8月5、6日の2日間にわたって東京・後楽園ホールで開催されたプロレスリング・ノア旗揚げ21周年大会で、いずれもメインイベントを務めたのはGHCヘビー級王者であり、ノアの象徴である丸藤正道だ。5日大会では切磋琢磨しながらノアを支えてきた戦友・杉浦貴とタッグを結成して“ノアの未来”清宮海斗、ノア生え抜き選手第1号(2001年3月の第1回新人公募に合格)の鈴木鼓太郎のコンビに快勝した。

 そして、この6日大会では武藤敬司、船木誠勝とトリオを結成して金剛の拳王、中嶋勝彦、征矢学と対戦。図式としてはM’s allianceと金剛の激突だが、丸藤、武藤、船木のトリオは、丸藤にとって特別なものがある。

 丸藤のファン時代に好きなレスラーのツートップは、強烈なオーラを放つ三沢光晴と武藤だった。ちなみにプロレスの入口は全日本プロレスだったが、中学時代には全日本よりも新日本プロレスにハマっていたそうだ。

 船木との関係性も面白い。船木が旗揚げしたパンクラスの入門テストを高校2年の時に受けているのだ。当時、埼玉栄高校レスリング部に所属していた丸藤は、練習中に腰を負傷して足が痺れた状態でテストを受けざるを得ず、全然できなかったという。その場に船木はいなかったそうだが、もしいたら、船木の目に丸藤はどう映っていただろうか? 

 さらにノアが旗揚げした2000年8月当時の日本プロレス界の状況を考えると、武藤はWCWと契約を交わしてアメリカに長期遠征中。一方、船木は同年5月26日に東京ドームでヒクソン・グレイシーに敗れてその場で引退を表明し、12月4日には日本武道館で引退セレモニーを行った。それから21年後に武藤、船木がノアのリングに上がることなどあり得ないはずだった。それを考えると、これまでもM‘s allianceとして何度か同じコーナーに立っている3人だが、このトリオはまさに奇跡なのだ。もちろんキャリア2年の丸藤は、武藤、船木とトリオを結成する未来があることを夢にも思わなかったことだろう。

 ただし、様々な感慨に浸るのはゴング前まで。いざ試合が始まるや、未来に向かっての激しい攻防が展開された。金剛の3人は21周年記念試合の添え物にされてなるかとばかりにGHC王者・丸藤に集中攻撃。控えのコーナーから武藤が何度も「チャンピオン!」と檄を飛ばす場面が見られた。

 そうした中、試合の主役になったのは6月6日に丸藤にGHC王座を奪われた武藤。一度は金剛の集中攻撃を浴びたが、丸藤のフックキック、船木の掌打、丸藤の虎王の援護を受けて、9月12日に後楽園ホールで開幕する『N―1 VICTORY2021』で同じAブロックにエントリーされている征矢をシャイニング・ウィザードで撃破してみせた。

「N―1は集中力が続かなかったりして、チャンピオンシップより難しさがある中で、今の俺にとって最高のチャレンジというか、気分はプロレスの東京オリンピック。そこでゴールドメダルを獲りたい」と武藤は早くも優勝宣言だ。

 今年の大会は船木もDブロックにエントリーされており、お互いに勝ち上がれば、ノアのリングで武藤vs船木という新日本1984年同期対決が実現することになる。これもまた凄いことだ。

「また武藤さんとやることになるのか、はたまた船木さんとやることになるのか。あるいは他の人間とやることになるのか? 僕が出ないことによって、僕の中で勝手に想像力が膨らんでいる」とは、N―1には参加せず、優勝者と10月10日のエディオンアリーナ大阪第1競技場大会でGHCヘビー級王座防衛戦を行う丸藤の言葉。

 過去、現在…さまざまな要素を取り込みながらノアは未来に向かっていく。

文/小佐野景浩

【映像】丸藤正道&武藤敬司&船木誠勝 vs 拳王&中嶋勝彦&征矢学
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