プロ将棋界唯一の団体戦「お~いお茶presents第4回ABEMAトーナメント」の本戦トーナメント2回戦第3試合、チーム糸谷とチーム菅井の対戦が8月21日に生放送されたが、この第1局において公式戦ではまず見られない珍しいシーンが誕生した。
対局者はチーム糸谷・山崎隆之八段(40)と、チーム菅井・郷田真隆九段(50)。準決勝進出をかけた大事な初戦ということもあり、両者とも気合を入れて盤に向かっていた。珍しいシーンが生まれたのはお互い、残りの持ち時間が10秒を切る最終盤。1手指すごとに5秒加算するとはいえ、毎回数秒以内に指さなくてはいけない緊張の連続だった。
勝勢だった山崎八段が5二の地点に金を打ち込んだところで、郷田九段は同飛と応じるしかないような状況に。すると郷田九段は、打たれたばかりの金をすっと右手でスライドし、盤外に控えていた左手でキャッチ。すぐに空いた右手でチェスクロックを押し、残り2秒のところで手番を変えることに成功した。これにはファンからも「二刀流だ」「すごい取り方」と注目。数秒のミスで切れ負けしてしまうという極限状態ゆえの行動に沸いていた。
この大会ではこれまで、秒に追われたことで起きるレアシーンが数々生まれている。時間内に指したものの、チェスクロックを押し忘れたため、残り1秒ぎりぎりまで気づかなかったことや、指し手が間に合わずに指す地点を指差しながら口頭で伝える、ということもあった。ルール上は、駒をその場所に動かさなくても、意思を伝えれば問題ないが、チェスクロックについては実際に押して相手の手番に切り替えるという作業が必要。プロの公式戦では、自分でチェスクロックを押すということもないだけに、トップ棋士たちが慣れないルールや動作によって、普段は見られない表情が出ていることもある。
◆第4回ABEMAトーナメント 第1、2回は個人戦、第3回からは3人1組の団体戦として開催。ドラフト会議で14人のリーダー棋士が2人ずつ指名。残り1チームは、指名漏れした棋士がトーナメントを実施、上位3人が15チーム目を結成した。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで行われる。チームの対戦は予選、本戦トーナメント通じて、5本先取の9本勝負。予選は3チームずつ5リーグに分かれて実施。上位2チーム、計10チームが本戦トーナメントに進む。優勝賞金は1000万円。
(ABEMA/将棋チャンネルより)







