「現在のところ、すべて順調です。私は大変安全を感じています。日本政府や警察が迅速に対応してくれたからです」
2日の夜、ANNの単独取材に答えたベラルーシ代表、クリスチナ・チマノウスカヤ選手(24歳)。チマノウスカヤ選手は。自身が予定になかったリレーへの参加を命じられたため、SNSで代表コーチを批判。これが問題になり、強制帰国されそうになった。
【映像】長い髪を降ろして…出発準備をするチマノウスカヤ選手の姿(2分ごろ~)
ANNがベラルーシの陸上関係者から入手した音声では、代表コーチらが脅迫を交えてチマノウスカヤ選手と話している。コーチが「国民は『(指示に従えば)生きられたのに愚かだった』と言うよ。誰に何を証明したい?」と聞くと、チマノウスカヤ選手は「誰にも何も証明したくない。私はただ走りたいだけ」と涙声で訴えた。
羽田空港に連れて行かれたチマノウスカヤ選手は1日、帰国しない意思を示し、警察に保護を求めた。ヨーロッパ諸国への亡命を希望したチマノウスカヤ選手は、ベラルーシの反体制派を支援する団体を通じて、ポーランドで受け入れられることになった。
亡命を希望したチマノウスカヤ選手に対し、現地ベラルーシの国営テレビでは、ニュースキャスターが「売名行為だ」などと非難。「安っぽい売名行為で国民を当惑させている」「彼女はチームに貢献する代わりにスキャンダルを巻き起こした」とコメントした。一方、ベラルーシのルカシェンコ大統領はこれまでのところコメントは出していない。
また、先月には、東京オリンピック出場のために来日したウガンダ人選手がホストタウンの滞在先から失踪。日本国内で働こうとしていたケースがあった。「祖国に戻りたくない」という意思表示が外国人選手の間で相次ぐ事態に、難民の支援を行う「全国難民弁護団連絡会議」の児玉晃一弁護士は「国によっては、海外に出ること自体が非常に難しい」と話す。
「過去にオリンピックを開催して、現地に来た外国人選手が亡命したケースはある。オリンピックを自国で開催することは、こういった事態もあるということを承知の上で(開催国の審査に)手を挙げる必要がある」
■ 外国人選手の“難民”希望者相次ぐ可能性も……日本の対応は適切だったのか?
亡命を希望したチマノウスカヤ選手にとって、日本の対応は適切だったのだろうか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した『コロナ危機の社会学』の著者で東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏は「本人の意志を尊重した模範的な行動だった」と言及。「本国のベラルーシではチマノウスカヤ選手に非難の声が上がっているが、国際オリンピック委員会(IOC)や国際社会からは『日本の対応はとても良かった』といった声が寄せられている。本人の意志を尊重して、状況を考慮した模範的な行動だったと思う」と評価した。
8日に閉幕を迎える東京オリンピック。閉幕が近づくにしたがって、外国人選手の亡命は今後も発生するのだろうか。
「そもそも出国自体が難しい国、経済的な理由などで海外に行く機会に恵まれない国がある。オリンピックの出場選手になれば、国がサポートしながら外国に行ける。このタイミングで亡命したいと思う外国人選手はいるのではないか。今後、亡命希望者が増える可能性は否定できない。しかし、失踪したウガンダの選手のように、単純に『日本で働きたい』といった理由だけでは、日本で難民認定することは難しい。それを踏まえて、今後、日本が難民希望者にどのように対応するか、注目したい」
ANNの取材に対して「日本ではとても安全なホテルも確保してもらいました。心から感謝しています。私は今、本当に安心しています」と話したチマノウスカヤ選手。支援団体によると、チマノウスカヤ選手は4日午前、亡命先のポーランドに向かうため飛行機に乗り、成田空港を出発した。 (『ABEMAヒルズ』より)
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