東京オリンピックで来日したベラルーシ代表の選手が、命の危険から亡命を希望した。
ANNがベラルーシの陸上関係者から入手した音声では、代表コーチらが脅迫めいた言葉を交えながらクリスチナ・チマノウスカヤ選手(24歳)に帰国を求めていた。
【音声の内容】
チマノウスカヤ選手「このまま帰国したら、私に競技を続ける意欲が残ると思う?」
コーチ「残るかもよ」
チマノウスカヤ選手「もはや200メートル走に出ても何の得にもならない」
コーチ「国民は『(指示に従えば)生きられたのに愚かだった』と言うよ。誰に何を証明したい?」
チマノウスカヤ選手「誰にも何も証明したくない。私はただ走りたいだけ」
この音声はチマノウスカヤ選手本人も自身の声だと認めていて、ドイツやオーストリアなど、ヨーロッパ諸国へ亡命する意向を示している。
なぜ、チマノウスカヤ選手はベラルーシへの帰国を迫られているのだろうか。発端はコーチへの批判にあるという。
手続きの不備により、チマノウスカヤ選手のチームメイトに出場資格を持たない選手が出てしまった。代わりにチマノウスカヤ選手が予定になかったリレーへの参加を命じられたため、SNSで代表コーチを批判。これが強制帰国の理由だという。しかし、1日、羽田空港に連れて行かれたチマノウスカヤ選手は、帰国しない意思を示し、警察に保護を求めた。
ベラルーシは今年5月、亡命していた反体制派の記者を拘束。ロイター通信などによると、ベラルーシ当局は5月23日、ギリシャ発リトアニア行きのライアンエア航空の旅客機に対し、爆発物が仕掛けられた可能性があるとして、首都ミンスクに強制着陸させた。旅客機には反体制派の記者が乗っていて、そのまま拘束された。
これに日本の外務省も強く非難。国際民間航空条約に反する疑いがあり、さらに強制着陸させた航空機に搭乗していた特定の乗客を同局が恣意的に拘束することは不当であると指摘した(2021年5月24日外務省報道官談話)。
この強制着陸には、ベラルーシのルカシェンコ大統領が強く関わっているという。同国の初代大統領であり、1994年の第1回大統領選挙当選後、現在まで27年間におよぶ長期政権を誇っているルカシェンコ大統領。
過去には、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で「国内でホッケーの試合を続けるか」という質問に対し、ルカシェンコ大統領は「ひれ伏して生きるより死んだ方がましだ」と発言。会場の観客に対して「ここは冷蔵庫のような温度なので、ウイルスはいなく安全だ」と宣言した。
上記以外にも「コロナにウォッカを飲めば大丈夫」など、奔放な発言を続けていたが、その後ルカシェンコ大統領自身も新型コロナに感染、無症状のまま回復した。
ルカシェンコ大統領には批判の声も多く集まっている。去年8月、6度目の当選を決めた大統領選挙では、ルカシェンコ大統領が不正を行って再選したとして、選挙のやり直しや辞任を求め、10万人以上が参加する大規模なデモ活動が行われた。
そのルカシェンコ大統領は今回のオリンピックに対しても「不満」を示している。ロシアの国営通信社・タス通信によると、出場するベラルーシの代表選手が一つもメダルを獲得していない現実に不満を示し、選手らに「ハングリー精神が欠けている」と指摘したという(※発言の2日後にメダル獲得)。
警察に保護を求めたチマノウスカヤ選手は、ベラルーシの反政府系メディアのインタビューに答え、40分で荷物をまとめて、数時間後に空港に到着するよう求められたことなどを告白。ベラルーシではチームから外され、収監される可能性があると語っている。
ベラルーシの反体制派を支援する団体によると、ポーランドがチマノウスカヤ選手を受け入れる準備をしているという。2日午後5時すぎには、チマノウスカヤ選手とみられる女性が東京・目黒区 のポーランド大使館に入ったという報道もあり、今後の展開に注目が集まっている。 (『ABEMAヒルズ』より)
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