って欲しいなと思うし、インタビューで“応援してくれた人に申し訳ない”というのもやめてほしい。支えてくれた人たちのために全力を尽くすことも大事だが、まずは自分の夢や目標、ベストパフォーマンスのために一生懸命やってほしい。そして、アンチのネガティブな意見というのは、10件、100件くらいでも1万件くらいに感じてしまうもの。でもトータルで見たら、あなたを応援している人の数の方が圧倒的に多いんだよと言いたい」。

■「“確かにそうだよね”と受け止めるようなものが良いのではないか」

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 “批評”“批判”、あるいは“叱咤激励”のつもりだというユーザーもいるのかもしれない。これについて秋本さんは次のような見方を示す。

 「まず、やはりアスリートに対して“競技に向かって一直線に頑張っているし、毎日練習してるじゃないか、だから結果が出て当然、むしろ結果が出ない方がおかしい”というようなイメージを抱いている方も多いのではないだろうか。だからこそ“優勝候補”、“金メダル候補”といわれる選手が敗退したり、予選落ちしたりすると、“何やってんだ”ということになる。しかし、過去に起きたことや、競技と全く関係ないことをSNSで発信していたことなどと紐付けて批判するのはナンセンスではないか。

 もちろん、“叱咤激励のつもりだ”という意見もあるだろう。例えばプレーをサボってしまったことが失点につながってしまったとか、怒りとともに道具を壊してしまったとか、そういうことは選手自身が一番理解しているし、一番後悔もしているはずだ。そういうことについての指摘であれば、“確かにそうだ”と必ず反省することもあるかもしれない。線引きは難しいが、叱咤激励であれば、競技に対するマインド、思考など、別の軸を見極めるということも大切だと思う。

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 僕の場合、“批判”と“非難”を常に分けて考えるようにしている。辞書によれば、“批判”は次の改善点を出していること、“非難”はただ思ったことを言うこと。そこのバランスだと思う。“秋本、ハードルぶつけまくって予選落ちしてんじゃん”というコメントは事実だし、僕自身も、“ハードルを越えられたら、確かに予選通ってたかもしれないよな”、というふうに思うだろう。しかしこれが“秋本、ハードル下手すぎだ。死ね”というのはまさに“非難”だと思う。“確かにそうだよね。じゃあそれを僕なりに改善してやっていけばいいか”と受け止めるようなものが良いのではないか。

 僕自身も、オリンピックのサッカーの試合を観ていて、“いや、明らかにそのプレーだめでしょ”と思ってツイートする一歩手前までいった。でも、一度寝かせることにした。翌朝にそのツイートの下書きを見た時に“あ、これ必要ないな”って思えるものもあるはずだ」。

■eスポーツチーム「αD」代表の石田拳智氏「15~18歳の選手に誹謗中傷が寄せられることも」

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 Yahoo!ニュースのコメント欄などで厳しい意見に晒されていると話すeスポーツチーム「αD」代表の石田拳智氏は「例えば商店街で気に食わないものを見かけたからといって、いちいち“気に食わない”とは言って歩かないだろう。なのにネットではわざわざ言っていく。僕はeスポーツチームの代表をさせてもらっているが、選手たちは15~18歳と若く、活躍の場がリアルではなくてネットなので、ちょっとしたことでものすごい量の批判が来る。選手たちもメンタルが強いフリはしているし、実際に強い選手もいるが、だからといって誹謗中傷をしていいわけがない」

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 フリーアナウンサーの柴田阿弥は「“有名税だ、人よりそれでお金を稼いでいる、だから我慢しろ”というような意見もあるが、本当におかしな話だと思う。SNSとオリンピックは、2012年のロンドン大会から関係性が強くなってきた。日本以上に熱狂する国・国民もあると思うし、プラットフォーム側も責任を持って対応すべきだと思う。例えばアメリカ大統領選のときのように、攻撃的な文言には警告文や注釈を出すことはできると思うし、そうすれば、少なくとも“死ね”とか“バカ”にように、批評とはいえない言葉は弾けるのではないか」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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