集中力を極限に高めて考えたら、スッと鼻から血が…。そんな経験の持ち主がどれくらいいるだろうか。細田守監督による大人気アニメ映画「サマーウォーズ」のワンシーンを想像させる出来事を、実際に経験した将棋棋士がいた。タイトル3期、棋戦優勝10回の実績を誇る実力者・深浦康市九段(49)が、30年近く前のエピソードとして「対局中に鼻血が出ました」と明かしたことで、ファンの間でまさにサマーウォーズだと話題になった。
映画「サマーウォーズ」で、主人公の高校生は国際数学オリンピックの日本代表も狙えたほどの数学力の持ち主。クライマックスシーンでは、その能力を活かしてピンチを救うべく奮闘するが、その際に集中力を限界まで高めたことで、鼻血が垂れるシーンが印象的なものになっている。鼻血の原因の一つとして極度のストレスもあり、作品ファンの間でもおそらくそうだろうという意見が多い。
これを実際に体験したのが深浦九段だ。8月3日に行われた叡王戦五番勝負の第2局、豊島将之叡王(竜王、31)と藤井聡太王位・棋聖(19)の対局を解説していた際、少し局面が動かなくなったところで、野田澤彩乃女流初段(37)と熱心に考えることについてトークを繰り広げていた。特徴でもある粘りについて野田澤女流初段から質問が飛ぶと「考えるのは好きですね。考えているとあっという間に時間が経っているということがあります」と、熟考が苦ではないとし、さらに「対局中って神経が麻痺しているんですよ。アドレナリンがずっと出ているので。だから感想戦終わって立ち上がった時に、ふらっとすることは結構ありますね。集中してアドレナリンが出ている時はすごいんだなと思うことはありますね」と、まさに体を張って戦っていると明かした。
若手棋士であれば、持ち時間各6時間の順位戦を深夜に終え、さらに感想戦した後でも家に帰ってから研究するケースもあるが、「僕は無理ですね。疲れもあるし、冷静な頭で(自分の対局を)見られないので、少し時間を置いて、リフレッシュした頭で反省していたりしてます。疲れた時にやっちゃうと、自分の年代はダメな気がします」とも語った。
そして出てきたのが例のエピソード。「自分は煮詰まりやすいですからね。常に頭が沸騰しています。四段の時とか若い時、対局中に鼻血が出てましたからね。ちり紙を突っ込んで考えてました。最近は鼻血すら出ませんが(笑)」。この言葉にファンが即座に反応し「サマーウォーズやんけw」「考えすぎて鼻血はすげえな」「血を流しながら考える」「集中しすぎや」といった声が溢れた。
50歳目前ながら、対局も最終盤ともなれば顔を真っ赤にしながら最後まで勝利の道筋を探り続けることで知られる深浦九段。限界まで自分を追い込む不屈の男であれば納得というエピソードだった。
(ABEMA/将棋チャンネルより)