日本国内で新型コロナウイルスに感染した人が100万人を超えた。抑え込みのカギとなるワクチンだが、ワクチンを接種したからと言って、感染する可能性がゼロになるわけではない。デルタ株の影響で、たとえワクチンを接種済みでも感染が確認される、いわゆる「ブレークスルー」の報告が相次いでいる。
【映像】妊婦が新型コロナに感染するとどうなる? 木下喬弘医師の解説(4分ごろ~)
ワクチンはデルタ株に効果がないのだろうか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』に出演した、新型コロナワクチン公共情報タスクフォース副代表理事でCoV-Navi副代表の木下喬弘医師は「ワクチンにおける重症化防止の効果や重要性は変わっていない」と断言する。
「ワクチンを接種してから時間が経っている人は、抗体の値が下がることがわかっている。変異株が出て来なければ『6カ月程度は感染を防げる』と言われていたが、デルタ株の感染拡大が広がって、それによってワクチンの効果が少し落ちた。抗体値の下落と変異株の出現、この2つが合わさった結果、現状、ワクチンを打っていても感染してしまう人が出てきている。しかし、ワクチンの効果として長期間、重症化を防げることは間違いないし、ワクチン接種の重要性は変わっていない」(木下喬弘医師・以下同)
また、ワクチン接種を巡っては、海外で新たな見解も出ている。今月11日、アメリカのCDC(疾病対策センター)は、臨床試験の結果、安全性が確認されたとして、妊娠期間中においてもワクチン接種を推奨する見解を発表。妊娠中や授乳期の接種も、子どもの感染防止に役立つ可能性があるという。
このタイミングで推奨され始めた妊婦へのワクチン接種について、木下医師は「アメリカで行われたモニタリングシステムによって、ワクチンを接種した妊婦と接種していない妊婦を比較した際、妊娠中の合併症が起きる確率に変化が見られなかった」と話す。
「妊娠後期は子宮が上がってきて、もともと肺を圧迫するような形になる。妊婦が新型コロナに感染した場合、同年代の女性と比べて肺炎のリスクが高くなり、集中治療室に入ったり、人工呼吸器が必要になったりする確率も高い。アメリカのCDCはこれまで妊婦のワクチン接種について『打っても良いですよ』ぐらいだったが、複数の安全性モニタリングシステムの結果を見て、ワクチン接種の有無による妊娠中の合併症の確率に変化が見られなかった。ワクチンを接種するメリットがリスクを上回るとして、ここにきて妊婦へのワクチン接種を推奨するようになった」
子どもにコロナワクチンの接種は必要なのだろうか。木下医師は「何歳から何歳までを“子ども”と定義するかにも違う」とした上で、こう述べる。
「今はかなりデータも蓄積してきていて、16歳以上は大人(20歳以上)と同じように接種が推奨されている。接種を迷う余地はないと思うが、ただ、若い男性だと心筋炎という病気が数万回に1回程度起こるといった報告があり、そこには注意する必要がある。しかし、ほとんどの場合、副反応は軽症だ。また12歳~15歳は、16歳~21歳の人と比べると抗体価の上がりがよく、効果がおそらく高い。副反応の頻度も変わらないといった結果が出ているので、アメリカでは接種を積極的に推奨する方向でいくだろう。もっとデータが蓄積してくれば、新しい方向を打ち出すと思う」
「また、11歳以下に接種する場合、ワクチンの量を減らすことは決まっている。6歳~11歳以下は大人の3分の1、生後6カ月~5歳までは大人の10分の1にする。だが、そもそもワクチンは飲み薬などと違って、血中濃度を高く維持する必要はなく、大人でもかなりの少量で打っている。子どもには、さらに少ない量を打つ。回数と量は科学者が有用性と安全性のバランスをしっかり見て決めているので、あまり心配する必要はない」
ワクチン接種が今よりもさらに進めば、コロナ感染拡大前の日常に戻していけるのだろうか。
「100%の人がワクチン接種を受けても、集団免疫は達成されないと言っている専門家もいる。ただ、僕はこれに否定的で、たしかにワクチンを打った人にもブレイクスルー感染が起きる可能性もあるが、そこからの“2次感染”は低いといったデータが集まりつつある。ワクチンを打った人と打っていない人、両方が感染した場合、次の人にウイルスが移ってしまう確率は、やはり打っていない人のほうが高い。小さい子どもを含めて、国民全員がワクチンを打った国はまだない。12歳以下の子どもにちゃんとワクチンがリスクなく打てるかといった問題もあるが、大多数の人がワクチンを接種した国であれば、マスクを外したり、飲食店の時短制限をなくしたり、そういった日常に戻れる可能性は充分あると思う」
「そもそも、どのような対策をすべきか。それは、周りにどれだけ感染者がいるかによって決まるものだ。感染者が数十人しか出ていない場合、今の日本のように何万人も出ている場合、それぞれによって、対策したほうがいいことと対策しなくていいことがある。現状は、ワクチンを2回接種しても、マスクの着用や手指消毒といった対策は必要だ。だが、ワクチンを普及させて、元の生活に戻ろうとしている流れがあるのは間違いない」 (『ABEMAヒルズ』より)
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